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【フム】  作者: ガイア
28/30

フィーネの死の真実

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

「シトさん!?何で...」


「隠れていたんだ」


ふう、と額の汗を袖で拭う動作をし、こちらを伏せ目がちに見るシトさんだが、どういうことだ?

隠れていた?何から?


「..........子供達から、逃げてきた」


シトさんは、心底苦しそうに言った。

子供達から?どういうことだ?


「子供達?どういうことだ?子供達は味方じゃなかったのか?」


ドタドタドタドタ!バタンッ!


「きゃっ!!」


その時、扉が勢いよく開かれフムとレイミー、ランコが扉から扉から勢いよく転がるように現れた。


「どうしたんだ!?皆....」


「逃げよう。マスター、騙されてる」


フムが、僕をまっすぐ見て訴える。

騙されている?どういうことだ?

さっぱりわからない。


「フム....?騙されているって...どういう?」


「マルカは、牢屋でフム達を殺そうとした。そいつは危険」


「アーサー...ハァッ..ハァッ...早くここから逃げよう」


ランコが息を切らしながら僕に訴える。

どういうことだ?

フム達が襲われた?


「どういう事だ?お前は、フム達をマルカに襲わせたのか?」


僕はゆっくりマーチスを振り返った。


「......仕方がないじゃないか。イアンビリー家の一族は根絶やしにしないといけないんだ」


マーチスは、狂気に満ちた顔で僕を見た。

ぞっとした。

人間のこんな表情を見たことが無い。


「マルカを利用してボク達を殺そうとした!ボクはお前を許さないぞ...マーチス」


レイミーがマーチスを睨みつけるが、それに全く臆する様子を見せず、逆にマーチスが酷く憎しみの満ちた目でレイミーを見据えた。


「私は悪くない...私は悪くない。私は、悪くない。イアンビリー家なんかがあったから私とフィーネの運命の歯車は狂ったんだ!!イアンビリー家さえなければ、私達の人生は狂ったりはしなかった!!」


「だからマルカを利用してボク達を殺そうとしたのか!?狂ってるのはお前の方だ!」


レイミーが怒鳴るが、マーチスは憎しみに脳が沸騰していて全く聞いていないようだ。


「子供達も、利用しただろう」


シトさんが、怒りを押し殺した声で言った。


「子供達から、聞いたよ。子供達が病院から消えた日の深夜に、白衣の男達に健康診断といわれ、車に乗せられ気がついたらあぁなっていたと」


「あぁ......突然兄から連絡があったんだ。フィーネを生き返らせる事ができるかもしれないって。フィーネが生き返る....生き返るって、思ったら...ふふ、その他なんて、どうでもいいんだよ。私はその時きっと心を病んでいたのだろう。あいつなんかの誘いにも乗ってしまったよ」


「どうでもいいだと....子供達は、この病院に入り、この地下に入るや否や突然態度を変えて俺に襲いかかってきた。なんだか子供達の目が赤く光っているし、すごい力だったし、ロボットみたいだった......先生の命令で...ここにお前を連れてきたと....イアンビリー家の一族は殺すと言っていた」


...そういう事だったのか。

子供は、シトさんをこの施設に連れてくる罠だった。

マルカはランコとレイミーを誘拐するように仕組まれていたというわけか。



***


目を覚ましたら手術室のような白い部屋のベッドで寝ていた。

俺、シト・イアンビリーは、拘束されていて天井には電気が光って眩しかった。

俺はこれからあの子供達のように実験されるのだろうか、そう思った。

仲の良かった病院にいた子供達とやっと再会できたと思ったら、子供達は地下で俺に襲いかかってきた。


「俺は.....どうなるんだ」


ガチャリと扉が開き、痩せこけた細身の男が俺を覗き込んだ。


「気分はどうかね」


「......お前は誰だ」


こいつがもしかして、俺の過去を知っている人物か?

写真を持っていた奴...なのか?


「私が誰かなんてどうでもいいことじゃないか」


「俺は....自分の母親の事が知りたい。もしかしてお前...俺の母親の事を何か知っている人なのか?覚えているようで、記憶が曖昧な部分があって知りたいんだ...そうだ、子供達は、知らないか?なんで俺はこんな状況になっている?」


だめだ、頭が混乱するのと天井の電気が眩しくてうまく言葉がまとまらなかった。


「一気に話すな....混乱しているようだな。フィーネを...自分の母親の事をよく知らない?君はフィーネの子供じゃないか」


「そうだよ...でも、本当に母親の事を思い出そうとすると砂嵐がかかったみたいになって」


「.....順番に答えよう。お前の母親はフィーネ・イアンビリー。美しい女性だ。記憶がなくなったのはよくわからんが、彼女は美しく天才的な女性だったよ。発明家として天才だったから、ルーカス・ヒルトという男に過労死するまで使われ、亡くなった....」


