第二章 ~『レオナール商会と王座への道』~
モーリーのレオナールへの呼び名をレオ坊に変更しました
「王国を乗っ取る!?」
モーリー、メリッサは驚嘆の声をあげる。レオナールと長い付き合いの二人は彼のビジネスのスケールが大きいことは認識していたが、まさか国ごと奪い取るつもりだとは思っていなかっただけに驚きを抑えきれなかった。
「王国を乗っ取るって、力づくでやるのか?」
「モーリー、坊やがそんな方法を選ぶわけがないだろう。そもそも不可能だよ」
「メリッサの言う通り。現状の戦力では無理だ」
ロト王国は周辺諸国の中でも最強と称されるほどの軍事力を有している。聖騎士団と王国騎士団。この二大戦力と正面からぶつかって勝利するには、まだまだ戦力が不足していた。
「僕は正攻法で国を乗っ取ることを目指す」
「正攻法?」
「そもそも国王がどのようにして選ばれるか知っているか?」
「俺は知らねぇ。メリッサはどうだ?」
「確か王位継承権を持つ者の中から選挙で選ばれるのよね」
「そう。選挙だ。王座に空きができると、十人の都市長が選挙で次の王を決める。さらに付け加えるなら、聖騎士団長と王国騎士団長の任命権は国王にあるから、実質国のすべてを決定する権限は王を決める十人の都市長が握っていることになる」
「なるほど。坊やの狙いは都市長を支配下に置き、自分にとって都合の良い者を国王にすることだね」
「都市長さえ押さえれば王座は手に入れたも当然だからね。ただし自分にとって都合の良い者を国王にすることはしない」
「なら誰を?」
「第三者ではない。僕が国王になる」
レオナールは腕の龍が描かれた痣を見せる。モーリーもメリッサもその痣が何だか分かっておらず、首を傾げていた。
「僕自身知らなかったんだが、僕の母親は前国王の姉だったそうだ。つまり憎くて仕方ないロト王やマリアンヌは、僕の遠い親戚ということになる」
「はははっ、つまりレオ坊は王位継承権を有しているってことか!」
「そういうこと。ただこの王位継承権が原因で追放されたんだけどね」
「ん? どういうことだい、坊や?」
「僕は今回の追放がジルの悪意、強いて言うなら、リリスと僕を引き離すために行われたことだと思っていた。けどそれだけでこんなことをするかな?」
「それは……」
「リリスはマリアンヌに僕の龍の痣を相談すると話していた。そこで僕が王位継承権を有すると知ったんだ。ライバルは少ない方が良い。彼らの行動は少しでも王位へと近づくために邪魔者を排除することが目的だったんだ」
「そういうことだったのか……ならレオ坊は絶対に表に出ない方がいいな」
「坊やを殺そうと刺客がやってくるだろうからね」
モーリーとメリッサは、レオナールの正体を守り抜くことを誓う。
「さて、少し話が逸れたが、本題に入ろう。十人の都市長をどうやって落とすか。方法はたくさんあるけど、必要なものは分かっている。金と暴力だ」
「単純だがレオ坊の言う通りだな。金は言わずもがな、暴力も脅しの道具としては一級品だ」
「暴力はダンジョンマスターとして力を蓄えることで手に入れる。最終的にはかつての魔王ベルゼのようにダンジョンすべてを支配下に置く」
「坊やが魔王ベルゼに匹敵する力を手に入れれば、聖騎士団、王国騎士団に匹敵する権力が手に入る。そうなれば都市長を懐柔することも容易というわけね」
「次に金だがこちらはレオナール商会の力を借りたい。もちろんダンジョンマスターとしてバックアップできる部分は多々あるが、表立って行動するのは二人だ。レオナール商会をロト王国で三本の指に入る大商会に成長させてほしい」
「任せてくれ! 俺たちはレオ坊のためなら寝る間も惜しんで働いてやる!」
「坊やの願いとあっちゃ、やるしかないね」
「ありがとう。最後にもう一つお願いだ。エルフの奴隷がいれば買い取って欲しい。金は僕が出す」
「どれほど高額でも構わないのかい?」
「構わない。僕はエルフ族に救われた。今度は僕が彼女たちを救う番だ」
二人は任せておけと胸を張る。レオナールが死んで途方に暮れていた二人はもういない。やる気に満ちた表情で、彼らは商会を成長させるのだと決意した。





