第一章 ~『王城への招待』~
レオナールとリリスは礼装に着替え、ロト王国の王城へと向かう。白亜の王城はその美しさを一目見るために外国から人が押し寄せるほどに魅力があり、場所も首都エイトを見下ろせるような絶景の位置に建てられていた。
「レオナール、国王様からの呼び出しはいったい何だと思う?」
「僕たちが難関ダンジョンを踏破したことに対して褒美を与えてくれるとかかな」
レオナールたちのパーティは王国最強候補の一角に名を連ねるほどに強大な戦力が揃っている。
武闘家のリザはロト王国の武術大会で何度も優勝するような猛者だし、ジルは聖騎士団でも出世街道を突き進むエリート。聖女のマリアンヌは姫でありながら、回復魔法の腕は国内髄一ときている。さらに魔法使いのリリスはレオナールが隠れて力を貸していたことで、最高の魔法使いとまで評されていた。
商人のレオナールはトドメの一撃を加え、報酬を倍にするためだけの存在として認知されてきたが、それでもパーティの一員である。彼も褒美が与えられると期待するのは当然であった。
「今回の呼び出しにはジルも来るの♪」
「随分と嬉しそうだね……」
「ジルはお喋りが上手いから、話をしていて楽しいもの」
「ふぅ~ん」
「来週、また一緒にご飯に行くのよ」
「二人でかい?」
「ええ、二人っきりよ♪」
リリスはジルと二人で出かけることが多くなっていた。レオナールにとっては悲しい状況だが、不満を口にすれば彼女が離れていくのではと危惧し、彼は何も言えずにいた。
「王城の出迎えが来たよ」
リリスの視線の先には憲兵の姿があった。二人を待っていたのか、一礼すると王城の中へと案内する。
通されたのは王の間。天井にはシャンデリア、床には赤い絨毯が広がる贅を凝らした部屋だった。
「リリス、それにレオナール。遅いではありませんか」
「ごめん。少し遅れてしまった」
武闘家のリザが二人を歓迎する。続くようにマリアンヌとジルも顔を出す。
「ようやく来ましたわね、今回の主役が」
「主役? 僕が?」
「ええ。間違いなく、あなたが主役ですわ。ねぇ、ジル?」
「ああ。今日の主役はレオナールだよ。楽しみにしているんだな」
「ん? なんだか良く分からないけど、主役というのなら心待ちにしているよ」
ジルは恐悦の笑みを浮かべる。それはまるで人を地獄へ叩き落す悪魔のような表情だった。