また会おう、その時は絶対ナツ! 十三球目
心の芯から出たわがまま。
莉乃は我慢しない。
「みんなは……みんなは南雲と一緒に楽しみたくないのかよ!」
瞳に涙を浮かべて主張する。
「そりゃ……そうなれば、一番いいし」
「楽しみたいですわね」
僕のどもった声に対し、ヒメはきっぱりと言い切る。
「なら一緒に――」
「でも! 私たちでも踏みこんではいけない『ライン』というものもあります。なにより両親が自分の子供を一晩以上も泊めることに拒否するのにも私は理解しますし、」
「なんだよ! 姫夏も夜夏も。もういい、あたし一人で親を説得してくる」
ヒメの言葉を最後まで聞かずに莉乃は宿泊用のバッグを放って、走って行ってしまった。
「心配で仕方ない、それでいて旅をさせるのも考える。何歳になっても、親というのは、子が大切で目を離させないものですわよ。て、こんなこと言ってますが、私が出向いて説得できれば一番いいのでしょうけど……ね」
ヒメは悲しそうにしていない。きっと、期待しているのだろう。莉乃が南雲ちゃんを連れてくることを。
「夜夏くん……」
莉乃の行動を見て、どうすればいいかわからない冬葉が僕とヒメを交互に視線を送る。
「僕が行ってもいいが、余計にややこしくなるだけだよな。男だし」
「そうなるでしょうね。まあ時間で様子を見ましょうか」
「そうだな。冬葉も心配するな、莉乃が必ず両親を安心させて、南雲ちゃんを連れだしてくれるよ。信じろ、莉乃を」
僕の根拠のない言い文。
「わかってるよ。わたし、莉乃ちゃんもみんなも幸せになれて、最高の場面に遭遇できると信じてるから」
祈りを捧げ、僕を見上げる冬葉。
「僕も、そう思ってる」
「さて、さっそく合宿場所を紹介しましょう。さあこちらにいらっしゃい」
相変わらず空気を読まないヒメがどこかから用意していた黄色い(金色か?)旗を振って、僕たちを誘導し始める。
しかし、ヒメが歩きだした方向は屋敷の入口ではなく、
「あれ? 屋敷じゃないのか?」
「違いますわ。黙ってついてらっしゃい」
「?」
行くところは、屋敷の脇で後ろから冬葉が「裏庭でキャンプでもするのかな?」と不安がっていた。「それはないだろ、蚊とかヒメすごい嫌いだし」と言うが、本当に野宿をするのか。
しかし、それは大外れで。ある意味大当たりというべきだろう。
「着きましたわ」
「え?」
僕の唖然。それに続いて、冬葉が「ふえっ」と驚き、暖が「おおー」と歓喜。
「あの……いつの間に?」
裏庭に学生寮みたいな合宿所が建てられていた。高さは屋敷より低いが、黄色をベースにした壁に吸収性の高い黒い屋根、それにソーラーパネルが付いている。エコか。窓を見ると八部屋ほどありそうだ。
「今朝ですわよ?」
「『わよ』と言われても、朝は朝でダイヤモンドベースを制作していただろ!」
僕の当然の問いに。
「いつから一つだと錯覚していた」
「なん……だと……」
もういいから。そういうノリいいから。
「じゃあなに。僕を荷物に行かせなかったのも」
「これを隠すためです」
「昼ご飯を庭で済ませたのも」
「もちろん。これです」
「水浴びをさせなかったのも」
「困りますから」
「わかった。詳しくはあとで聞こう」
「望むところ」
話し合いを少ししたところで、みんなで合宿所に入っていく。
「おお、ヒメにしては建築センスがあるな」
「しては、は余計です。キレイで当然ですわ。デザイナーに頼んだのですから」
「デザイナーの無駄使い!」
やはりのヒメは置いておいて、部屋決めとか入浴とかご飯とかいろいろやることがある。
さて、とみんなを見ると各自壁にある猫に小判としか言いようがない芸術品を眺める冬葉やなぜあるかわからないロビーに入って、「もうすぐご飯だから、あんた呼んできな」とか意味不明な三文芝居をする暖に呆れつつ、「遊ぶな!」と喝。
なんだよ、としぶしぶ来る暖に「使用する部屋を決めるぞ」と言う。
「何部屋あるの?」
冬葉の質問。当然、初見の僕が知るはずもない。
「部屋ですか? 六部屋ですわ。六人しかいませんし、充分だと思いましたし」
それもそうか。
「外から見たら八部屋あったっぽいが」
「あと二部屋は、トレーニングルームと談笑部屋という名のリラックスルームですわ。心の安らぎもいるでしょ?」
「なるほどな」
たしかにトレーニングルームはいるな。とくに暖が喜びそうだし。あとなに? 談笑部屋? まあいいか。暇のときに確認しに行ってみよう。
「トレーニングルームとな! それにはおれ、燃えてきやした」
そんな暖の燃え滾る想いはさておき、好きな部屋を決める。
「一階に二部屋。二回に四部屋あります。どちらがいいですか?」
「二階」「に、二階がいいかな」「一番いいのを頼む」
最後の暖のが意味わからん。
「ふむ。莉乃と南雲は近いほうがいいでしょ。なので暖が二階、ヨルととなりでいいかしら?」
「なぜとなりが前提?」
「不満なら言っていいですわよ。どうせ、ヨルの好物の南雲もいませんし」
「好物ってなんだよ! 僕は変態か!」
「南雲ちゃんって食べられるの……?」
ヒメの言葉を聞いた冬葉が怯え混じりに言う。
「違いますわ、冬葉。実際に食べるのではなく、南雲にある女のあ――キャシャーン」
「ふぅ、危なかった……」
寸前のところでヒメの言動を止める。キャシャーンはないだろ、消失の効果音に。
「女のあ?」
「女の味付けじゃないか?」
「なるほど。夜夏くんは詳しいね」
「まあな」
冬葉が純粋な子で助かった。
さて、ヒメが戻ってきたタイミングで、二階に行き、四部屋の前でじゃんけんをする。
「おれは最後でいいぜ。どうせトレーニングルームに行ければいいからな」
「あ、わたしだ。えっとー、階段に近いほうで」
「なら私ですわね」
そこでヒメがニヤっと笑う。
「ヨルは冬葉のとなりがいいですわよね?」
「な、なにが言いたい」
「もしここで私が冬葉のとなりを選べば、実質的にヨルと暖はとなり同士。さあ、私に泣きつきなさい!」
なんかSになっている。どうしよう……。僕は泣きつけばいいのか?
いや、やめておこう。
「いいよ。どこでも。どうせ、ご飯食べて風呂入って寝る場所だろ。どこを選んでもいいことはないだろ」
やけくそみたいになって言った。
それを聞いたヒメが面白くなさそうな顔で。
「釣れませんわねぇ。いいですわ、ヨルがこう来るなら私にももう一つ案がありますので。まさか、二個目を使うとは思ってませんでしたけど」
ヒメは冬葉から一個空いた部屋をチョイス。
ここで僕が冬葉のとなりを選べば、ヒメの思惑どおりというわけだが。
うーん、でも……ここは。
いつまで経っても試合場面にまでたどりつきませんが、そこまで描くのが楽しいんです。
友城にい




