第二十九話 「二人の秘密」(中編)
第二十九話 「二人の秘密」(中編)
林は続けた
「俺のしたことなんて、俺の苦しみから比べたらまだまだ足りないくらいだ。
俺はあの女が死んだ後、養護施設で今迄育てられた。孤独で身寄りもない
知り合いも一人もいない。いつも一人だった。
俺はあの女に育ててもらったなんて思ったことないぜ
俺は自分の力で今迄生きてきたんだ・・。
お前みたいに裕福な環境で育った奴とは違うんだよ!!
思えば、俺とお前はいつも光と影の逆の立場だったよな
お前は小さい頃からそうだった。いつもへらへら笑っていて
近所でも良い子ちゃんでみんなに褒められていた。
それに比べて俺はいつも出来の良いお前と比較されていた
お前と俺は周りから見て月とスッポン状態だった。
両親の離婚の時もそうだった。出来の悪い俺は親父から引き取るのを
嫌がられて捨てられたんだ。お前は知らなかっただろうが、
俺が幼少の頃、参観日で親父の似顔絵を書いて渡したら
アイツどうしたと思う?親父の書斎のゴミ箱に捨てられていたんだぜ?
参観日の前の日俺は親父と母親が口論していたのをみた。
母親は泥酔状態で親父はそんな母親を汚いものを見るようにこういったんだ。
「大地(木下)は俺に似て出来がいいのに洋平(林)はお前に似て出来が悪くて
可愛くない。将来ろくな大人にならない」ってな。
俺の授業参観も来るのが相当嫌だったらしいけど周りの体裁は気になるらしくて
渋々来たんだよ」そう林は一気に木下に話した
「・・・・・・・・」木下は言葉がなかった。確かに両親の自分と林に対する
扱いには疑問に思う所はあったけどそこまで酷いとは思ってなかったからだ
そしてその会話を木の影から聞いている俺もまた驚愕していた
つづく




