アロンその後(2)
3ヶ月後、北の辺境伯領
━辺境伯爵視点━
あのアロンがここに馴染みつつある…
意外だった。すぐ音を上げて逃亡すると思っていた。
だからこそ陛下に一筆書いて確約をもらっておいたのだ。
なのに、
「うーむ、解せんな」
「どうかしましたか? 閣下」
騎士団長がたずねた。
「いや、アロンの事だ。かれこれ3ヶ月たってしまった事に少々驚いたんだ。」
「ああ、確かに…体力もまだまだ、剣術も上達しませんが、何でですかね?
皆3日で逃げ出すと思ってましたからね」
「騎士団寮での様子は?」
「最初こそ何も出来なさすぎて、怒るより皆が呆れまくってましたがね。マックスが… 副団長がよく世話を焼いてましたな」
「ああ、最初に案内をさせたのはマックスだったな」
あいつは子沢山の家の長男なはずだな。
小さい弟たちのためにここへ来た奴だ。
「多分、ダメで何も出来ない奴をほっとけないのは性分ですかね。弟にでも見えてるんじゃないですか?」
「なるほどな」
「それに、誉め上手というか、ちょっとした事でもマックスが大袈裟に誉めるんですよ。アロンはマックスの手のひらで踊らされてますよ」
「なんと!」意外な話を聞いたな…
━アロン視点━
毎日毎日、同じような訓練をさせられる。
もうイヤだ! 毎日、今日こそは逃げ出してやろうと思ってるのに、アイツがマックスがいつも邪魔しやがって!
気づいたら、もう何ヵ月経ってるんだ!
ちくしょう! 今日こそは。
訓練場の周りを走っている、オレはついていけずどんどん置いていかれる。もうヘロヘロだ。
周りに誰もいなくなったのを見て、走ってる振りしてこっそり森の方へ少しずつ近付いて行く…
その時音もなく背後から大きい影が…
「アロン大丈夫か?、どんどん斜めに走ってるぞー」
「!」
ちくしょう! また現れやがった
「あ、ああ ちょっと目眩が…」
「ほら、一緒に行くぞ。」
「お前、さっき1番前にいたろ?
なんで後ろから来るんだよ。」
「ん? 今3周目」
「え? オレ1周目だぞ。いつ抜かされたんだ?」
「さっき声かけたじゃないか。聞こえなかったのか?」
「分かるわけないだろ、こんなにキツいのに。」
「そうか? でもアロン気を失う事もなくなったじゃん! すごいすごい! 進歩してるぞ」
「オレの3倍早い奴に言われても嬉しくない!」
そう言いながら顔が赤くなるのが分かる。
ちくしょう!
もう少しだけ、ここにいてやろうかな。