エピローグ ~『マリアンヌの崩壊』~
スラリンを倒したレオナールは、スライムダンジョンを手に入れたことで、魔物の軍勢、ダンジョン収益、そして拠点を手に入れた。
「終わってみれば大満足の結果だったね」
「さすがは旦那様です」
レオナールとユキリスは第二都市タバサの街道を、肩を並べて歩く。この街の実質的な支配者が彼となった今、目に映る光景も以前とは違って見えた。
「スライムダンジョンのおかげでゴブリンダンジョンは大きな戦力アップを果たすことができた。他にもフォックスダンジョンの戦力を把握できたことは大きい成果だね」
タマモは今回のダンジョンバトルに多くの戦力を投入した。どれだけの数の魔物がいて、どの程度強いのか、将来、彼女と戦う時がくれば、この情報は価千金になる。
「それに第二都市タバサの都市長の座が手に入ったことも収穫だ。これで王の椅子へまた一歩近づいた」
レオナールが王座を手に入れるには過半数の都市長から支持を受けなければならない。彼の手元には仲間のモーリーを含め都市長のカードが二枚揃ったことになる。
「僕らの計画はすべて順調に進んでいる。復讐を果たす日も近いね」
レオナールは仲間たちから追放された日のことを思い出す。信じていた仲間たちに裏切られた彼は、必ず復讐してみせると誓ったが、それとは別に仲間との楽しかった冒険を思い出し、感情が錯綜する。
「…………ッ」
「旦那様……」
「何でもない。僕は平気さ。心の中の復讐心はまだしっかりと燃えているからね」
レオナールは頭の中からパーティメンバーとの楽しかった思い出を振り払う。彼の瞳はしっかりと前を見据えていた。そんな彼の視界に見覚えのある少女が映る。
少女は街道の真ん中で空を見上げていた。その人物はレオナールが先ほどまで恨みを向けていた対象であるマリアンヌであった。
「マリアンヌ、そこで何を……」
「ねぇ、見て、お空が真っ黒ですわ」
マリアンヌは雲一つない快晴を指差し、不気味な言葉を口にする。その瞳は狂気に染まり、濁っていた。
「マリ……アンヌ?」
「あなた、だーれー、アハハ、ハハハッ」
マリアンヌは乾いた笑い声を漏らしながら、空を見上げて、街中を歩いていく。正気を失った彼女の頬には、悲しいことでもあったのか伝った涙の跡がくっきりと刻まれていた。
「マリアンヌの奴、どうかしたのかな?」
「分かりません。ですが旦那様にあんな酷いことをした人、どうなろうと自業自得です」
「そうだね……」
レオナールは悲しい目で、立ち去るマリアンヌの背中を見つめる。その瞳に込められた感情は怨嗟ではなく、かつての仲間を心配する思いやりに満ちていた。
これにてマリアンヌ編が完結です。ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!!
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