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ep109 事前準備

 翌日、蒼は起きると素早く身支度を行う。

 そしてパソコンを起動させ、昨日のセキュリティの甘い衛星がまだ御影島の上空にいるか確認する。


「まだいるのか、まあ利用できるから俺としては問題ないんだけど。本当にこの衛星なんだろ? まあ、やばければゆいが対応するか」


 マウスやキーボードを使い、衛星カメラからの映像をハッキングする。


「これなら、いけるな」


 蒼はて慣れた様子で、パソコンに映し出されているデータをスマホに移行する。

 これで外でもリアルタイムに衛星カメラの映像を盗み見える。


 目的の廃墟まではこれで問題ない。廃墟から先は木々で覆われており衛星カメラでは見ることができない。

 そこから先は臨機応変に動かないといけない。まあ何とかなるだろうと、スマホを弄り、問題なく映像が見えることを確認するとパソコンの電源を落とす。


 チラリと時計を確認すると、昴に伝えた約束の時間まで30分を切っていた。

 蒼は一度無造作に被っていた帽子を脱ぐと、髪を束ね直す。髪を隠す様に帽子を被り直すと、昨日無造作にパソコンの横に置いた返送道具の確認を行う。


「さてと、みぃさんの丸め込みは終わってるから、あとは中原さんが来なければ、いけるな」


 昴を連れ出すにあたり、蒼は昨日の美月との取引を思い出す。




◇◇◇◇




 変装道具を確認してから、蒼は部屋を出て真っ直ぐにキッチンに向かった。キッチンでは夕食の準備をしている美月しかいなかった。周りの気配も確認し、他に誰もいないことを確認すると蒼は迷わずに声をかける。


「みぃさんいるー?」

「えっ、蒼? どうしたの?」


 何を企んでいるんだと言う表情で美月は蒼を見た。酷いなと思いながらも企んでるのは事実だからなと蒼は笑う。

 さあ、どのようにして美月を丸め込もうか考える。


 表情は変えずにまずは、正攻法で攻めることにした。


「明日、すーさんと出かけてきていい?」

「……うん、蒼はダメに決まってるよね。昴君が訳ありなこと気付いた上で言ってるよね?」


 いい笑顔で断られた。まあ、そうだよなと蒼も笑みを濃くする。


「えー、でもみぃさんや中原さんとは外に出てるじゃん。俺がダメな理由はなくない? それに逃亡されないようにだったら、普通に武力で止めれる自信しかないけど?」

「……本当に蒼もあーいえば、こーいうよね」

「屁理屈大好きだからな!」


 呆れた様子の美月に蒼は親指を突き出した。その様子に美月は料理の手を止めて項垂れる。

 蒼はあははと笑いながら、美月の選択肢を削る。


「で、俺がすーさんと出掛けちゃいけない理由ある? 正直みぃさんよりも逃さないって意味なら安全だと思うけど?」

「蒼、遊びじゃないの。昴君を変なことに巻き込まないで」

「でも、どうするか決めるのはすーさんだ。1年間、ちゃんとここで過ごしてる。なら、誰が連れ出しても戻ってくるんじゃないのか?」


 美月が否定の言葉を発する前に蒼は矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。蒼の直感が告げていた。


 "サーカス"のアジトに忍び込むなら、昴を連れて行くべきだと。


 だから、蒼は美月を言葉で丸め込むために正論を武器にする。正直、バレないようにして昴を駿河家から出す方法はいくらでもある。

 しかし敢えて蒼はそれを選ばなかった。


 唯華さえ来なければ、何とかできる自信はあった。それに唯華は蒼の情報はわざと仕入れないようにしていると知っている。そして、昴の情報も駿河家にいる以上は仕入れる必要はない。

 最大の壁である情報通(唯華)はよっぽどのことがない限り脅威ではない。どうせ、既にノアズ計画の全貌も全て知った上で泳がせているだろうから、情報を新たに仕入れるはずもない。


 だから、駿河家から昴を連れ出すのは美月を説得して、中原さえ来なければ問題がない。中原も1ヶ月に数回来るか来ないかだ。それに今は、今日の2人のこともあり特対が忙しいはずだ。まず連続で駿河家を訪れることはないだろう。

 なので、蒼の目的は変わらない。

 

「みぃさん、ここまで揃ってるんだ。ダメな理由はないよね?」

「……危険なことに昴君を巻き込まない?」


 どこか諦めた美月の声に蒼はよしっと内心でガッツポーズをする。


「私に話したってことは、もうすでに昴君は了承済みってことだよね」


 頷く蒼を見て、美月は息を吐く。


「わかったわ。ゆいに何か言われたら、私も一緒に謝る。その代わり、ちゃんと帰ってくるんだよ?」

「あははっ。みぃさん、何言ってるの。危ないことなんてしないって。調べ物を少し手伝ってもらうだけ!」


 真剣な表情で見てくる美月に、蒼は吹き出した。蒼の中では"サーカス"のアジトに忍び込む程度は危険とも思わない。

 呆れた表情の美月に許可はもらったからと蒼はキッチンを後にした。




◇◇◇◇




 昨日の様子を思い出し、蒼は笑う。時間を確認すると昴との約束の時間までまだ少し余裕がある。

 昴には蒼の部屋に来るように伝えた。だから、蒼は部屋で待っていればいい。


 そういえば、昴は荒事になった時に何かできるのかなとふと蒼は気になった。そして前に拳銃タイプの麻酔銃をもらったことを思い出す。

 ないよりはあった方がいいよなとクローゼットの中を漁る。武器なんて使わないと適当にしまっており、かなり奥から発掘された。


 ケースに入った黒光りするそれを見て、やっぱり武器は好かないなと改めて実感する。

 ウィッグとカラコンの横に銃入りのケースを置く。

 約束の時間までもうすぐだ。蒼はもう一度スマホを取り出して、衛星カメラの映像を見直した。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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