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卒業パーティー

「ロザリア・ボルドー、貴様との婚約を破棄する!」

声高々に宣言しているこの男は、この国の第3王子アロン・パルフィートだ。


扇子で隠していた口許が緩むのを我慢できない。

ダメだわ、まだ喜んではいけない。

楽しみはこれからよ。



遡ること、30分程前


卒業パーティーが始まり各々ダンスや歓談を楽しむなか、私は親しい令嬢たちとおしゃべりを楽しむためソファーの置いてある奥の談笑スペースを目指していた。

そこに1組のカップルが私の前に立ちはだかる。


「こんばんはロザリア様、お1人ですか?

まさか、公爵令嬢のロザリア様がパートナーもいなく学園の大事な卒業パーティーに出席なさるなど、あり得ませんよね?」


この嫌味たっぷりの挨拶をしてくる女はリリア・エルガー子爵令嬢だ。


常識的に考えれば、格下の子爵令嬢が公爵令嬢の私に声をかけるのも、こんな失礼極まりない事を言うのも

あり得ない。


あり得ないけど、この女は貴族にあるまじき行動ばかり取っているからしょうがないのよね。


でも許す気もないので、無視する。


閉じた扇子を口許にあて、(私は無礼なあなたとは話したくありません)と言う意味を、態度で示す。


しかしこの女には通じなかったらしい。


「何をすまして、黙っていらっしゃるの?

あら? 図星過ぎて何も言えないのかしら?」

声をあげて、令嬢らしからぬ笑い方をしている。



そもそも貴族令嬢の立ち居振舞いの基礎が抜け落ちているこの子に扇子の使い方も笑い方も分からないのかしらね。


周りにいた他の令嬢たちもドン引きしてますね。


はあー、ため息を漏らし聞くに絶えないと眉間にシワを寄せながらアロンの方へ向き直り挨拶の為にドレスをつまんで腰をおる。

後ろにいる令嬢たちも右にならう。


要は(こんな女は無視よ)と言う態度を取りつつ、(一応王子なので礼儀を尽くしてます)と言う感じです。


アロン様は憮然とした態度ながら、私たちに挨拶を許した。


「こんばんは、アロン殿下

私に何かご用でしょうか?」


私が顔をあげ、挨拶するとアロン様は片眉をあげて私を睨んだ。

「お前、なぜリリアの問いに答えない?」


「これは異なことをおっしゃいますね。

仮にも公爵令嬢である私に公の場で格下の子爵令嬢が話しかけるなど、あり得ませんので。」


「っ… だが今は私の連れだ。しかも学園内は爵位による上下関係は許容されているだろ」


「おそれながら、いくら殿下のお連れの令嬢でもそれは出来かねます。

婚約でもされていれば別ですが…」

チラッと二人に一瞥をくれる。


アロン様は目をそらし、リリア様はふんっと横を向いた。


「それに学園内の上下容認の話しはあくまで普段の学園生活のみ有効なものです。

学園主宰でも入学パーティーや卒業パーティー、模擬晩餐会は公の場でありますし、これから社交界に出るための練習の場と言う一面がある以上、貴族の基本的なルールを無視するなんてあり得ませんわ」


私が正論を言うと後ろの令嬢も頷く。

周りで見ていた人達も、賛意を示す。


大体アロン様の婚約者は私だとみんな思っているんだから、この状況で向こうの肩をもつ人なんていやしないのです。


本来なら私のパートナーがアロン様であり、エスコートされているはずなのに。

リリア様と登場しているだけで、王子の癖に非常識と皆さんが思ってるのに全然空気読めてないですよ。


「うるさい! オレはリリアと真実の愛を実らせるんだ。お前のようなオレを見下す可愛げのない女など、オレにふさわしくない。」


そう言ってリリアを引き寄せて睨んでくる。

リリア様はしなだれかかり、嬉しそうにニヤニヤしてる。


はあー うざい。と思いながらもそんなことはおくびにも出さず扇子を開き口許を隠すし目を細める


(見るに耐えない、愚か者)と言う意味ですよ。


同じようにしている令嬢もチラホラいますね。

後ろで聞くに絶えないと言う囁きも聞こえます。


でも、二人は何も感じないらしい。

この冷めきった空気の中ある意味凄いですわ。


そろそろ相手をするのも面倒になってきた頃、私の視界にある方を見つけた。


じゃあ、最後のひと頑張りだわ


私は気を取り直して、口をひらく





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