また会おう、その時は絶対ナツ! 十球目
その後、みんなが揃うとやはり驚いた。ブランコの時と同様「デケー」と感嘆の声がハモる。
中でも大興奮で鼻息を荒げる少年もいた。
僕ではなく無論、暖である。
「姫夏殿。これを昨日の晩から朝までに作りあげたのでござるか!」
「そうですわ。正確には朝方の四時からですけど」
髪をかきあげ、ご満悦のヒメ。あとなんで暖は「ござる」口調に?
「なるほど。これが社会のシンポってやつだな。そうだよな、夜夏」
「あ、ああ、そうだな。……多分、ここだけだと思うけど……」
急に話を振られて、適当に相槌を打つ。代わりに語尾を濁したけど。
「ん! 最後、なんか言ったか?」
「え? 僕なにか言った?」
暖から視線をそらす。
「まあいい。まずは二人一組で準備体操から始めるぞ。みんな好きなやつと組め」
キュピーン。
じ、準備体操……。それは男女のなり染め(なんだそれ)。
準備体操――。それはくすぐったい感情を膨張させる準備な体操(意味不)。
準備体操――。それは女子を意識し始めるバイブル(あくまでも夜夏の見解です)。
準備体操です。準備体操です……。準備体操です…………(な、なにを始める気だ)。
「冬葉ぁーっ!!」
「な、なに夜夏くん、大きな声出して」
僕が目を光らせて話しかけると冬葉は、ビクッとヒクつく。
「僕とコンビを……」
「ごめんね。わたし南雲ちゃんと……」
な、なんだと……。
ズーン。
僕は盛大に膝をかかえて落ちこんだ。なんだよ、同性同士って。
「よ、夜夏くん……?」
「いいよ。今日、一日ここでずっと芝生を見てるから……」
ズーン。生気が闇に沈んでいくのが、わかった。
「夜夏くん……」
顔を上げずとも、今冬葉がどんな顔をしているかわかる。けど今は、そんなどうでもいい。僕は楽しみがなくなったのだ。
僕の状態を見たあと、冬葉の立ち去っていく足音が聞こえる。
少し遠くからヒメと莉乃の仲良くなったコンビが、準備体操をしているかけ声が耳に入ってきた。「一、二、三四。二、二、三四」とテンポよくケンカもなく、順風満帆に平和の象徴となった二人の元気のいい声だけが、僕の耳に届く。
それを遮るように暖のうるさい声に、四股を踏むようなドスコイにも似た足踏みも聞こえる。元気なら「うるせー!」と怒号を飛ばしてやるのに、今そんな元気はない。
僕の後ろからは、控えめでカナリアみたいな声音で「いち、に、さんし」と小学生でも混じっているのかと思った。
僕の周りにみんながいる。
うむ、不思議だ。
普通なら気を遣って奥でやるのに、不思議だ。まるでミステリー小説。この謎を解き明かす鍵は、僕の脳内にある眠っている力か。僕に備わった異能の潜在能力か。奴らはどちらかを狙っているに違いない!
…………。
途中からなに言ってんだ僕は。
まあいい。
このまま、寝てしまおう。落ちこむのに飽きてしまう前に。
「夜夏くん」
ほら。冬葉の幻聴まで聞こえてきたではないか。
「夜夏くん」
…………。
よっぽど眠いんだな、僕って。
それもそうか。昨日は、野球で疲れたというのに調子にノッて、ゲームやったり、夜を更かせて漫画を十五冊完結まで読んでしまったのだからな。それを補うためのこれでも、あるのかもしれない。ああ、なんて悪なんだろう、僕は。
「もうー。夜夏くんってば!」
「はい!」
あまりにも大きい幻聴に、おもわず顔を上げてしまった。
うわ、太陽が眩しい……。今すぐ冷房の部屋でタオルケットをかけて寝たい。このままじゃニートになるね。
「あ、冬葉じゃないか。準操(準備体操の略)は終わった?」
「終わったよ」
前屈みで僕を覗く冬葉。そんなに前屈みになると冬葉のふくらみが……。
そのエロ視線に気づいた冬葉が、
「あ、夜夏くんの……えっち」
ダルみのある体操服の襟を右手で抑える。あと冬葉の「○○くんのえっち」のボイスが欲しい方はこちらまで
○○県 ○○市 ○○丁目通り ○○○ー○○○○
「冬葉のいろいろボイス」係
までご応募お願いします。webでもOKです。※実際に募集は行っておりません。
「ご、ごめん……。つい」
「いいよ」
「じゃ、そういうことで寝る」
褒美がもらえたところでゴロンと。
「起きて! 違うよ、夜夏くん。本題はこれからだから」
肩をゆさゆさされる。
仕方なく、もう一度起き上がって、
「なに?」
「わたしと準備体操しよ」
「え?」
「だから、準備体操しよ」
「誰と?」
「夜夏くんと」
「誰が?」
「わたしと」
「ホントに?」
「うそ言わないよ」
「まじで?」
「本当だよ」
僕は、立ち上がって、空を見上げて、
「僕は……しあわせものでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーす!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ドデカイ声を腹の底から振り絞って、力の限りを尽くし、喉が潰れてもいい、これからの人生でガラガラのハスキーしか出なくなってもいいと覚悟した上で叫びあげた。
当然、周りの四人も集まってきて、
「なんですの、今の」
「夜夏うるせー。鼓膜破れるかと思った」
「うむ、いい声だな。おれと……やらないか(野球)」
「あんな声はじめて聞きましたぁ~。南雲のはじめてぇ~」
あとの二人ほど狙った発言なのか?
