また会おう、その時は絶対ナツ! 十二球目
ランニングに素振り、キャッチボールなどの練習をこつこつと休憩を取りつつ、やっているうちにお昼になり、ご飯を食べて、朝やったメニューにノックや玉拾いをやった。
こうして、汗の数だけ秒針は進んで、あっという間に日は傾く。
「では、今日の練習を終了する。なにか質問があるやつはいるか」
暖の解散宣言に行う質疑応答にヒメが手を挙げる。
「はい」
「はい、姫夏殿」
「今日から試合までの日数があまりありません。なので、今日からここに泊まりませんか? もちろん、ご両親の了承があってのことですが」
ここに泊まる?
たしかに屋敷は広いが、この人数が泊まれるだけの部屋はないぞ。おもにあなたのせいで。
「ヒメ。まさかリビングで雑魚寝でもする気なのか。修学旅行じゃあるまいに」
「大丈夫ですわ。考えはあります」
ヒメのことだ。なんの考えもなしに発言するとは考え難い。対策があって、初めてヒメという人物は自信を持つのだ。
だが、あんまり期待せず「そうか」と返す。
「おれは宿泊に関しては慣れっこだ。皆の者はどうだ」
暖は野球合宿で親の承認は、容易いだろう。
「一度帰って、着替えを持ってきていいか?」
「南雲もいきまぁ~す」
莉乃と南雲ちゃんは、半分いいみたいだ。
「かまわんぞ。いってこい」
「よし、なら南雲、一緒にいくぞ」
莉乃が南雲ちゃんの腕を掴む。「ゆっくりでお願いしますねぇ~」ととことこ歩いていく。
その姿を見て、ヒメが声を上げる。
「り、莉乃さぁぁぁぁぁぁあああああああ…………」
迫真の演技で地面に倒れこむ。
でももうそこに莉乃はいない。声は聞こえなかったのだろう。
「ああ、これが……終わりは突然に、ってやつかしら」
「いや、ただ荷物を取りに行っただけだから」
どこかからハンカチを持ち出し、目元を拭う。おい、涙出てな、って目薬使うな!
「姫夏ちゃん、かわいそう……」
「冬葉まで世界に入るなよ……」
横を見るとヒメとは違い、本当の涙で、って冬葉も目薬かよ! 三文芝居のオンパレードか。
「ほら、冬葉も荷物を取りにいくぞ」
「あ、うん。じゃあ、二人ともちょっとまっててね」
暖に言われ、後ろをピ○チュウみたいについていった。
「その姿を見て、僕は無性に悲しくなり声を上げる」
「冬葉ぁぁぁぁぁああああああああ…………。ってなにを言わすねん」
背後に立って腹話術をやるヒメの頭をツン。普段絶対使わない関西弁も出たぞ。
「ノリツッコミもたまにはいいですわね」
「そうかい」
僕もいろいろ用意があるし、屋敷に戻ろうとする。
「ちょいおまち」
どこぞの人かみたいな止められ方をされ、振り返る。
「なに」
「用意なら事前に私がやっておきましたから、心肺ゴム用」
「心肺ゴム用ってなんだよ。死ぬのか?」
「なので、来るまで私と漫才でもどうです?」
「日常会話がすでに漫才みたいなものだろ。今更すぎる」
「では、ヨルヒメの漫才をノーカットでお見せします」
それがこれだぁあああ、
1、2、3
「ってまたベス○ハウスの始まり方か。とヨルヒメとか、ううわあああ、ツッコミどころが多すぎる!」
「となりの家に囲いができたんだってねぇ」
「かっこいい」
「違いますわ。そこは『へい(塀)』でしょ。たしかに囲いとは言ってますけど」
「自分で説明して虚しくないか?」
話聞けや!
「となりの家に家ができたんだってねぇ」
「いえーい」
「だ・か・ら! そこは『ハウス・トゥー・ハウス』が通常ですの!」
「マウス・トゥー・マウスみたいに言うな!」
「私としますぅ~?」
「や、やめんか」
僕の顔を鷲掴みにして、顔を近づけてくる。口をタコにするな。
「となりの家でくつ下が見つかったんだってねぇ」
「は! くつ下っ!」
「ヨル……いい加減にしてくださいな。そこは100人に聞いても全員が『発掘した』と答えますわよ」
ヒメの呆れ顔。
つか、くつ下が見つかったんだってねぇ、ってなんだよ。
「はいはい。気をつけ――」
「となりの家が散髪したんだってねぇ」
「ど、床屋! (どこや)」
「違いますねん。そこは例年の『家を刈(買)ったら、豚と友が来ますやん』が模範解答や」
「わかりづら!」
「ナイスツッコミ」
「そろそろ、となりの家シリーズを……」
「ヨル、○○を買うシリーズがいいですか?」
「本当に買わないぞ?」
「ヨル、二次元の嫁を買う」
「失礼だろ! いろいろと!」
そういう路線か。
「ヨル、パンティーを買う」
「下着売り場に行けば買えるぞ? ネットでも」
「エ!?」
「いや、マジで引かないでくれ……買ってないから」
「ヨル、頭髪を買う」
「ハゲてないからな! もさもさだから!」
「ヨル、服を買う」
「僕、今現在全裸!?」
「ヨル、相手の怒りを買う」
「現金購入じゃなくなった!」
まあ二次元の嫁は買えないけど。
「ヨル、なにかを買う」
「決めとけよ、いいかげんにしろ」
「「ありがとうございましたぁ」」
仲良くお辞儀。
「どうでした?」
「ただただ勢いが欲しい。これじゃ漫才じゃないし」
「しょうがないでしょ。行き当たりばったりでしたし」
「考えなしか」
さて。暇つぶしをしているあいだに四人は戻ってきて……
「ごめんね。またせて」
冬葉。
「莉乃ちゃん、ほら、元気出せよ。これは、どうしようもないことなんだ」
意味深な言葉で慰める暖。
「……ああ、そうだな。これが普通だよな」
そして、元気のない莉乃。
「どうしましたの?」
暖に尋ねるヒメ。
「じつは――」
少し言いづらそうにする暖。
「南雲ちゃんは――」
そうだ。お泊りというのは、一つの弊害があって、それを簡単に乗り超えられる人とそうでない人が世の中にいて、
「お父さんに反対されて、泊まることができないそうだ」
自慢の娘を男のいる家に一晩どころか一週間近くの宿泊で、
「なので、南雲ちゃんは今日同様の練習参加になる」
暖の説明が終わると、同時に莉乃が、
「やっぱり……いやだ!」
漫才って難しいですね。思い知らされました……。今度、漫才をするときまでにレベルを上げておきます。
友城にい
次回は6月10日に更新です。




