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第二章 ~『聖騎士団と戦いの結末』~


「はははは、これで俺の勝利は確実だ」

「だ、団長……ッ」


 聖騎士たちは自分たちのリーダーの無残な姿にゴクリと息を呑む。そして瞳に怒りの炎を燃やした。


「ダンジョンマスターを殺せ! 団長の仇を取るんだ!」


 聖騎士たちは雄叫びをあげると、ガイアに向かって駆けだした。怒りで闘志が漲っているのか、その動きは本来の彼ら以上の実力を引き出していた。


 しかしそれでも聖騎士たちの刃がガイアへと届くことはなかった。魔物に変わったマイクが聖騎士たちの首を撥ねたのだ。


「だ、団長! 俺たちだ! 目を覚ましてくれ!」


 聖騎士たちは叫ぶも、その祈りは通じない。疾風のように聖騎士の隊列へと飛び込むと、すれ違う者たちの首を撥ねていく。命を落とした者は硬貨となって散らばる。硬貨が地面を叩く金属音は、聖騎士たちの恐怖を増長させた。


「だ、団長と戦え!」

「で、でも……」

「団長を救うにはそれしかない! 団長を足止めし、その隙にダンジョンマスターを討伐する!」

「は、はい!」


 聖騎士たちはマイクとガイア両方に人員を分けて同時に襲う。マイクはガイアを救おうと動こうとするが、それを聖騎士たちが必死に食い止める。


「行くぞ!」


 ガイアを討伐するべく聖騎士たちは駆ける。しかし彼らの行く手を遮るように骸骨兵士と骸骨騎兵、そしてそのサポートの骸骨魔法使いが現れた。


「これじゃあダンジョンマスターまでたどり着けない……」

「俺たちも力を貸す!」


 雇われていた冒険者たちはここが働きどころだと、骸骨兵士たちと戦闘を開始する。しかし冒険者の戦力では魔物の軍勢に敵わないことは明確だった。


「聞け! このままでは骸骨兵士たちの物量に押されて負ける。故に私を含めた数人がダンジョンマスターに突撃する。残りの者たちは骸骨兵士たちを討伐しろ!」


 千人隊の中に組み込まれていた百人隊の隊長の一人が叫ぶ。その叫びに呼応するように、聖騎士たちは命がけでダンジョンマスターであるガイアへの道を作る。


「行くぞ、我に続け!」


 百人長の突撃を邪魔する者は何もなかった。命がけの刺突はガイアの身体を貫くはずであった。しかしその剣は受け止められてしまう。突如現れたマイクによって。


「な、なぜ、団長が……」


 残存している聖騎士の大半を使って、マイクを足止めする作戦だった。本来、団長はここにいないはずだと、百人隊の隊長は振り返る。


 そこには信じられない光景が広がっていた。少なくとも百名以上いた聖騎士の姿が消え去り、硬貨が地面に散らばっているのである。さらに視線を隣に移すと、彼をダンジョンマスターへと送り届けるために戦っていた聖騎士や冒険者、そして彼らが戦っていた魔物たちの姿が消えていた。


「まさか俺の魔物たちが全滅とはな。とはいえ、聖騎士千人を返り討ちにした上に、強力な戦力が手に入ったんだ。良しとするか」


 ガイアの言葉は百人長を絶望へと叩き落した。大事な同僚も部下も上司もすべてを失ったのだ。彼の目尻には涙が浮かんでいた。


「一つ聞かせろ。さっきから地面に散らばる硬貨が消えていく現象、あれはお前ら聖騎士の仕業だよな」

「知らない……」


 百人長は本当に知らなかった。しかしガイアの言う通り、聖騎士千人分ともなれば少なくとも山のように硬貨が散らばるはずなのに、その数はあまりに少ない。しかも落ちているのは銅貨ばかりで、白金貨は一枚も落ちていない。誰かが回収していると考えるのが自然だった。


「知らないなら仕方ない。もしかしたら団長だけが知る秘密の策だったのかもな。だからお前はもういらん」


 ガイアはマイクに命じて、百人長の処刑を命じる。彼の頭が宙を舞うと、硬貨になって散乱した。


「残りは……もう一人、隅の方で隠れていたお前だ。お前は冒険者だな」

「僕のこと?」

「他に誰がいる? この場にはすでに三人しか残っていないんだぞ」


 ガイア、団長、レオナール。三人以外は骸骨兵士たちも含めて、すべて命を落とし、硬貨となって消えた。


「お前は逃げないのか?」

「逃げないよ。それに逃がすつもりもないでしょ?」

「当然だ」

「ふふふ、やっぱりいいなぁ。悪人を相手にするのは実に良い」


 レオナールは一歩前へ出ると、恐悦の笑みを浮かべる。その口にできない圧力に、ガイアは彼がただものではないと見抜いた。


「なんだ、お前。いったい何者だ?」

「君は僕のことを知っているはずだよ。一度話したことがあるからね」

「記憶にないぞ……」

「なら教えてあげよう。僕はレオ。ゴブリンダンジョンのダンジョンマスター、レオだ!」



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