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武闘都市コロナ2

 コロシアム型の試合会場は、溢れんばかりの観衆で熱気に包まれていた。

 主催者であるボンバイエは話を手短に済ませ、すぐさま試合を行えるよう段取りを組んでいたのだ。

 俺は飲み物片手に腰を下ろし、アイリの試合を眺めていた。ベックの野郎が、アイリは俺に試合を見られると嫌だと言っていたからだ。

 確かにアイリはこちらに気づくと固まっていた。そりゃあ嫌なことをされると固まっちまうよな、試合前の緊張した顔はお笑いだったぜ。

 だが試合が始まれば別人だ。瞬時に意識を切り替え、対戦相手の技を全ていなしていき、結局アイリは攻撃することなく相手を降参させてしまった。

 面白くなかったので、笑顔でこちらに手を振るあいつを無視し、闘技場を出ることにした。この後はベックの試合だったが見るだけ時間の無駄だ、どうせ勝つだろうしな。

 

 ど派手な入り口から出ると辺りが何やら騒々しい。

 声の方を見てみると、警備兵に捕まった餓鬼がアフロに向かって怒鳴り散らしていた。


「答えろ! 姉ちゃんをどこにやった⁉」

「ワハハ‼ 残念だがそれはわからん。試合後の選手がどうなったか、把握しきることなど無理だからな」


 餓鬼は無造作に放り投げられ、アフロは笑いながら去っていた。悔しそうにすすり泣く餓鬼を憐れむ者はいるが、手を差し出す者はいない。

 世の中ってのは残酷だ、厄介ごとに首を突っ込みたくないって意志がひしひしと伝わってくる。

 なんとなく村にいた時の自分と重なってしまった。大人たちの掟に翻弄され、殴られ、無視され続けてきた日々を思い出す。

 

「――ちっ! おい糞餓鬼」


 考えていると、いつの間にか声を掛けていた。

 餓鬼はすぐ涙をぬぐい、こちらを睨みつけてくる。


「なんだよ? あんたもおいらを笑いに来たのか?」  

「逆だ、お前の話が聞きたい」


 こいつのきょとんとした表情は、どこかの馬鹿と重なった。


 餓鬼もといグレスは、去年この大会に出て失踪した姉の行方を探し続けているらしい。まだ十代になったばかりだと言うのにしっかりしたもんだ、あの馬鹿に爪の垢を飲ませてやりてえ。

 グレス曰く、この大会で何人も失踪者が出ているのに、主催者のボンバイエはだんまりを決め込んでいるとのこと。


「失踪者? そんな話聞いていないが」

「表向きは健全な大会だからね。ボンバイエの奴が偽装しているんだよ」


 グレスの話を信じる理由はないが、ボンバイエの言い分を信じる理由もない。

 大会に参加しているあいつらのこともあるし、調べる必要があるな。


「おい餓鬼。俺も手伝うから知ってることを全部教えろ」

「本当か⁉」


 俺はグレスと共に大会の調査を始めた。

 グレスは有能な奴で、有益な情報を次々集めてくれた。聞けば魔法使いらしく、魔法で聞き耳を立てているとのこと。

 幸い人々の意識は大会に集中しており、ちょっとの事では目立たなかった。


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