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第四章 ~『ダンジョンバトルの開幕と裏切り』~


 ルナの立場を奪い取ってから十日が経過し、いよいよダンジョンバトル当日になった。ユキリスの邸宅の地下室に設置された魔法水晶には、タマモとスラリンの姿が映し出されている。


「魔物を送り込むためのダンジョンゲートは互いのダンジョンの入口前でいいかな?」

「問題ないの」

「私も問題ないわ」


 タマモとスラリンは必死に笑みを噛み殺した表情を浮かべている。それも当然だ。彼女らはレオナールを罠に嵌めた気でいるのだから。


「では開始するよ。準備はいいかな?」

「もちろん」

「楽しみですわ」


 ダンジョンバトル開始の合図と共にダンジョンゲートが設置される。二人は開始の火蓋が切られたことで勝利の哄笑を漏らす。


「こんなに上手くことが運ぶなんて、私たちは天才なの」

「あははは、これでゴブリンダンジョンは私たちのモノね」

「浮かれているところ悪いけど、本当にそうかな?」


 レオナールは二人が裏切っていることを知っているため、本性を露わにしても慌てない。それどころか想定通りの反応に可笑しささえ感じてしまう。


「裏切られたことにまだ気づいてないの?」

「いいや、気づいているさ。それでも僕の優位は変わらないからね」

「負け惜しみは止めるの。私たち二人を相手にしてゴブリンダンジョンが勝てるはずないの」

「いやいや、君たち二人が相手でも僕は勝つさ」

「……随分と自信があるようなの。でもこれを聞けば諦めがつくの。ゴブリンダンジョンに第二都市タバサから選りすぐった冒険者集団が襲撃をしかけているの」

「冒険者集団ね……もしかしてこの人たちのことかな?」


 レオナールは配下の魔物にスライムダンジョン前の映像を配信させていた。その映像を見て、タマモとスラリンは口を大きく開く。見慣れた湿地帯で屈強の冒険者たちが隊列を組んでいたのだ。


「タマモさんは運が良かったね。今回のルールは一人が負けたらその時点で終わりだから、本当はフォックスダンジョンも欲しかったけど、スライムダンジョンだけで我慢しておいてあげるよ」

「だ、大聖女は私を裏切れないはずなの」

「蘇生の秘密があるからだよね。実は秘密を解いたんだよね。その証拠に前線に立つルナさんを見てみなよ。君なら分かるだろ。あれはスライムだよ」

「なっ!」


 スライムたちを従えるスラリンなら人とスライムの判別もできるだろう。事実、スラリンの瞳は絶望の色に染まっていく。


「これで状況は逆転した。第二都市タバサの精鋭冒険者が丸ごと僕の戦力だ。そちらは存分に手を組むといい。あ、裏切りは大歓迎だよ」

「私は裏切らな――」

「裏切るわ」


 スラリンの言葉に合わせるようにタマモが裏切りを宣言する。スラリンはなぜ裏切るのだと、口をパクパクさせて驚いている。


「当然よ。この状況で私がスライムダンジョンと手を組むメリットはないもの」

「タ、タマモ……」

「スラリンとの同盟は解消するわ。だから私と手を組みましょう」

「タマモ、あなたはあまりに卑劣なの」

「残念ね。狐に化かされたと思って諦めなさい」


 タマモがリスクを取るはずもなく、こうなることは想定通りであった。


「同盟を組んでもいいよ。ただし報酬はなしだ。それでもいいよね?」

「そ、そんな要求呑めないわ。半分とは言わないけど、私にも分け前を……」

「あまりごねるようなら、僕はスラリンさんと手を組んで、標的をフォックスダンジョンに変更するよ」

「あ、あなた……良い性格しているわね……」


 タマモはどうするべきか悩む素振りを見せる。これがチャンスだとばかりに、スラリンはレオナールに媚びるような視線を向ける。


「わ、私と手を組んで、タマモを倒して欲しいの。私は助かるためなら何だってするの。だからお願いするの」

「……スラリン、黙りなさいな。今は私が誘われているのよ」

「……ッ」

「いいわ。手を組むわ。このうるさい小娘を一緒に倒しましょう」

「これで僕の勝利は確実だ」


 冒険者、ゴブリンダンジョン、フォックスダンジョンの三勢力がスライムダンジョンを襲う。その事実にスラリンは焦りと絶望に表情を歪めるのだった。


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今後の執筆活動を続けていくためにも、よろしくお願いいたします
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