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第一章 ~『奴隷商人は二度死ぬ』~


 エルフのために戦う。そう決意したレオナールはエルフ族全員を村の中央にある広場に集める。


レオナールはユキリスと共に台座の上に立ち、弓で武装したエルフたちを見下ろす。彼女たちは奴隷にされそうになった恐怖と、鞭で打たれた痛みが原因で、表情がどんよりとしていた。


「今まで私に仕えてくれた仲間たちに、まずは感謝を。そして謝罪をさせてください」


 ユキリスは壇上で頭を下げる。長である彼女の態度に、エルフたちはどよめいた。


「私では同胞たちを守れるだけの力がありませんでした。故に私はダンジョンマスターを引退します」

「で、では、誰が次のダンジョンマスターになるのですか?」

「魔王様のご子息であり、私の婚約者であるレオナール様がエルフ族の王、すなわちこのダンジョンのマスターになります。異論ある者はいますか?」


 ユキリスは問いかけるが異論を述べる者は誰もいない。これはユキリスが仲間たちから信頼されており、彼女が任せられると判断したならと納得していること、そしてもう一つはより強いリーダーの必要性を彼女たちも感じていたからだ。


 エルフは奴隷として捕まる危険性を常に備えている。冒険者という外敵から身を守るためには、より強大な力が必要なのだと、この場にいる誰もが知っていた。


「僕がこれから君たちのリーダーになるレオナールだ。レオとでも呼んでほしい。僕が来たからにはもう安心だ。君たちを必ず守り抜いてみせる」

「ほ、本当に、あなたは強いのですか?」


 エルフの一人が声を挙げる。レオナールが戦う姿を見ていたエルフは彼が強いことを知っているが、他のエルフから見た彼は幼い少年にしか見えない。顔の火傷がなくなったことで不気味さもなくなり、本当に頼りになるのか心配になっていた。


「僕の実力はもうすぐ見せられると思うよ。なにせ奴隷商人たちが再び襲ってくるだろうからね」

「ど、奴隷商人たちが! な、なぜ、レオ様にはそのようなことが分かるのですか?」

「冒険者の中では常識だからね。奴隷を運ぶための荷馬車は限りがあるだろ。だからチームを二つに分けるんだ」

「チームを二つに?」

「ああ。一つは先日僕が倒したあいつらだね。捕獲組とでも表現しようかな。もう一つは捕まえた奴隷を街にある奴隷商店へと運ぶチームだ。運送組とでも呼ぶべきそいつらは、一度奴隷を売却すると、再び捕獲組が捕まえた奴隷を受け取りにくるはずだ。その時、ダンジョンの外に仲間がいないなら、きっと様子を伺いにダンジョン内に入ってくる」

「あ、あの悪魔たちがもう一度……」

「でも心配しなくていい。僕が君たちを守り抜くから。そのためにいくつか協力して欲しいことがある。まずはこのダンジョンの地図が欲しい」

「それでしたら旦那様。ダンジョンマスターの特権により、頭で思い浮かべれば、ダンジョンの構造を把握することができますよ」

「ダンジョンマスターは名前だけの地位ではないの?」

「はい。ダンジョンの拡張や魔物の生成、細かい部分だとダンジョンの明るさ調整や、気温調整など、ダンジョンマスターになれば特権により様々なことができるのです」

「試行錯誤してみたいが、まずは地図だね。このダンジョンは――」


 レオナールの頭の中にダンジョン内の地図が展開される。ダンジョン階層は一階層のみしかなく、部屋もいくつかの小部屋と、エルフの森がある大部屋があるだけだ。


「ダンジョンは拡張されていないんだね」

「申し訳ございません。色々と事情があり……」

「いや、いいさ。ダンジョン運営は今後の課題だ。まずは目の前の危機の脱却が先決だ。作戦に応用できそうな地図情報は、入り口から森へ向かうまでの細い道と、中間地点にある小部屋だね」

「小部屋といっても、そこには何もありませんよ。通路より少し広い空間が広がっているくらいで」

「それで十分だよ。あとは敵を足止めする人員だね」

「エルフ族は女ばかりですが、皆、勇敢です。命を賭けて戦ってくれるはずです」

「いいや。命なんて賭けなくていいよ。これは勝ち戦だからね。気楽にやろう。エルフたちは弓を持っているし、ジョブクラスは狩人かな?」

「一部例外もいますが基本はそうですね。ジョブスキルは弓の命中精度の向上に、視力上昇、あとは自然を操るような魔法の適正も比較的高いです」

「優秀なジョブクラスだ。エルフは立派な戦力になりそうだ。魔物はゴブリンだけかな?」

「はい。大半が冒険者に殺されてしまって。残っているのは数体ほどですが……」

「作戦を展開するには十分な戦力だ。僕たちの力を冒険者たちに思い知らせてやろう」


 レオナールは端正な顔を歪めて笑う。この戦いの勝利を確信している笑みだった。


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本編に大幅な改稿を行い、WEB版よりもパワーアップしているだけでなく、
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今後の執筆活動を続けていくためにも、よろしくお願いいたします
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