凛は頁を捲った
凛は本を開いた。
初めの頁には目次が書いてあった。
凛は頁を捲った。
第一章が始まった。
凛はどんな物語が始まるのかとドキドキしている。
凛は頁を捲った。
主人公が出てきた。
凛はずらりと並んだ文字に新鮮さを覚えた。
凛は頁を捲った。
主人公に友達ができた。
凛は顔を綻ばせた。
凛は頁を捲った。
主人公の家族が死んだ。
凛は涙を堪えた。
凛は頁を捲った。
主人公の友達が事故で植物状態になった。
主人公は1人になった。
凛は涙を流した。
凛は頁を捲った。
主人公は精神を壊した。
凛は疲れた。
凛は頁を捲った。
主人公は優しい周りの人間のおかげで精神が治った。
凛は喜んだ。
凛は頁を捲った。
主人公の友達が目を覚ました。
凛は感動でまた涙を流した。
凛は頁を捲った。
主人公の街が空襲に遭った。
主人公たちはシェルターに逃げ込んだ。
凛は展開に驚いた。
凛は頁を捲った。
主人公の親友が戦場に出ることになった。
主人公は必死で止めた。
親友は国のために戦場へ行った。
凛はこの先の展開を願った。
凛は頁を捲った。
主人公の元に、親友が死んだと連絡が入った。
凛は泣いた。
凛は頁を捲った。
主人公は親友や家族のもとに行くためにシェルターを飛び出した。
道に転がっている死体を避けながら。
凛はまだ泣いている。
凛は頁を捲った。
主人公の近くに爆風が舞った。
主人公は戦争の中心へと走った。
凛はまだ泣いている。
凛は頁を捲った。
主人公は戦争の中心にたどり着いた。
ここでなら死ねると目を瞑った。
凛は諦めた。
凛は頁を捲った。
主人公は空襲の爆発で飛ばされた。
…はずだった。
凛は目を見開く。
凛は頁を捲った。
主人公は男の兵士に庇われて瓦礫の下に潜り込んでいた。
死ぬことができなかった、楽になれなかったと主人公は泣いた。
凛は涙を流した。
凛は頁を捲った。
主人公の前に帽子を深く被った男が来た。
男は主人公に声をかけた。
凛は驚いた。
凛は頁を捲った。
男は言った「君を記した本はいらないか?」
主人公は少しだけ読ませてくれないかと男に尋ねた。
男は縦に首を振ると本を手渡してきた。
主人公は本を受け取ると表紙を開き読み始めた…
主人公は…凛はそこまで読み終えるとパタリと本を閉じた。
「もういいのかい?」
男が凛に聞く。
本の頁はまだ残っている。
「もういいの、この先は自分で生きたいから」
男は小さく笑みを浮かべると、「そうか」と言って去っていった。
凛は立ち上がった。
凛の瞳にもう涙はない。
未だ戦っている人たちにバレないよう息を潜めて、自分を庇った兵士の死ぬ間際に教えてくれた秘密の道を通って街へと戻っていった。
10年後、凛はまた頁を捲る。
過去の自分を振り返りながら。
狼です。
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この作品は「本」「少女」「過去」の3つを題材として執筆いたしました。
凛と主人公、そして謎の男の渡してきた本。これらは一体どんな関係性があったのでしょうか、、、?
この作品を気に入ってもらえたら、ぜひ他作品のチェックもよろしくお願い致します。