「ごめん。嬉しくなって」
幸いにも命がけの声でも声は枯れていなかった。
「みんな、もうちょっとまっててね。今から夜夏くんと準備体操するから」
「へぇ、そうなんですの。よかったですわね。願いが叶って」
「お、おう……」
「セクハラすんなよ」
「しねぇよ。絶対」
「それはわたしとしては、少し傷つくよ……」
失言だったか。
「あとで感想を聞かせてねぇ~」
「ああ、たっぷり語ってやる」
「やったぁ~」
手を挙げて喜ぶ南雲ちゃん。そこまでいいものなのか?
最後に暖。
「兄のおれとしては、喜んでいいのか、微妙だが……。泣かすなよ」
「わ、わかってるよ。どんな展開を想像してんだよ」
「そうだな……。数年前に読んだT○LOVEるって漫画みたいなこととか?」
「ならねぇよ。あっこまでドジ踏まない! むしろなりたいわ!」
「ははは、終わったらランニングするからな」
「うわ……やだな……」
僕の声は届かず、暖は走っていった。
さて、
「やろうか、冬葉」
「時間が惜しいね。さっさとするよ、夜夏くん!」
背中と背中を合わせ、お互いに上体反らしの運動。
「一、二、三……四!」
「いち、に、さん……あ、夜夏くん、はげしいよぉ……」
「ご、ごめん」
まずは冬葉が僕の背中に乗る。
「に、に、さん……し」
「二、二、三……うおっ! せ、背中がピーンって」
それと組んだ腕に柔らかい物体がぷにゅっと。
「へ、平気……?」
「僕わね。それより重くないか?」
「大丈夫だよ。夜夏くん、そんなに重くないから」
「まあ冬葉の羽のような軽さには負けるがな」
「わたしそんなに軽いの?」
「嬉しい?」
「う、うん……」
交互に三回ずつやって、次は、開脚前屈に移る。
「まずは僕からやるから、お手柔らかに頼む」
「わかった」
脚をV字ぐらいまで開く。
すぐに上体を倒していくが、なかなか進まず……
「いたたたたた……」
「だ、大丈夫? 無理したらダメだよ」
「そ、そうみたいだね」
断念し、冬葉に交替。
僕よりも脚を開き、僕が抑えずともけっこう身体を倒していく。
「冬葉、柔らかいんだな」
「う、うん。家でストレッチとかするから」
なるほど。女子力を向上させているということか。やっぱり女子って男子と違って、外見磨きに手を抜いていないんだな。
「僕、必要ないな」
「そ、そんなことないよ。一応押してもらえば、ぺたーってつくからお願いしていいかな」
まじ冬葉さん天使です。女子に触るというのは、男の夢です。ありがとう冬葉神。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
冬葉の小さな背中。それより少し上の肩甲骨のあるらへんに手を置く。あ、ブラ……じゃなくて。
「ゆっくり押すね」
「う、うん」
すぅーと力を入れずとも冬葉の身体が前に倒れていく。
そして、あっという間にお腹までべったりと地につく。
「す、すげー……」
「そ、そうかな」
「バレリーナみたいだ!」
僕はかなり興奮していたと思う。
そのあまり。手先に神経がいっていなく、結果――
「あ、ありがとう」
「あ、手をはなす――」
パチッ、プツッ、
と。なにかが外れる音。
「いま……の音……」
「え?」
僕の言葉に冬葉は、身体を起こすと。
ポトン、となにかが落ちる音。
「え? あ。夜夏くん、ちょっと向こう見ててくれないかな」
「あ、はい」
どうやら、僕の失態で冬葉のブラのホックを外してしまったらしいです。
リアルトラブルが起きるとは……。
冬葉は控えめだけど、きちんとブラで守っているわけです。べ、べつにそれを想像して書いてはいませんよ! 信じてください!
友城にい




