第五章 ~『カイトと都市長の座』~
長らくの間、お待たせしました。色々と方向性に悩んでいて、執筆を止めていました
活動報告で予告していた通り、連載の方を再開させていただきます
『リザ編のお話』
第一都市と第二都市を支配下に治めたので第三都市へ
都市長ゴルンの元に、かつてレオナールを裏切ったリザがいた
首都エイトとの交通網を実現するために立ち退きをしたい
自警団が立ち退きの邪魔。自警団のリーダー、カイトはリザの弟
カイトがリザを倒すのを目標にしていることを耳にする★いまここ
カイトは姉のリザを倒すと意思を固める。かつて彼女に追放された恨みを持つレオナールにとっては理想的ともいえる展開だった。
(都市長の椅子を手に入れ、リザへの復讐を達成する。そのためにはカイトくんを味方にしておきたい)
自警団のリーダーでもあるカイトはトランプのジョーカーだ。使い方さえ間違えなければ、大局を左右する一枚になる。
「君たちは立ち退きを迫られているんだよね。いままで無理矢理追い出されたりはしなかったの?」
「俺たち自警団が戦っているからな……でも都市長の奴、山賊を雇って嫌がらせを始めたんだ……ここは愛着のある土地だ。絶対に立ち退いたりするもんか!」
「山賊の嫌がらせか……君はよく無事だったね?」
「あんたには負けたが、俺は決して弱いわけじゃない。山賊相手なら楽に追い返せるからな」
「その口ぶりだと、相手は正面から襲ってきたんだね?」
「……どういうことだ?」
「山賊が手を抜いていたのか確認したくてね」
「それは俺が舐められているってことかよ!?」
カイトくらいの年齢の男は見くびられることに強い拒絶反応を示す。レオナールの質問は相手が手加減してくれていたから勝てたのだと、暗に言っているのと同じだった。彼が不機嫌になるのも当然だった。
「勘違いしないでほしいんだ。君は強いよ。その辺の山賊では手も足もでないと思う」
「そ、そうか。分かっているならいいんだ……」
「けど相手が本気でないのも本当だ。なにせ殺す気がないからね」
「だから手加減なんてされてない!」
「いいや、されているよ。例えば僕が山賊の立場なら、君が寝ている隙に家を燃やすよ」
「……何て恐ろしいこと考えるんだ」
「他にも食事に毒を混ぜるとか……君を排除する方法はたくさんあるんだ。でも相手はまだ本気じゃないからやらない。あまり派手にやると聖騎士団が動くかもしれないからね」
山賊による地上げを聖騎士団に知られると、都市長の立場が悪くなるのは間違いない。その危機感こそが山賊たちの足枷であり、カイトたちがまだ無事でいられる理由だった。
「でもそれも時間の問題だ。このまま硬直が進めば、リスク覚悟で殺しにくるかもね……」
「上等だ。返り討ちに――」
「君一人では無理だよ。寝ずに一人で見張りをすることもできないしね」
「ならどうすれば……」
「君以外に戦える人はいるの?」
「いいや、まともに戦えるのは俺だけだ……」
他の住人は老人や子供が多く、若者もその日暮らしの貧困者が多い。金がなくては能力を強化できないためまともに戦える者は少ないのだ。
「乗りかかった船だ。僕が手を貸してもいい」
「あ、あんたが!」
「僕じゃ不服かい?」
「いいや、俺より強いあんたが味方してくれるなら大満足だ」
「ただし一つだけ条件がある……僕がゴルンを追い落とすから、次の都市長になって欲しいんだ」
「お、俺が都市長! む、無理だよ、無理無理! 俺にそんな大役務まるはずが……」
「僕がサポートするさ。それに君に選択肢は残されていない。だろ?」
レオナールが手を引けば、いずれ自警団は敗れ、立ち退く結果に終わることは明白だ。このまま何もしないで破滅するなら、冒険するのも悪くない。カイトはそう決心して、手を伸ばす。
「いいぜ。俺が都市長になってやるよ」
「これで同盟は成立だね」
レオナールとカイト、二人の男の間に同盟が結ばれる。リザを破滅させ、都市長の座を手に入れるための計画が、また一歩前進したのだった。





