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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛した相手は人魚姫

【どうして、泣いているの?】


 君は、笑って言うの


 ちょっと困った顔をしながら


【どうして、泣いているの?】


 僕は、笑って言うの


「君が、泣かないから僕が泣いてるの」


 泣きじゃくって、笑顔になって


 どうしようもないこの想いがしんどくて


 魔女の呪いにかけられた、君は笑って言うの


【あなたに、出逢えて本当に良かった】


 って……。


 その“表情”で言うの


 出せぬ“声”は呪いの証


 王子に恋して、焦がれて、捨てられる


 泡沫に消えゆく人魚姫


 だけど、その代わり


 こんなにも表情は表現力豊かなんだ


 見ればさ、直ぐに分かるだろう?


 何を言ってるのか、どうしたいのか


 ――直ぐに、分かる、だろう?


【あなたのこと、好きになれたら良かったな】


 君は、笑って言うの


 ちょっと、困った顔をしながら


 “好きになってよ、今からでもっ”


 張り裂けそうな僕の想いは、言葉にならないの


 言葉にした瞬間


 君を更に困らせること知ってるから


「僕が、王子だったら良かったな」


 君だけを見るよ


 君だけを、愛すから


 “だから、お願い、泡沫に消えないで!”


 ――君は、困った様に笑った


 ――僕は、目一杯この手を伸ばした


 ……嗚呼、分かってた


 分かってたん、だ


【掴めない、ことくらい】


 ――だって、僕は王子じゃない


 泡沫、ふわり、と跡形もなく、消えた君


 僕の手のひらに残ったのは、ほんの小さな沫、一つ


 ぐしゃりと握ってしまったら


 すり潰して水滴になるだけの


 それを、僕はそっと、海に還した


【せめて、君が、安らかに、眠れますように】



 愛した相手は人魚姫


 叶わぬ、恋の結末は


 ――苦みと痛みだけ残して泡沫に消えた




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