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「お前らー、席に座れー」
そうこうしている内に担任がやって来て、ホームルームが始まった。俺はただ、その内容を聞き流していた。そして気が付くと放課後を迎えている。最近はこんな事が日常茶飯事だが、ノートにはしっかりその日の勉強した内容が掛かれているから、授業はちゃんと受けていたみたいだ。放課後はバスケ部があるので、荷物をもって体育館に向かう。今日も一番乗りで着いたので、練習着に着替えて用具室から道具を用意する。
バッシュを履いてから軽いシュート練習から始める。レッグスルーなどのドリブル練習から始まりレイアップ、フリースロー、スリーポイントとシュート練習をする。このルーティンを欠かさずにやっているのは「これから部活が始まるんだぞ」と身体に知らせる意味合いもある。
少しして他の部員がやって来て、練習が始まった。声出しはみんなのまとめ役の部長が行う。俺はゲームキャプテンで、試合中にみんなをまとめる役割を与えられている。本当ならチームの司令塔でみんなと仲の良いポイントガードの選手――――鈴木がキャプテンの方が良いと思うんだが、みんなから指名されて俺がキャプテンをやる事になった。荷が重いがボロを出さずに何とかやって来ているのはサポートしてくれる部長と鈴木がいるからだ。
「よし、お前ら集合!」
約二時間の練習を終わらせると、熊の様な見た目をしている監督の周囲に集まった。
「来週は練習試合が控えてる! 夏休みにある全国大会出場決定を決める試合に向けて、チームの調整も兼ねている大切な試合だ! 皆、気を引き締める様に!」
そしてミーティングが終わり、本日の練習は終了した。後は自主練習をしたい部員だけが体育館に残るが、俺はいつも自主練をするために残っていた。
「あれ、佐々木は今日も残るのか?」
先ほど言っていた、ポイントガードの鈴木が声を掛けて来た。鈴木はバスケが上手く、自主練も行っているが今日は何人かと飯に行くみたいだ。
「ああ。ちょっと、シュートの角度が悪い気がしてな」
「そうか? いつもと同じで綺麗に入ってるけどな」
気にし過ぎだ、と鈴木は言う。だがシュートを打っている俺自身が、ほんの少し曲がっていると感じているんだから、きっと曲がっている。それに少しでもシュートの成功確率を下げるとチームの得点も減ってしまうかもしれない。
そうなればみんなに迷惑をかけてしまう。だからもっと頑張らないと。
「無理はするなよ?」
「ああ。ありがとう、また明日な」
「おう! 来週も頼むぜ!」
……頼むぜ、か。
俺はさっきよりも気を引き締めて、シュートを打った。その日の俺は自主練で三百本のスリーを打った中で三十七本も外してしまった。もっと頑張らないと。
部活が終われば次はバイトだ。もう二十時になってしまったが、バイト先は居酒屋なのでこれからが忙しい時間帯だ。更衣室で着替えて、すぐにホールに入る。明日は休日では無いのだが、沢山の疲れたサラリーマンが酒で身体を癒しにやって来ていた。
学校が終わり、部活に自主練も合わされば流石に身体に負担がかかるが、新しいシューズや練習着を買うためのお金が必要だ。やめるわけにはいかない。
何とか退勤時間まで頑張り、いざ帰ろうと思ったら店長から声が掛かった。
「あっ、ちょっと待って佐々木君! ごめんだけど日曜日に出てくれないかな? ちょっと人足りないのよ!」
忙しいからか、店長は声を少し荒げて言う。日曜日……、午前中は部活があったけど午後は何の用事も無かったはずだ。強いて言えば溜まっているアニメを見たかったけど……。
「良いですよ! 午後からでいいですよね?」
「ありがとう~、時給割り増しで入れとくから~!」
「ははっ、よろしくお願いしますね。店長も早く休んでくださいね」
早く、早く家に帰って休みたい。喉から出かかっている言葉を何とか呑み込んで、俺は居酒屋の裏口から退社した。
家に帰って一人で夕食を食べ、シャワーを浴びてから部屋に戻るとそのままベッドに身を投げた。こうしてベッドに抱かれて眠ってしまいたい。
だが三週間後には期末試験がある。毎回の様に成績上位は確実で、前回のテストではついに学年一位の席を入学当初からキープしていた三組の大関から奪取した。教師からは肩に手を置かれて「次も期待してるぞ」と言われた。
「期待に応えなきゃ……」
俺は深夜の三時まで机に向かい続けた。いつ眠ったのかは覚えていない。
それでも今日の俺も仮面を剥がす様なヘマはし無かったと思う。
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