第二章 ~『ゲイルと贈り物』~
聖騎士団の百人長ゲイルは仕事の疲れをかき消すように屋敷の扉を勢いよく開ける。そこには彼の人生の楽しみたちが並んでいた。
(あ~やっぱり犯罪奴隷は最高だ)
ゲイルは玄関に並んで土下座している犯罪奴隷たちを見て、自分は幸福なのだと実感する。奴隷たちは皆、町で見れば誰もが振り返るような美女ばかり。中には貴族の娘も含まれており、彼の大切なコレクションたちであった。
「ただいま、皆。元気にしていたかな」
「はい。ゲイル様のお帰りを心待ちにしておりました」
「僕も君たちに会えるのを心待ちにしていたよ」
ゲイルは奴隷たちの素直な態度に満足する。普通の犯罪奴隷ならこんなにも容易く隷属しない。反抗的な者。いつか主人を裏切ろうとする者。犯罪者特有の陰のような者が存在する。しかし彼女たちには存在しない。それは彼女たちが罪を犯したことのない無罪のものばかりだからだ。
(やっぱり奴隷にするなら無実の犯罪奴隷に限るねぇ。従順で扱いやすく、それに何より無実なのに奴隷の立場に堕ちているところが滑稽で笑えるのが良い)
「今日は誰に奉仕をして貰おうかな……おや、誰だね、君は?」
ゲイルの奴隷たち。その中に彼の見知らぬ顔があった。黒髪黒目の整った顔立ちに、レースのドレス姿はまるで人形のようであった。
「僕はクリフさんの犯罪奴隷の一人です。クリフさんからあなたのところへ行くようにと命令されてここにいます」
「僕か……クリフもなかなかな良い女の趣味をしているじゃないか。それでなぜ君はここに?」
「クリフさんからは行けば分かると」
「なるほど。プレゼントか。クリフも媚びの売り方が上手いな」
都市長選の有力候補はクリフとゲイルの二人だけである。もし選挙でクリフが当選すれば新たな都市長は彼になる。その時のための機嫌取りだと、彼は判断した。
「だが実に良い。中性的な女性はまだチャレンジしたことがなかったのでね。クリフに礼を言わないとな」
「……喜んで貰えたのなら嬉しいです」
「では寝室についてこい……あ、そうだ。君はもうクリフに抱かれたかい?」
「いいえ……」
「新品か。素晴らしいな」
ゲイルは下卑た笑みを浮かべて、クリフからの贈り物を寝室へと運ぶ。寝室にはキングサイズのベッドが置かれ、傍には鞭などの拷問用の道具も置かれていた。
「この部屋は防音になっている。君がどんな悲鳴をあげるのか楽しみだよ」
「僕もすっごく楽しみです。あなたがどんな悲鳴をあげてくれるのか」
ドレス姿の奴隷が口角を歪ませて笑う。ゲイルは背中に冷たい汗が流れるのを感じる。
「そういえばまだ名前を名乗っていませんでしたね」
ドレス姿の奴隷がゲイルへと近づくと、彼の首を掴む。少女とは思えない異常な握力。ゲイルは恐怖を感じ、歯をガタガタと鳴らす。
「僕はレオ。君を地獄へ送る者の名だよ」





