門の中で
ご覧いただきありがとうございます!
やっと私の番が来た。
くぐる前にふと気付いたことがあった。
柵の中の音が一切聞こえないのだ。
不安がぶり返しながらも門をくぐった。
くぐって言葉を失った。
先に入ったはずの人達が倒れていたのだ。
「大丈夫ですか?!」
叫びそうになって外の看板を思い出し、慌てて口を抑えた。
【大声を出すことは禁止です。】
恐らく、倒れている人はルールに違反して____に襲われてしまったのだろう。
私の後に入ってきた人たちも叫びそうになっている。
金髪の少年が大丈夫かと小さな声で倒れている人の肩を揺すっている。
───と、上から何かが降ってきた。
<ピーンポーン! ルール違反、ルール違反、道端に落ちているものには手を触れないでください。
ルール違反が確認された為___が来ます。パーンポーン!>
そんな放送が集落全体に響き渡っているが、私達は気にしている余裕はなかった。
落ちてきたのは熊だった。
長く鋭くとがった爪で金髪の少年の胸の辺りを突き刺している。
金髪の少年は何が起きたか分からないという顔をしていた。
緑のインナーカラーをしている少女が声を出さないように口を抑えながら、見開いた目からボロボロ涙を流している。
熊は何度か金髪の少年を刺したあと腹の辺りを食べ始めた。
金髪の少年の顔が苦痛に歪み、その口から絶叫が飛び出した。
熊はルール違反していない者には興味が無いようだった。
金髪の少年の腸を食べ終わったあと、周りにいる人間を見渡したあと空気に溶けるように消えていった。
しばらくは誰も動けず、誰も喋らず泣いている人のくぐもった嗚咽だけが響いていた。
しかしここもずっと安全な場所の保証がない、少しでも情報を集めなければ。
そう思い黙祷を捧げた後、重たい身体を動かした。
つられたかのように周りの人も動き出し、泣いている人を慰めながらその場の全員で集落の奥に進み始めた。