第五章 ~『リザに対する印象と金の使い道』~
更新待っていてくれた皆さま、本当に遅れて申し訳ないです(;^ω^)
コロナで色々と問題が発生し、執筆を進められずにいました。
これからも更新自体は着々と進めるつもりですが、
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カイトを都市長にすると決めたレオナールであるが、物事はそう簡単に進まない。なにせ対立候補のゴルンは公共事業を第三都市に運んできた立役者なのだ。簡単に票を奪えるとも思えなかった。
「それでゴルンとはどう戦うんだ?」
「いくつか戦略を用意してある。詳細は秘密だけどね……それよりも君のことが知りたい」
「俺のことが?」
「どういうふうに生まれて、どのように育ったのか。相手を倒すよりもまずは君を魅力的にしないとね」
「……俺は生まれてからずっとこの街の生まれだ。育ちもお世辞にもよいとは言えない」
「構わないさ。むしろその方が人選としては適切だ」
人は自分の代表者を選出するとき、類似点の多い人物を選択する。第三都市は貧しい家庭の者が多いため、シンパシーを感じてもらえる特徴は長所になる。
また苦境から成りあがった者に人はカリスマ性を感じる。自分も同じように這い上がることができるかもと、羨望を抱くのだ。
「俺はバカだし、学もない。剣の腕も今でこそそれなりに上達したが、昔は酷かったものさ……でもな、そんな俺にも一つだけ誇れるものがあったんだ」
「誇れるもの?」
「リザ姉さんだ。強くて優しい姉さんは俺の自慢だった。それはこの街を出てからも変わらない。貧乏な俺たちに仕送りまでしてくれたんだ」
「…………」
リザは守銭奴と呼べるほどに金に執着する性格だった。その理由と金の行方を知り、レオナールに一つの疑問が湧く。
「リザが善き姉だったことは十分に理解したよ。でもそんな彼女がどうして君に敵対するようになったんだい?」
「俺も分からない。リザ姉さんがこの街に戻ってきたときには――悪魔になっていたんだ」
悪魔になっていたのは、レオナールを追放した時からだと口にしたい欲に駆られるも、グッと言葉を押し込める。
「悪魔というからには何か酷いことをしたのかい?」
「立ち退きのために俺たちの住処を壊し始めたんだ。みんなで正気に戻ってくれと願ったが、リザ姉さんは聞く耳を持たなかった」
「…………」
「金のことしか考えない、あの女はもう姉さんじゃない……俺がこの手で必ず……」
思い込むように俯くカイトに対し、レオナールは理想的な状況だとほくそ笑む。
(リザと敵対すればするほど僕にとって都合のよい状況ができあがる。あとは上手くコントロールすれば、都市長の座だけでなく、復讐も成就する)
そんなレオナールの思考を中断するように悲鳴が響く。声が聞こえた場所まで駆けだすと、廃屋の扉を男が蹴り上げていた。
「あいつは……」
「風貌から察するに山賊だね」
都市長の手先だと思われる髭面の山賊が立ち退きを求めていた。そのような行為を集落のリーダーであるカイトが許せるはずもなく、彼へと襲い掛かる。
「ここは俺たちの住処だ。横暴は許さないぞ」
「お前がカイトって男か……噂通り生意気そうなガキだな」
「なにっ」
「手間が省けてよかった。俺はお前を探していたんだ」
「どうやら返り討ちにされたいらしいな」
カイトは身長ほどもある長刀を振り上げて、山賊に切りかかる。いつもの山賊相手ならこの一撃ですべてが終わる。しかし彼は刀を素手で受け止めた。
手の平を白刃が切り裂くが、薄皮一枚切れるだけで致命傷とはなりえなかった。今までの山賊とは違うと、カイトはゴクリと息を呑む。
「俺たちも馬鹿じゃない。何度も敗れれば、学びもする。お前を倒すためにゴルン都市長が金を融資してくれてな。おかげでこの街では俺がリザさんの次に強い」
「ぐっ」
「観念して諦めるんだな」
山賊はカイトに追撃を加えようと、拳を振り上げる。しかしその腕が振り下ろされることはなかった。
ただジッとレオナールが鋭い視線を山賊に向けただけで、彼は手を引っ込めて背後に飛び退いたのだ。
「な、なんだ、お前っ」
「僕との力の差に気付けるなんて偉いじゃないか。だからこそ君の言葉は誤りだと分かるだろ?」
「あ、誤り?」
「この街で一番強いのはリザではなく、この僕だ。そしてその僕と敵対したことを後悔するんだね」
レオナールは山賊に一歩近づく。迫り来る恐怖に彼は息を呑むのだった。





