ふたたびリリアその後
ふたたび娼館・・・
「リリア… 今月の試験も落第だわ」
ため息まじりに、アンネが言います。
もうなん回目だったかしら?3回目?4回目?
私はお湯を沸かす仕事以外に貴族の基礎をやり直しさせられている。
この前会った3人の貴族もどきに負けを認めてしまった自分の心に、私の根拠のない自信はポッキリ折れてしまった。
今までこの変な自信の所為で自分を顧みず好き勝手をしてきた。人の話しも全く聞かなかった。
なぜそこまで自分に自信を持てたのかも、今となっては分からない。
そしてアンネに貴族の令嬢として基礎的な事をもう一度勉強しろと言われた。そして毎月試験を行い、合格すれば、ステップアップするとの事。
良くは分からなかったが、ステップアップの先に彼女たちになれる未来があるらしい。
でも、貴族の身だしなみ、仕草、心得何を習ってもしっくりこなくなっている。
私は本当に貴族だったのかしら?
今では朝の下働きのが気楽で苦にならない。
同じ下働きの子達とも仲良くなった。
思い返せば、同年代の女の子と友達になったことがなかった。
貴族の令嬢たちとは上手くいかなかったからだ。
だんだんステップアップする意味が分からなくなる…
彼女たちみたいになって、私はしあわせなのかしら?
豪華なドレスや宝石を身につける事が出来ても、その先には知らない男の人の相手をする事になるのだ。
その事も下働きの仲間に教えられた。
私は娼館も娼婦も意味が分かってなかったのだ。
確かに私は生娘じゃない、でも誰とでもそういう事が出来る訳じゃない。
アロンの事はちゃんと好きだった。
仕事として、知らない男とあんな事をするなんて、絶対無理だ。
試験の落第を告げたアンネに向かって、私はこのまま下働きをしていきたいと、自分の気持ちを伝えた。
アンネには、このまま私が真面目に働いても、相当長い間ここで働く事になるがいいのかと聞かれた。
私はそれでもかまわない。
もう貴族に戻れもしないのに、そんなことに努力してまで、知らないおやじの相手なんてしたくない!
と思ってることを言ってやった。
アンネは少し笑って、「好きにしなさい」と言った。
朝の水汲みとお湯焚きの他に廊下の掃除も仕事に加わった。
結局、下働きもステップアップがあるのね。