表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

歯医者

作者: 師走
掲載日:2026/06/27

暖かさが欲しいならくれてやる

歯医師はがりがり歯石を削って、丸い鏡で進捗を確認する


沈む夕陽は私を追って、まだぐずぐず外に止まっているから

窓から射し込む赤い光は、私の顔を照らしつけ続ける


自分をのせている高そうな寝椅子は、まるで呼吸をするように膨らみ、縮む

その度に私はうつら、うつらした


「寝てもいいんですよ」歯医師はそれに気づいて言う

「んん」歯ぐきから流れ出る自分の血液に溺れつつ返事を試みる


私の口内に溜まったヘドロはよほど多かったらしく、手術は何時間も要した

残りの客は一人ずつ頬を押さえて退席し、用事の済んだ歯医師は物珍しそうにこちらを見にきた


ついには寝転んだ私の周りを、ぐるりと囲むように歯医師たちが立っていた

彼らは専門用語を巧みに使ってヒソヒソと話し合い、やがて無表情に目を落とした


私の馬鹿みたいに開いた口から、今までの怠惰な性格が連なって出てくる

バレないものと決め込んで隠し続けた化けの皮が、一枚一枚剥ぎ取られていく


暗がりの中で顔は青白く変色し、呼吸は緩やかに落ち着いていった

意識が混濁して空気に溶け出し、何も考えられなくなる


「ぎゃぁ」

右隣の一人の歯医師が叫んで暴れた


背中に火がついて、勢いよく燃えている

彼は白衣を脱ごうとしたが、その前に炎は体全体を包み込み、焼き尽くした


どう、と倒れた歯医師が骨になっていくのを、私は横目で眺めた

他の歯医師たちも、それを見ていた


燃えた歯医師がいなくなったことで、サッと、夕陽がまた姿を現し、しつこく私に紅の光を浴びせる


そうして私は、多分今日も守られる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