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シュートの悪魔シリーズ

シュートの悪魔3

作者: 神楽京介

 秋が迫ろうとしてるこの時、やってくるのは台風である。一人の男が歩いてきた。暴風雨の中、三時間もの道のりを歩いてきたのだ。

 「疲れました」この男は言いのけたが疲れた様子はなかった。彼はこの男が嘘をついてるのじゃないかと思った。だが、彼の疑惑は払拭されることとなる。この郵便局の最寄り駅の電車はすべて夕方で運転を見合わせていたのだ。

 「地下鉄は動いていたんだけど、そこから電車ないから歩いてきたよ」

 なぜそこで引き返さなかったのかと、彼は頭を悩ませたが、この男は以前からよくわからないところがあったので考えるだけ無駄なのだろうかと諦めることにした。

 県外からの幾人かはたどり着けなかった。それに関して一部から不満が出ていた。特休扱いに対してである。

 台風などの自然災害で交通機関が麻痺した場合、局にたどり着けなかったものには有給休暇扱いにするという決まりがある。

 無理してたどり着いたものにはそんなものはない。隣町から原付きで来ている彼には関係のない決まりである。

 当然のように到着便は遅れ、シュートに流れる荷物も少なく、比較的楽に過ごせるかと思われたその時、課長がのっそりシュートに現れた。彼の表情は引きつっていたが、たまたま一緒のシュートに入っていたこの男は余裕の笑みで課長の対応を受けた。

 「悪いんだけど、超勤できるかなあ」

 課長は担務表をもって彼らに迫ってきた。超勤とはいわゆる残業のことである。この男は快諾し、彼はいやいや了承して、課長は担務表に何やら書き込んでへらへらしながら帰っていった。

 「休めば良かったのに」と彼は言った。

 この男は無言で笑っていた。

 彼にとってはこの男は理解不能であった。だが、不快ではなかった。シュートに入ってしばらくたっても彼は誰とも口をきこうとしなかった。そのとき、この男は彼に声をかけてきた。この男はシュートは退屈だと言ったが、彼は荷物に追われてばかりでただただ、この時間がさっさと過ぎ去ればいいとしか考えていなかった。

 この男が休憩室で法律に関する本を読んでいたのを彼は何度か見かけた。法律関係の資格でも取るのかと彼は安易に考えていた。

 ある時、法律の本になにか書き込みがあるのを彼が見て問いかけた。

 「これは小説だよ」この男はこう答えた。

 この男は今はいない。夏のお中元の繁忙期が終わり、10月の初めには姿を消していた。

 担務表には退職と書かれていた。ある日、東京から来て、鴨川を眺めながら休日を過ごしているとこの男は彼に話した。

 ここにはそんな魅力はないよ。彼はそう思いながらも、休日に市内を散策してみようと画策するのだった。


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