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第二章 ~『貰った魔物と守りの要』~


 ダンジョンマスターたちの集会はその後も続き、一通りの議論を終えたところで終了する。レオナールにとって情報と魔物の卵、両方を得られた有意義な会合であった。


「それにしてもダンジョンマスターはどの人も一癖ある人たちばかりだね」

「ガイア様のように我々のダンジョンを狙っている者もいますから」

「でもラッキーだ。まさかダンジョンバトルを挑んで貰えるなんてね」

「旦那様は勝算があるのですよね?」

「さすがにないと受けないよ。まずは勝算を少しでも上げるために、貰った卵を孵化させようか」

「はい」


 レオナールはフォックスの卵を手に取り、鑑定スキルで中身を確認する。


「たいした魔物の力は込められていないから、このまま孵化させると下級の魔物が生まれる。ガイアさんから頂いた白金化一枚分の力をすべてこの卵につぎ込もう」

「良いのですか? 私としてはドラゴンの卵に力を与えた方が……」

「リュートさんとは同盟を結んでいるから、いつかまたドラゴンの卵を手に入れる機会があるかもしれない。けれどフォックスの卵は今後手に入るか分からないからね。だからドラゴンではなく、フォックスの卵に白金貨すべてを費やすんだ」

「なるほど。そういうことでしたら納得です」


 レオナールは白金貨一枚分の魔物の卵を生み出し、そこから力を吸収すると、そのすべてをフォックスの卵に注ぎ込む。卵には彼が今まで見てきたどんなモノより大きな力が込められていた。


「さて孵化の始まりだ!」


 レオナールは卵を孵化させる。すると九本の黄金色の尻尾を持つ狐が生まれる。


「旦那様、やりましたね。九尾の狐です!」

「ユキリスは知っているの?」

「はい。フォックスの中では最強と云われている魔物です。タマモさんですら所有していないと仰っていました」

「そいつは凄いや。で、九尾の狐はどんなことができるの?」

「私が知りうる限りだと、炎の魔法や幻覚魔法、さらに単純な身体能力だけでもゴブリンチャンピオンの数倍はあります」

「僕のダンジョンのエースだね。この子を守りの要にしよう」


 九尾の狐が生まれたことで、レオナール不在時のダンジョン防衛に対する不安が減る。これにより彼はレオナール商会など外部組織との連携をさらに取りやすくなることができた。


「次はどの魔物を孵化させますか?」

「ドラゴンは最後に残しておきたいからね。次はアンデッドの卵だ。こいつは少し工夫しようと思う」

「工夫ですか?」

「そう。マネードレインの力を使ってアンデッドの特性をゴブリンの卵に移植する」

「つまりアンデッドの特徴を持ったゴブリンを生み出すと?」

「うん。ゴブリンの安くて連携を取れるという長所とアンデッドの物理無効や透明化なんかの長所が両方活かせる魔物になってくれたらラッキーだね。早速試してみよう」


 レオナールはアンデッドの卵から特性と魔物を生み出す力を吸い取り、ゴブリンの卵に移植する。その卵を孵化させると、彼の予想していた通りの魔物が姿を現した。


「アンデッドゴブリンの誕生だ」


 ベースはゴブリンだが、身体が幽霊のように半透過しており、アンデッドの特徴をしっかりと引き継いでいた。


「鑑定で調べてみたけど、透明化や幽炎という炎の魔法を使えるようだね。これは貴重な戦力だよ」


 しかもアンデッドゴブリンは、魔物カタログで生成する際に必要な費用が、ゴブリンメイジ以下の比較的安い価格設定になっていた。


「最後にドラゴンだね。ドラゴンも卵から大きな力を感じられない。最弱のドラゴンは何だっけ?」

「確か……ベビードラゴンのはずです」

「ベビードラゴンを孵化させるのは少し勿体ないね。この卵はゴブリンと合わせた方が良さそうだ」


 レオナールは同じ手順でドラゴンの特性と力をゴブリンの卵へと移植する。卵を孵化させると、小さなドラゴンに跨るゴブリンが姿を現した。


「ゴブリン竜騎兵か。ドラゴンの方はベビードラゴンにしか見えないけど、上のゴブリンはしっかりと騎乗スキルを保有しているね」

「ゴブリンは仲間内で連携を取ることができますから。ゴブリンが乗っていることの利点は大きいですよ、旦那様」

「だね。斥候などにも使えそうだ」

「これでガイア様を倒せそうですね」

「いいや。そんな簡単ではないさ。なにせアンデッドダンジョンは上級冒険者のグループが踏破することには成功しているけど、最後にはガイアさんの手で壊滅させられていたはずだからね」


 レオナールは冒険者時代の記憶を探る。アンデッドダンジョンはダンジョンマスターのガイアを筆頭に強力な戦力が何人も揃っており、魔物たちの統制も取れている高難易度ダンジョンの一つであった。


「さらにアンデッドダンジョンは豊富な資金力を有している点も厄介だね」

「ダンジョンレベルが高いのですか?」

「いいや。ダンジョンレベルはさほど高くない。アンデッドダンジョンは他に資金源があるのさ」

「資金源ですか?」

「うん。普通のダンジョンマスターは魔物をダンジョンの外に出さない。けれどガイアは人間の村を魔物に襲わせ、奪った金品を元に魔物を生み出しているんだ」

「そんなことをすれば討伐隊が結成されるのではありませんか?」

「ガイアさんはそこを上手くやっていてね。襲うのは異民族の村ばかりだったんだ」


 異民族とはロト王国以外の国から王国へと移民してきた者たちのことであり、彼らは国から安全の保障を受けていない。つまり襲われたとしても、王国騎士団が討伐に動くことはないのである。


「アンデッドダンジョンは第三者視点から見ると優れた運営をしている。ダンジョンマスターの経営力が優れていることが良く分かる」

「旦那様……」

「でも僕の敵じゃない。こちらには必勝法があるからね」


 レオナールは必勝法をユキリスに語る。彼女はその悪魔的な戦略に戦慄するのであった。



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