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ep104 検証その4

 玄関まで入ると、蒼は八楽の手を離した。八楽は戸惑うように蒼と離された手を交互に見ている。

 蒼は八楽の背中を押す。


「行くよ、やっくん!」

「えっ? ちょっと、蒼。押さないで……」


 しかし、蒼は無視して八楽をリビングに案内する。リビング内に入ると、満足した蒼は背中を押すのをやめる。


「多分、指示が入ると思うから、それまでは好きにしといていいよ」

「好きにって、どうすればいいの!?」わ


 八楽の問いを無視して、蒼はスタスタとリビングの一角に不自然にあるボックス型の席へと移動する。隠れるようにある机の上にはパソコンとモニターが置かれている。

 デスクチェアに座ると、蒼はパソコンの電源を入れる。電源が立ち上がるまでは、デスクチェアを後ろに引き、リビングの様子を見る。


 蒼達から遅れて、理人達も部屋に入ってきた。八楽は蒼が放置した場所から動かずに、オロオロしている。

 理人が八楽に声をかけて、近くの椅子に案内している。

 そうしている間にパソコンが立ち上がる。蒼は少し考えてから、パスワードを入力する。


「よしっ!」


 パスワードはあっていたようで、蒼はガッツポーズをして、マウスを動かす。デスクトップに表示されている、ある一つのアイコンをクリックする。

 たくさんのライブカメラの映像がパソコンに映し出される。蒼はその中から、リビングの全体を映し出している映像を選び、モニターへと拡大する。


 蒼はリビングの状況をモニター越しで確認した。先程、眞琴がサーモグラフィーで観測していたが、この屋敷に設置してあるカメラは唯華がどこかの研究内容を盗んで組み立てた対能力者特化型だ。

 隠蔽などの能力を使用しても映るようにしていると前に聞いていた。


「さて、どうなるかな?」


 蒼は胸の奥から湧き上がるワクワクが止められない。ズームではなくズームアウトでリビング全体を俯瞰する。


 玄関近くの椅子に理人達は座り、話をしている。離れた位置では先程使用したサーモグラフィーの機械を八楽に向けて設置し直し、端末を見ている眞琴。

 他にも美月達もいるが今までの検証結果から、あまり意味がないだろうと結論づける。


 八楽が能力を使うように指示されたのか、立ち上がる。そして、チラチラと零を見ていた。

 知らない人がいるから本当に能力を使用していいのか迷っているのだろう。理人が説明して、安心したように多分、能力を使った。モニターには変わらずに八楽の姿が映っている。


 蒼は、デスクチェアを引き、裸眼でリビングの様子を確認する。八楽の姿はリビングにない。普通に能力を使い透明化をしているのだろう。

 机が離れて、眞琴のもとに向かう。


「まこっさん、どう?」

「普通にすぐに姿が見えなくなった。桑内のように能力を使っていない認識にはならなかった。あのミサンガは性能を知っている者が装着した場合のみ機能するって事だな」


 眞琴はそういいながら、タブレットに文字を打ち込むと機械を片付け始めた。

 蒼はチラリと八楽達の方を見る。八楽は能力を解除したようで、蒼の瞳にもしっかりと姿が映っている。

 眞琴は機械を持って、部屋に戻ろうとした。蒼は引き止める様に話しかける。


「まこっさん、後で一緒に確認して欲しい映像があるんだけど」

「この検証に関係あるものか?」

「そうそう! 関係ある! 荷物部屋に置いたら、あの角の一角に来て!」


 蒼が元気に先程までいたスペースを指さしながら伝えると、眞琴は頷き、そのまま歩いて行った。

 蒼は先程のボックス席に戻ると、デスクチェアに座る。そして、リビングのカメラの映像を理人で検証していた時間に戻す。

 少しすると眞琴がやってきた。


「これは、監視カメラの映像か?」


 眞琴が蒼の座るデスクチェアの後ろに立ちたがら、モニターを覗き込んできた。

 蒼は頷いて、監視カメラの特殊性の説明をする。


「……山吹め、私の情報も盗んでいたのか。使用料をもらわないとな」

「あっ、やべ。ゆいにドヤされる」


 蒼は自分の口が滑ったことに気付き、やらかしたなと笑う。

 そして、マウスを動かして映像を再生する。

 映像は、淡々と過去の出来事を再生していく。


 理人が能力を使う瞬間も、戻ってきた瞬間も、蒼がリビング内で自由に動いている瞬間も全てが映し出された。

 蒼は少し考えてから、リビングにあるもう1つのカメラに映像を切り替える。そしてまた時間を戻して、再生する。


「ほお」


 何も説明しずに映像を変えたが、眞琴は蒼の意図を理解したようだ。興味深そうに身を乗り出しているのを気配で感じる。

 映し出された映像はさっき見た映像と同じだった。

 理人が能力を使う状態も普通に映し出されている。


「リアルタイムの機械は騙せる。しかし、記録には残るのか。これは中原に共有したほうが良さそうだな」

「あとは、犯人達がどごで知ってるかもだな。少なくとも俺が会った2人はどっちも姿を消せるって知らなかった感じだったし!」


 眞琴と話をする。検証してミサンガについてわかったことは、いくつかある。


 一つ、ミサンガをつけている人間の認識がそのまま周囲への阻害として表れる。

 一つ、ミサンガの性能を知っており、付けていることを知っている人間には効果がない。

 一つ、能力を無効にする機械を使用しない限り、機械をも阻害する。

 一つ、機械はリアルタイムでは阻害されても、録画などを確認すれば阻害されていない状態が見える。


 何個かは明確な弱点がある。それでもそれなりの策士がいればバレずに、やれることは多くある。

 蒼はまだノアズ計画が何かはわからない。それでも、阻止するために既に唯華が動いている理由はすぐに察せた。


 放置して後から巻き込まれたほうが面倒。


 珍しく金儲けよりも先に動いている理由がわかり、思わず蒼の口からは笑いが溢れる。

 勝手に唯華のパソコンを使ったことがバレない様に、元に戻しながら電源を落とす。


 眞琴は既に八楽の元まで行き、ミサンガを回収している。

 ミサンガの性能は理解した。なら、これ以上詳しく調べるのは研究者(本職)の仕事だろう。

 蒼はそう判断すると、駿河家を後にした。どうやって、ノアズ計画について探ろうかと考えながら、通り慣れた道を歩いた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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