第三章 ~『ルナの誘い』~
そろそろ書き溜めがたまってきたので、どこかのタイミングで一気に放出します
もう少々お待ちください
レオナールとユキリスはルナに連れられて教会を訪れる。誰もいない礼拝堂で、彼女はステンド硝子を背にして立つ。後光が差す彼女の姿は神々しささえ感じさせた。
「改めまして。私はルナ。第二都市タバサの都市長にして、大聖女を務めております」
「有名人だからもちろん知っているよ。僕はレオ。そしてこっちが相棒のユキリスだ」
「お二人とも、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。よろしくついでに一つ聞いてもいいかな?」
「なんなりと」
「ルナさんはマリアンヌのお姉さんなんだよね?」
「はい……ですがレオ様、できればマリアンヌの姉として扱うのは止めて頂けないでしょうか?」
「どうしてだい?」
「お教えすることはできませんが、色々と事情があり、私はあの娘に嫌われているのです……」
「へぇ~」
二人の関係を聞いたレオナールは、何かに利用できるかもしれないと、口元に小さく笑みを浮かべる。
(ルナとマリアンヌをぶつければ、漁夫の利を狙えるかもね)
王族同士がぶつかれば互いにただでは済まない。マリアンヌに対しては復讐がやりやすくなり、ルナに対しては都市長の座を奪いやすくなる。二人が揉めることは、レオナールの利益に繋がる。
「さて、お互いに忙しい身ですし、さっそく本題に入りましょうか」
「そうだね」
「レオ様をお誘いしたのは他でもない、あなたの実力を認めたからです」
「つまりは有力な冒険者を必要としていると?」
「はい。現在、とあるダンジョンを襲撃する計画を立てているのですが、そのための戦力として参加していただきたく、レオ様に声を掛けさせていただきました」
「なるほど」
レオナールはスラリンから聞いた『第二都市がスライムダンジョンを襲撃する計画を立てている』という話を思い出した。彼はその話が本当かどうか疑念を抱いていたが、これにより確信へと変わる。
(スライムダンジョンの襲撃計画が本当ならスラリンの言葉に嘘がなかったと証明されたことになる。これで手を組むべき相手は決まったかもね)
「ルナさん。スライムダンジョンを襲撃するのは何か有益な鉱石でも見つかったからかい?」
「いいえ、そんなものは見つかっていませんよ」
「ならどうしてスライムダンジョンを襲撃するんだい?」
「レオ様は誤解されています」
「誤解?」
「私たち第二都市タバサが襲撃するのはスライムダンジョンではなく、ゴブリンダンジョンです」
「え?」
レオナールは開いた口が塞がらなくなっていた。
「なぜゴブリンダンジョンを襲撃されるのですか!?」
ユキリスは自分の仲間が襲われるかもしれないと不安になり、ルナに質問を投げかける。その質問に彼女は小さく笑みを浮かべて応える。
「私にゴブリンダンジョンを滅ぼせと天命が下ったのです。神の命令は絶対。既に複数の上級冒険者が参加すると決まっています。そこにレオ様が加われば、我々の負けはありません」
「それはそうだろうね……」
レオナールがダンジョンマスターを務めるゴブリンダンジョンへの襲撃計画。こんなものを許せるはずがないと、彼は唇を噛みながら頭を整理する。
(第二都市タバサから距離のあるゴブリンダンジョンをわざわざ襲撃する意味はなんだ? それに襲撃するのがゴブリンダンジョンならスラリンさんの話は嘘だということになる……クククッ、なんだか楽しいことになってきたな)
レオナールは自分の知らない場所で悪意が蠢くのを察する。ならば逆に利用して裏を突いてやると、彼は不敵に笑う。
「ルナさん。僕もゴブリンダンジョン襲撃チームに参加させてもらうよ」
「ありがとうございます! あなたの力には期待しています!」
ルナは強力な戦力の加入に笑みを零す。しかし彼女は気づいていない。取り込んだレオナールという男が獅子身中の虫だということに。





