イチョウ並木の先で
改札を出る。
目が合った。
息を飲んだ。
「よう、久しぶり」
見慣れない制服を着た君が、私に微笑みかける。
「ひ、久しぶり」
声が裏返りそうになった。
君が高校の制服を着ているところを初めて見た。
卒業してから会っていなかったから、9ヶ月ぶり。
久しぶりに会った君は、背も肩幅も大きくなっていて、なんだか急に鼓動が早くなってしまう。
「折角だし、途中まで一緒に帰る?」
思いもよらない提案に、
「あ、うん」
という間抜けな返事をしてしまった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
君とは前に一度、この道を一緒に歩いたことがある。
その頃の私達は、まだ中学の制服を着ていて、この並木道が黄葉したイチョウで満たされていた時だった。
今の時期は葉が落ちて、イルミネーションが眩しいくらいにキラキラしている。
「綺麗だね」
「そ、そうだね」
緊張して、上手く話せない。
だって、だって。
私、君のことがずっと好きだったんだもん。
一緒にイルミネーションを見ながら歩いているなんて、夢みたい。
「高校、どう?」
「えっと、た、楽しいよ」
「そうか、よかった」
「君は、どう?」
「楽しいよ」
「それは、よかった」
なんだ、この拙い会話は。
こんなチャンス、奇跡みたいなことなのに。
情けない自分がやるせなくなって、「消えてしまいたい」と思った、その時、
「ふっ」
横にいる君の顔を見上げると、笑っていた。
「なんか、変な会話だね。僕、緊張しちゃってさ」
君も、緊張してたんだ。
「わ、私も、なんだかすごく緊張してる」
私達は顔を見合せて笑った。
君の笑った顔が、好き。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
並木の先の分かれ道で、君とはバイバイだ。
夢みたいな時間はあっという間だったけど、また君の笑顔が見られて、私はすごく幸せだった。
私は臆病だから、この気持ちを君に伝えることはないだろう。
寂しくてたまらないけど、どうか、幸せになってね。
「じゃあ、私、こっちだから。バイバイ」
私から、別れを告げる。
しかし、少しの沈黙の後、君はこう言った。
「待って。僕、君に伝えたいことがあるんだ」