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其ノ零 ~呪詛~

どうも皆さん、灰色日記帳です。

本作は拙作、『鬼哭啾啾 ~置き忘れた一つの思い出~』の続編にあたる作品です。

http://ncode.syosetu.com/n0205y/

此方を読んでからお読み頂ければ、一層に楽しんでいただけるかと存じます。

勿論、前作を読んでいない方にも楽しんで頂ける内容です。

では、和風ラメントホラー第二弾、『鬼哭啾啾2 ~月光蝶と小さな怨鬼~』をお楽しみください。



※本作はフィクションであり、実在する人名・地名とは一切関係ありません。






 

 

 

 

 人が死を迎ふる時、その肉体は土へと帰るが、生前にその者が抱きたりし想ひは現世に残る。


 怒りや恨み、憎しみ、嫉み。現世に残されし死人達の負の想ひは連なり、寄り添い、やがて『鬼』となりて形を成す。

 

 鬼となりし負の感情の塊は、行き場のなき想ひを鎮める生贄を求めて生者を襲い、死の世界へと誘ふ。

 

 死の世界へと誘はれし生者の魂は鬼の負の思念に取り込まれ、思ひ出も記憶も、理性も全て失ひ、鬼の一部となる。





                                                            ――鵲村の古い言い伝えより。




















 私は本当は人間じゃない、そう考えた事は今までに何回あったんだろう。

 

 保育園の頃、幼稚園の頃、小学校の頃。

 クラスの子達は皆私を嫌っていて、誰も私と仲良くしてくれないし、私の名前を呼んでくれる事すら無かった。

 ――化け物、そう。私はいつも皆からそう呼ばれていた。

 

 どうして私がそんなふうに皆から蔑まれるようになったのかは、何度考えてみても分からない。

 私は別に皆から嫌われるような事をした覚えはない、誰かに乱暴したこともなければ、誰かに意地悪をした事もないし、誰かの悪口を言った事だってない。

 それなのに皆は私を恐ろしい物でも見るような目で見つめ、化け物と呼ぶ。

 もしかしたら、私は本当に化け物で、皆とは違う悍ましい生き物だったのかも知れなかった。

 

 ――孤独。

 いつも私は人の輪の外に居て、お弁当も独りで食べ、休み時間も独りで外に出て散歩していた。

 一人で外に出て、いつも花に舞う蝶を眺めていた。


 私は、蝶が大好きだった。

 白い蝶も黄色い蝶も、みんな大好き。

 一生懸命に羽ばたいて空を飛んでいる蝶がとても綺麗で、可愛くて、格好いいと思ったから。

 どんな種類の蝶も好きだった、けど一番好きなのはやっぱり『鵲雪雫カササギユキシズク』。

 何時か夏休みの自由研究で調べたんだけど、私が一番好きなこの蝶はとても変わった蝶で、この『鵲村』にしか居ないんだって。

 この蝶は夜行性で、月が出る夜に群れで飛んで行く。

 一番変わっている事……そして私がこの蝶を好きな理由は、この蝶は『月の光を受けると羽から光を発する事』。

 真っ白な、雪の粒みたいに光る。

 それが何匹も夜の空に舞っていると、本当に光る雪の粒が沢山飛んでいるようで、すごく綺麗なの。

 鵲村では、この蝶が舞って行くのを見届ける事が風物詩みたいなものになってて、夏祭りの終わりの日にはこの蝶を籠の中に沢山捕まえて、一斉に夜空に放す『月送り』っていう行事がある程。

 この行事がある前の日には、私は沢山てるてる坊主を作った。

 雨が降るとお祭りは中止になるし、この行事も出来なくなるから。

 私には友達が居なかったから、毎年私は一人で、『月送り』を見に行ってた。 


 友達が居ないからって、別に一人が寂しいと感じた事は無い。

 私を蔑む子達に友達になって欲しいとは思わなかったし、なってもらえる筈も無かったから。

 きっと、私はずっと一人……そう考え始めていた頃、あのお姉さんが現れた。

 もう名前も憶えていないけど――私よりも何歳か年上で、すごく優しいお姉さん。

 何処に住んでいるのかは知らなかったけど、そんなに私の家から遠い所に住んでる訳でも無いって言ってた。

 

 お姉さんはクラスの子達と違って私を嫌わず、会った時はいつも私と一緒に遊んでくれた。

 一緒に遊んだり、蝶の事をお話したり。

 お姉さんと会ってから、私は初めて他の人と一緒に遊ぶ楽しさを知った。

 

 明日もまたここで一緒に遊ぼう。いつの日かそう指きりげんまんして、私はお姉さんと別れて家に帰った。

 その日の夜、私は明日が待ち遠しかった。

 またお姉さんに会える、また一緒に遊べる、また一緒に蝶のお話が出来る――。

 楽しみで楽しみで、もう眠れなかった。


 でも次の日……お姉さんは、来てくれなかった。

 ずっとずっと待っていても、いくら待っても――。

 

 私は悲しかった。

 来てくれなかった事が悲しかったんじゃない、お姉さんが約束を守ってくれなかったことの方が悲しかった。

 明日はきっと来てくれる、そう思って私は次の日も公園で待っていた。

 その次の日も、その次の日も、その次の日も。

 だけどもう、私がお姉さんと会う事は一度も無かった。


 今でも時々、私はお姉さんの事を思い出す時がある。



 



 そう――私が命を無くしてから、数年が経った今でも。






 ああ、雨が降ってきそう。

 てるてる坊主、もっと作らなくちゃ。

 蝶達が空に飛んで行けるように、いっぱいいっぱい作らなくちゃ……。





 お姉さん……会いたいな。






 もしもまた会えたら……お姉さんもてるてる坊主にしたいな。






 そうしたら、ずっとずっと一緒に居られるよね。






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