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ようやく、建物が見える所まで来た。
建物の周りは高い柵で覆われており、小さな集落があるようで出入りは門からしかできないようだ。
門は1人がようやく通れる幅で、逃げてきた人でごった返していた。
待っていられない人は他に逃げられる場所がないか柵に沿って走っていった。
今の所、蜘蛛が来ていないとはいえいつ来るかも分からないので、
ここで立ち往生しているのは危険かもしれない。
そう考えていた時隣にいた赤いメッシュの少年が話しかけてきた。
「なぁ、お前ここに来る前の記憶あるか?俺は部活の途中までしか記憶が無いんだ。」
彼もここに来た記憶が無いようだ。
なんの部活かは分からないが、確かに動きやすそうなTシャツとハーフパンツを着ていた。
「私も記憶が無いんだよね。私は学校からまっすぐ家に帰ったはずなんだ。さっきの蜘蛛みたいなやつなんなんだろうね…。」
そう答えた私に彼は周りを見渡しながら、
「俺も分かんない。今んとこ近くには来てないっぽいな、急いで逃げてくるやつもいないし…。無事に帰れるといいけど…。」
と言った。
その後も緊張をほぐす為にも周囲の警戒をしながら周りの人も交えて色々な話をした。
他の人も記憶が無いとこ、覚えている限りの時間は15時を過ぎていたこと、それぞれ住んでいる都道府県が違うこと。
私達の番が近くなった時に門の近くに看板が立っていることに気づいた。
看板には
【ここは、入口です。この先一方通行の為、進行方向にご注意ください。建物の中は許可がない限り立ち入り禁止です。道端に落ちているものには手を触れないでください。大声を出すことも禁止です。ルールを守れない場合____が来ます。】
と書かれていた。
柵の間から集落を見てみると、ヨーロッパ風で、通れるところは真ん中しかないようだ。
「____って何だろうね?もしかしてここもさっきの蜘蛛みたいな奴がいるのかな。」
ボブの少女が同じように中を覗きながら呟いた。
「こんな狭そうな所であの蜘蛛が来たら逃げられなそう…。」
私は逃げ切れる自信がなくてそう呟いた。
周りにも不安そうにしている人が沢山居た。
「ここに居たって逃げなきゃ行けないんだ、門の向こうはルールさえ守れば安全かもしれないし、行ってみる価値はあるだろ。」
青いピアスをつけている少年が励ますように言った。
たしかにそうだ、まだここがどんな場所かわかっていないんだ、安全な場所があるかもしれない。
「そうだね、みんなで頑張ろう。」
不安を押し殺して微笑んでみた、引き攣っていたかもしれない。
それでも周りの人も同意してくれた、引き攣りながらも微笑みを返してくれた。