武闘都市コロナ3
数日が経ち、大会も佳境に入り、アイリもベックも勝ち残っていたのだが――
「ビルの兄貴大変だ! 兄貴の仲間が不正して捕まったって」
「不正だと?」
アイリの馬鹿にそんな知恵はない。ならベックか。だがあいつは戦いで不正をするような奴じゃない、逆に正々堂々とした戦闘を楽しむタイプだ。
だとすれば――
「相手は誰だった?」
「昨年の王者だよ。試合開始直前に糾弾され、反論すら許されなかったんだって」
嵌められたか。
前の試合を見る限り、王者にベックを倒す実力はない。ならば、この茶番を容認したボンバイエと王者はグルと見ていいだろう。
「ベックは試合後出て来たか?」
「いや、まだ見てないよ」
どこかに連れて行かれたか、もしくは個室に閉じ込められているのか?
調べに行きたいが、選手控室は厳重な警備がされており、正面突破は難しい。
「だとすれば、あそこからいけるか?」
「あそこって?」
「決まっているだろうが。警備の行き届かない通気口だ」
「え⁉ でもばれたら――」
「お前は魔法使いだろうが。俺が入れるようにごまかせ」
「そ、そんなー……」
今は時間が惜しい、一番警備の薄い通気口はすでに目を付けているのですぐさま向かう。
思った通り、警備は一人で、しかも昼寝をしていた。
「ほ、本当にやるの?」
「当たり前だ。お前は俺が入ったらここをふさいで、誰も近づけないようにしろ」
「うー……了解」
何とか入れた通気口は薄暗く、視界が悪かった。だが僅かな隙間から選手控室といった、入れなかった場所の様子も手に取るようにわかる。
幸いベックは部屋にいたがアイリは試合中なのかいなかった。
続いてボンバイエの部屋をのぞくと、部下と話をしているのが見えた。
「順調だな。このまま負けた選手は閉じ込めておけ、まとめて地下送りにする。鼠一匹近寄らせるな」
「了解しました」
やはりろくでもないこと考えてやがった。
だが地下施設なんてのがあったのか。
「いつも通り鍵を渡しておく、倉庫の扉は厳重に見張っておけ」
「はっ!」
部屋を出た奴の顔は覚えた。後はどう入り込むかだな。




