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【フム】  作者: ガイア
3/30

残酷

こんなに胸糞になると思いませんでした。

感動なラストにするはずでしたが、何でこうなったんでしょう。

バットエンドが好きだからですかね

次の日、フムは相変わらずの無表情だが、るんるんでランコの家に行く支度をしていた。


「行ってきます、マスター」


「い、いってらっしゃい。家の地図は昨日ランコに送ってもらった。ここに書いてあるから無くさないようにな」


地図をフムに渡すと、こくりと頷き出かけて行った。


「ふむ...大丈夫かなー。フムのやつ」


頭の後ろで手を組み椅子にもたれかかり考えてみたがフムにも女の子の友達ができるのはフムにとってもいい事かもしれないな。

僕はそのままウトウトと眠りについてしまった。

目が覚めたら夕方の17時。


「僕どれだけ寝てたんだ!?昼頃から寝てたから...えぇ!?」


飛び起きると、僕の膝からひらりとブランケットが落ちた。


「ん?」


「起きましたか、マスター」


「フム!帰ってきていたのか!起こしてくれよ!」


「いえ、フムもさっき帰ってきたばかりです。早速夕食の支度をします」


フム...なんだか雰囲気が前と違うような。

いつものピンクのエプロンを身につけ夕食の支度を始めるフムの後ろ姿に


「ブランケットかけてくれたんだな。ありがとうな!」


お礼を投げかける。


「マスターの為なら当たり前です」


フムはくるりと振り返り


「マスターの為ならフムは何でもします。自分を犠牲にしてでも、誰かを殺めてでも」


無表情で言い放つ。

その表情は、いつもの無表情とは少し違う気がした。

そしてまたくるりと振り返り包丁でザクザク野菜を切っていた。

ぶるる、と身震いしてしまった。何だ、フムの様子が最近おかしいぞ。

寒気がしたらトイレに行きたくなったので、トイレに向かう。

ブブブ...ブブブ.....。

なんだ、ポケットに突っ込んでいた携帯を確認。

ランコから着信。


「もしもし?」


「....アーサー!アーサー!」


いつもぼんやりしているランコが切迫した様子で僕の名前を叫んでいた。


「アーサー!!ごめん...ごめんなさい...私、もうあなたとは会えない...ごめんなさい」


「どうしたんだ!?ランコ!?突然」


「今日...アーサーのところのフムさんがきて...それで...あ!?」


ブツリ。

そこで電話が切れてしまった。

何があったんだ?一体...あのランコの様子ただごとじゃなさそうだった。

まさかフムがランコに何かしたのか?


「ますたぁ」


振り返るとフムが目を大きく見開き首を傾げ立っていた。

緋色の瞳が紅く光っている。


「ふ、フム?」


「誰から電話ですか?」


「い、いや、えっと」


じりじりと近づいてくるフム。

少しずつ壁へと追い込まれていく僕。


「誰から、ですか?フムに言えない人ですか?」


「いや、そういうわけじゃないけど」


とうとう壁まで追い詰められ、僕は何故か禍々しい雰囲気のフムに気圧されしてへたりこむ。

壁に手をついてフムは僕の顔を覗き込み、


「ランコさんですか?」


「.....そ、それは」


すると突如、ドゴォッ!!!!と大きな音がした。

突然何かが破壊されたような、いや爆破されたようなとてつもない音だった。

耳がキーンとする。


「なんだ!?何があったんだ!?」


フムは、鋭い目をして振り返りとてつもない勢いで走り出す。


「なんだ!?何が起きている!?全然わかんないぞ!?」


でも、何か、があったんだ。

フムのあの感じ、追いかけよう。

震える足で立ち上がり、僕もフムの後を追いかけ走り出した。


「一体何が...」


穴の空いた玄関に、散らかった扉の残骸。

荒らされた部屋に、散乱した資料。

目の前には白衣を着たサングラスの数名のおっさん達。

真ん中には大きな黒光りする手の沢山あるロボットがフムの華奢な体をつかんでいた。


「フム!!」


「ま....マスター....」


真ん中のハゲの白衣のおっさんがこちらを見て薄ら笑いを浮かべながら拍手をした。

パンパンと響く不快な拍手。

怒りを通り越してどうにかなりそうだった。


「何をしているんだお前達!!」


「ふふ、君が天才発明家のアーサー君か。なかなかイケメンじゃないか」


「うるさい!!フムを今すぐ離せ!!!」


「悪いがそれはできないんだ」


「なんだと!?」


やれやれと首を振り、ハゲの白衣の男はフムを愛おしそうに見る。


「すごいんだ...すごいよ君は、こんなに可愛い女の子のロボットを作れるなんて。無表情なのが少しきになるがそれはまあ、私がカバーしよう。脳の中の表情のデータをちょっといじればすぐに笑顔の可愛い女の子になるさ」


