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一番近くにある日常 入!  作者: 友城にい
暑かりし、草野球編
39/78

また会おう、その時は絶対ナツ! 二十四球目

 結局、冬葉と同じうな重に収まった僕は、満たしたお腹を抱えて自室に戻った。

 無駄にふかふかしたシングルベッドに腰をかける僕は、「おいしかったね」と床にぺたんこ座りで、至福そうにはにかむ冬葉と不意に視線がぶつかった。

 僕の意識した視線に、さすがの冬葉もすぐに気づいて、気まずそうに俯いてしまう。


 沈黙が続くこと三十秒。


 この雰囲気は恋人とかが持ちこむ雰囲気であって、僕たちが作っていい雰囲気じゃないのは言うまでもない。そこで僕はあることを思いだし、冬葉に投げかけた。


「そ、そういえば話をするんじゃなかったっけ? 今日あったことをおさらいとかなんとか……」


 言いながら自覚していたが、かなり顔が火照っていた。言葉ひとつ冬葉に告げるたんびに体温が上昇していく呪いにでもかかっているようにだ。

 僕が意識していては、冬葉も気長に話もできない。どうにかごまかすために「うなぎが効いてきたのかな~」なんてとぼけてみせる。


「ぐふぅ」

「冬葉?」


 途端、冬葉が顔を隠して吹きだした。


「なにそれ? 夜夏くん面白い、体温が上がるのとうなぎは関係……ぶっふふふ」


 少し説明するや、思いだして再び口元を押さえる冬葉。

 そこまで面白いことを言ったつもりはなかったが、ここまで壺にハマってもらっては、正直なところ小恥ずかしい気持ちのほうが強くなる。芸人なら幸福だろうけど。


「ごめんね。笑っちゃって。でもね。夜夏くんが悪いんだよ。あんな急に変なこと言うから」


 気を取り直して、ようやく僕がカーペットの上で、冬葉がベッドに腰かけて話が始まった。


「ははは……僕の予想でも白けて空気を変えようと思ってたんだけど、うん。結果オーライ」

「そうなの? わたしは面白いと思ったよ。明日、姫夏ちゃんにも披露しようよ。きっと、笑うよ」

「嘲笑する顔しか浮かんできませんが?」

「ふふ、姫夏ちゃんならありえそうだな。あ、そうだ。今日のお話だったね。どうする?明るい話にしようか、それとも……夕方のことおさらいしておく?」


 ここは避けて通れない道。

 忘れかけていた記憶を呼び起こし、僕は「うん。まずはな」と相槌を打っておく。


「たしか、南雲ちゃんのお父さんが反対したんだよね。だから莉乃ちゃんが説得しよ、って。だけど相手は子を大切に思う大人で、わたしたちはどこまでも未熟な子どもだから、今は頷くしかないんだろうな、ってわたしは思ってた」


「まあ、僕も同じようなものだ。ここは自由で優雅で楽園みたいで、ヒメがいるからなんでも思うがままなんだろうな、って僕も思ってた。けど、違うんだよな。ヒメはあくまでここに閉じ込められた一人の女の子なんだ。どんなに発案しても、僕たちの周りには常に『世間体』がついて回るんだ」


 カーペットに後ろで手をついて、天井を見上げる。LED電気で目は眩しくないが、夕方のことについて後悔の念は多少なり、僕の脳内をかすめる。


「追いかけるべきだったのかな」


 考えこむ僕に冬葉が語りかけてくる。


「莉乃ちゃんと一緒に南雲ちゃんの両親を説得しに行くべきだったのかな。すぐじゃなくても、遅れてでも」


 冬葉の顔も僕と同じように後悔しているように唇を噛んでいる。膝にちょこんと乗せられた手も今は見ていられない。


「僕は、正しい選択だったと思ってるぞ」


 僕の言葉に冬葉は俯き気味だった顔を正面に戻して、


「なんで?」

「僕も冬葉と同じように『追いかけるべきだった』と後悔はしてる。けど、僕がここを離れたら、ヒメが一人になるんだ」

「…………」


 冬葉は困惑していた。


「昼間はお手伝いの方がいるし、もしかするとお婆さまもいる。だけど夜はどちらもいない。お手伝いの方は夕方に帰るし、今日はお婆さまも海外に飛んでていなかった。南雲ちゃんには家族がいるけどヒメには僕しかいないんだ」

「そう……だったね。夜夏くんの選択は正しいと思うよ。けど、わたしは……」

「――言っただろ。思ってるって」

「……どういう意味なの?」


 今にも泣きそうになっている冬葉。


「南雲ちゃんには莉乃が追いかけていくだけでヒメは十分なんじゃないか、僕や暖、冬葉が同行したところで結果は覆らないだろう。ましてや夕方も言った通り、男がいると両親の不安を刺激しうる」

「でも、わたしは女の子だよ? わたしなら問題なかったんじゃ……」

「大アリだ。むしろ莉乃だけで行って正解とも言えるよ。冬葉が行った場合、莉乃が庇ってしまうんじゃないか。まあ、もし仮にあのときに冬葉まで駆けだして行っていたらヒメに『冬葉を止めて!』と言われてたかもしれん」

「わたし、そんなに弱い子に見えてるのかな」

「逆だよ、逆」


 僕は立ち上がって冬葉の額をツンとする。


「冬葉は状況によっては莉乃よりカッとなるのぐらいヒメは把握してるんだよ」

「そうかな……」

「そうだよ。どっちにしても、明日の朝には解決に向かう問題だ。今さら、くよくよしても手遅れなんだろうし、楽しい話でもして、明日に備えて寝るぞ」

「……でも」


 どうしても煮え切らない冬葉。


「ほら。時間がなくなるぞ。いいのか?」

「わ、わわわ、わかったよ!」


「それでよろしい。さすが冬葉だ」


2018年は空白の休業期間となりましたが、この場を借りていろいろご報告を。

2019年は、昨年と打って変わり以前のようにとはいかないにしても、頻繁になにか投稿していこうと思っております。よろしくお願いします。


友城にい

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