愚か者
「それと、婚約に関して私の気持ちを考えて頂けるのは嬉しいですが、レオン殿下のお気持ちも大事かと」
そう言った私に陛下は「もちろん、今回の件でお互いが想い合えるのが大事な事だとよく分かったからね。」
「分かった、この話は保留する。
まずはロザリア嬢の気持ちの整理を尊重しよう。その後はレオンとよく話をしてみてくれ。」
「はい」
レオン殿下と婚約なんて、昨日まで考えもしなかった展開に戸惑いつつも、どこかで気持ちが浮き立ってしまいます。
◇◇◇◇◇◇
その後
謁見の間にて・・
「なぜ呼ばれたか、分かっているな」国王の声が響いた。
公聴の者は限られていた。2人の兄と正妃のマリー様側妃クラウディア様そして、ボルドー公爵と他の五大公爵の面々だ。
「父上、私は何も身に覚えはありません」
「ほう?お前にはすでに手紙を送ってあるだろう?読んだのか?」
「はい。しかし書かれている事は覚えのないものばかりですし、なぜロザリアとの婚約解消をされたのかも分かりません」
本当に分からないと言う顔をするアロンを見てボルドー公爵から鋭い視線が向けられる。
「事実でないとな? お前がロザリア嬢をないがしろにして、子爵令嬢と親しくしていたのは学園では知らぬものはいまい」
「リリアとは気が合って、よく話しはしていましたが、父上が考えるような仲ではありません」
「では、昨夜お前がロザリア嬢に言った婚約破棄については?」
「そ、それはちょっとしたイタズラです、リリアと2人でロザリアを騙そうと思っただけで本当に破棄するつもりはなかったのです。
そもそもアイツがロザリアがいつも私を蔑ろにしていたのが悪いのです」
ボルドー公爵から冷気のようなものが漂って来ていますがアロン王子は気がつきません。
「いつもいつも、私に意見してくるし、愛想笑い1つ出来ない上に気も利かない、しかも公爵令嬢だからとリリアを見下し虐めていたのですよ」
アロン王子は思い出したように興奮してきます。
「だから、自分の立場を分からせようと、ちょっと脅してやったのです」
自分では正当な言い分だと思っているようだか、周りからはため息や白い目が注がれている。
本人は気がついていないようだが…
そして空気の読めない人物がもう1人いた。
「なんて、不憫な。アロンは何も悪くないではありませんか!」
クラウディア妃が声をあげる。
チラリとクラウディア妃に一瞥をくれた陛下はアロンへ目線を戻し言った。
「そもそも、ロザリアがお前に意見して何が悪いのだ? 婚約者ならお前が間違いを犯せば、嗜めるのも当たり前ではないか。いつでもロザリア嬢の意見は正しかったと証言も取れているぞ」
「それにリリアとか言う子爵令嬢をロザリアが虐めていた事実はない、反対にロザリア嬢に対しての嫌がらせの報告は上がっている」
「そんなはずはありません!
私は直接リリアから聞いています!
顔を合わせるたびにロザリアに蔑んだような目で見られると。
いつも言葉使いが悪い、それでも貴族かと罵られると。その上足を掛けられたり、噴水に落とされたり。」
「それは、リリア嬢が言っていただけであろう?
その裏付けは取ったのか?」
「そ、それは…
しかしリリアが嘘をつくはずありません!」
「はあー」声に出してしまう程のため息を吐いた
陛下を周りが気の毒そうにみていた…