「.....何を言っているんだ」


「君は確かに天才だよアーサー君。でも、君より私の方が発明経験も豊富だし、彼女をもっと人間に近づけることができる...私は求めていたんだ。彼女のような素晴らしい美少女アンドロイドを!素晴らしいよ!!ハハッ、というわけで彼女は私達で預からせてもらうよ」


「預かる...!?嘘つけ!!さっきお前は言っていた脳の中のデータをいじるって!!フムのデータをいじったりフムで何かを実験するつもりだろう!!そんなの絶対許さないぞ!!許さない!!!!!!」


僕は怒りが頂点に達し何もわからなくなりハゲのじじいに突進していった!!

だが、あっさり白衣の仲間に取り押さえられた。


「フムちゃんは、私達で完全な姿へと変えるから、その中でクローンができたら、君にお返しするよ」


「ふざけるな!!フムを返せ!!」


「ますたぁを...離せ」


フムが弱々しくこちらを振り返る。


「フム!!フム!!」


泣き叫び彼女の名前を呼ぶ。

僕の大切な人なんだ。

返してくれ。離してくれ....。


「...ついて行く...ついていくから、マスターを離して、マスターに乱暴しないで、マスターは大事な人なの、せっかくマスター、好きな人と幸せになれるところだったのに、邪魔しないで」


キッとフムはハゲのおっさんを見据える。


「あぁ、言われなくても連れて行くさ、私の実験室へ」


「何言ってんだフム....どういうことだ」


「でも最後にマスターと少しだけ話をさせて」

絞りきった声で、顔で僕を見た。


「あぁ、いいぞ。可愛いフムちゃんの頼みだ。そのかわり私達が見てる前で話しなさい」


「分かった」


フムの体からロボットは手を離した。


「フム.....フム」


「マスター、マスター」


フムは、優しく僕を抱きしめた。


「マスターは、本当にダメな子ですね。料理もできない、掃除もできない、フムがいないと何もできないダメダメです。いくら天才発明家と言われたって、フムがいないと何もできないダメマスターです」


「そうだよ!!ダメマスターだよ!!だから行かないでくれよ!!僕フムがいないと何もできないんだ!!どこへも行かないでくれよ....ずっと一人だったんだ。家族もいないし、じいちゃんが死んじゃって、ずっと一人で、友達もいなくて、寂しくて必死で泣きながら一人は嫌だって...フムを作ったんだ。フムはずっと僕のそばにいてくれた...もう一人にしないでくれよ!!」


「フムは、マスターと一緒にいられる日々が一番幸せでした。フムにかけがえのない日々をありがとう。ありがとうマスター、フムはマスターの為なら何でもします。例え自分を犠牲にしてでも」


僕は情けなく泣き叫び、フムは優しく僕に語りかける。


「顔を上げて、マスター」


僕は彼女のこの表情を初めて見た。

ずっと見たかった、フムの笑顔だった。

でも、頰には涙がつたっていた。


「フムは、マスターの事が好きです。愛しています。誰よりも何よりも」


フムは、冷たい手で僕の涙を拭った。

すると、突然後ろの首筋に鋭い痛みが走り僕は意識を失った。


「いいのかい?フムちゃん」


「マスターは、きっとフムが行くとき暴れるから、それでもしマスターがあんた達に怪我させられたらと思うと、フムがマスターを気絶させた方がいい」


「マスターにもう二度と近づかないで」


フムは、ハゲのおっさんを睨み付けると白衣の男はフムの顔を気色の悪い笑顔で覗き込む。


「大丈夫さぁ、私が彼に興味ができたのは今日君が娘の家に来てくれた時君を作ったのが彼だと知ってからさ。それがなければ彼はその辺にいるただの発明家の一人にすぎなかったんだ」


「マスターは天才だ!!フムを作った天才の天才発明家アーサーだ!!」


「ふふ、はいはい。可愛いね、さあ、行こうか」


白衣の男がパチンと指を鳴らすとロボットがフムを捕まえ、網に放り込んだ。


「な、なにするのよ」


「暴れるといけないからね。これで私からは逃げられないね」


ニタニタ笑うと白衣の男はアーサーの家を後にした。


「ますたぁ......」


フムは振り返り泣きそうな声をもらした。


「あの出来損ないの娘でも役に立つ事があるんだなぁ、こんな素晴らしい発明品と出会える機会をくれたんだから」


白衣の男の高笑いは静かな夜に残酷に響いた。

一応これで終わりですが、まだいくつか伏線が残っているので次の話で回収してから

要望があれば続きます

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