お互いの気持ち
2人の噂は社交界にセンセーショナルに駆け巡りました。
まあ腐っても王子だった方のスキャンダルですしね。
そしてお母様やマリーベルたちのお陰で、私の悪い噂は回避出来ました。
まあ少々同情はされましたが…
そして1ヶ月近くたちました。
その間の夜会のお誘いや婚約の申し込み、お見合いの申し込み等々なんとも忙しなかったです。
やっと少し落ち着いてきたので、乗馬クラブの定例懇親会に出席する事にしました。
レオン殿下にお会いするかもと思うと私の心臓は飛び出すほど勢いよく暴れています。
そこへ声をかけられました。
「ロザリア嬢久しぶりだね。元気だった?
その…落ち着いたかい?」
殿下、不意打ちはなしですわ、心の準備が!
内面の動揺を隠し、平静を装いながら答えます。
「お、お久しぶりです殿下。その節はいろいろお世話になりました。もうすっかり落ち着いております。」
ニッコリと笑いながら答えます。
どうか顔が赤くなってませんように…
「そうか…よかったら、久しぶりに二人で馬を走らせようか?」
「ええ、よ、喜んで」
お誘いに応じてしまったけれど、私の心臓もつかしら?
前は二人でいても平気だったけど、いまは少し不安だわ…
嬉しいけど、どうしていいか分からなくなりそう…
私たちは馬場から近い郊外の湖まで、馬を走らせました。
馬たちを休ませながら、湖の畔にある倒木に腰を下ろしました。
「はあ、以前ここに来たのはずいぶん前のような気がするな。」
「本当に…まだ数ヶ月もたってませんよね。」
湖面を見ながら、感慨深く想いを巡らします。
「ロザリア嬢には大変な2年間だったね。改めて愚弟の事、身内だった者として謝罪するよ。」
「そんな、止めてください。レオン殿下がいろいろ手を差しのべて下さったから、今こうしていられますのに…」
「いや、わたしは、わたし自身の為にやっていたに過ぎないんだ。情けないことを言ってしまうけど、
ロザリア嬢をあいつに渡したくはなかったから…」
そう言って殿下は顔を横に向けて耳を真っ赤にしています。
今、言われた事を頭の中でもう一度反芻して、やっと意味がわかった私は
「はぇ?」変な声を出した後と音がしたかと思うほど、一瞬で顔が赤く熱くなりました。
同時に下を向く。もう顔を上げられる気がしない。
「いきなり、ごめん。
毎日、今までの友人関係を大切にしたい気持ちと、もう待てない恋慕の気持ちが戦ってて…
それに、すごい数の求婚話が舞い込んでるって聞いて
余裕がなくなってしまった…」
「あ、あの、お話はたくさん来ましたが、全てお断りしてます。もう顔も知らない方との婚約なんてまっぴらですし…」
「はあー、それを聞いて少しだけ安心した。」
「少しだけ?」
「ああ、だってあの時君は父上の話を保留にしただろ?」
あの時?レオン殿下との婚約をって言われた時のこと?
「陛下の話ですか?」
「わたしとの婚約を保留したから、ちょっとショックだったんだ。
あの時言ったわたしの気持ちを大事にってどういう意味だったの?」
「それは…
いくら私が望んでも、もし殿下に好きな方がいたら、私が邪魔をする事になってしまいますでしょ?
あの時私はレオン殿下のお気持ちを知らなかったし…
今度はお互いに尊敬と愛情のある婚約をしたいと思ったんです。」
「ロザリア嬢も同じ気持ちでいてくれるって自惚れていいのかな?わたしは君に言ってもいいんだよね?
好きだって」
「…は、はい」
「ロザリア嬢、顔をみせてくれ」
「む、無理です。恥ずかしくて、顔を上げることが出来ません。」
レオン殿下の手が頬に触れました。
少し力を入れられて、顔を上げられます。
「で、殿下何を!」
「私をみてくれ!」
「っ!」
顔から手を離し、代わりに手を取られ甲に口づけを落とされました。
「ロザリア・ボルドー公爵令嬢あなたを愛してます
わたしと結婚していただけますか?」
もうダメです。涙が溢れそう
ちゃんと返事しないと。でも声を出したら、涙が…
しっかりするのよロザリア
「は、はい。よろしくお願いいたします。
ふ、ふぇっ えっーん」
ああ、やっぱり堪えきれなくなってしまった。
貴族令嬢としては、はしたなく声を上げて泣いてしまいました。
レオン殿下は私を愛おしそうに見つめ、そっと抱きしめ背中をさすってくれました。