「母親が.....天才発明家?母親は一般人じゃなかったのか?父親の方が...発明家をしていて....あれ?あれ......」


なんだか、おかしいぞ。

砂嵐が、少しずつ、少しずつ取り払われていく。


小さい頃の俺とベットの上で弱々しく笑い、俺の頭を撫でる母親。


「シト、貴方には私のような人生は歩んで欲しくない。貴方は子供達の中で異常に発明家としての才能がある。自分が天才発明家だという事と、それから.....私が発明家だったという全ての記憶を消さないと。私のように発明家として利用されて.....」


「母さん、その兜みたいなの何?」


「これはね、つけると格好良くなれる魔法の兜なのよ」


「すごいね!俺も発明できるかな?いや、できちゃうよね。俺は母さんと同じで天才だから」


「......ごめんなさい」


母親はぽつりと呟いて涙を流した。

どうしてシトなら天才だからできるよって言ってくれなかったのだろうか。

今なら、わかる。


そして、俺の頭に兜を被せた途端俺の体は電気を打ったようにバチンと跳ねた。

朝起きると母さんは首が天井とロープで繋がれて宙にゆらゆら浮いていた。

動かなかった。

俺はガタガタと震え、目の前が突然真っ暗になりその後母親は病気で死んだと知らされた。

ショックで母親が自殺した事さえも俺は覚えていなかったのだ。



「思い....出した」


俺は自然と涙を流していた。


「突然なんだお前は....!?固まったと思ったら泣きだして....はぁ...忌々しいルーカスの血が流れているから頭がおかしいのだな」


疲れたように眉間を抑え俺からくるりと背を向け扉に向かって歩きだした男の背に俺は声をかけた。


「おい!お前....は、誰なんだ?なんで俺を拘束する?俺の母親と関係があるんだな?」


「あぁ.....私の愛したフィーネは、お前の父親、ルーカスに殺された。過労死の末に殺されたんだ!」


「違う....違う...んだ」


「何も違わない!俺は、ルーカスの血を、イアンビリー家の血を根絶やしにする。お前も後で殺す」


バタンと無情に扉は閉められた。

俺は、殺されるんだ。

あいつは過労死と言っていた。

あいつは明らかに頭が狂っている。自殺したなんて言ったら本当に壊れてしまうと思った。

誰かがそう言ったのだと、考えられる。

俺はアーサー達に置き手紙をしてきた。

こんな危ない所なら置き手紙なんてするんじゃなかった...イアンビリー家の血を根絶やしにすると言っていた。

レイミーや、ファゾラが来たら危ない。

早くここから逃げないと。


ガチャリ。

ゆっくりと扉が開いた。

緊張で心臓が止まりそうだった。

奴が俺を殺しに戻って来たのか?

汗が止まらない。


扉から出て来たのはあの子供達だった。


「.......」


***


「子供達は、理性とお前の洗脳が混交していた。俺にその時大丈夫か?今助けると言ったんだ。俺は混乱したが、子供達は、確かに病院にいた時のあの優しかった子供達の記憶がある」


シトさんは、ポケットに手を突っ込みクローゼット付近から僕達の方へ歩いてきた。


「一緒に扉から出て逃げようとしたが、また突然目が赤く光りだし、俺に襲いかかってきた。なんとか逃げて、この部屋に入った。隠れる場所を探していたら、ドンドンと扉を叩く音がしたから、急いでそこのクローゼットに隠れたんだ」


そして僕の隣まで歩いて来て僕を見た。


「静かになって、扉から出ようとしたが外で子供達が見張っているんじゃないかと思ってなかなか出られなかった。だが今日お前がアーサーを連れて部屋に来た。しかも俺の母親の話をしている。興味深かったので、そのまま聞いていてアーサーが来た今が出るチャンスだと思い、扉から出て来たってわけだ」


「成る程.......シトさんもここまでくるのに大変だったんだな。無事でよかったよ」


僕もシトさんを見返す。


「俺はお前を許せない。子供達を俺達を殺すための兵器に改造した...お前を」


シトさんは、憎しみのこもった瞳でマーチスをにらんだ。


「私も許せない。あなたが許せない。私達を殺す為に、自分の娘を私と同じ顔に改造した貴方を!」


ランコは、マーチスに怒鳴った。


「あいつは、別にお前の顔に変えたわけじゃない。変幻自在に顔を変えられるホムンクルスを作っただけだ」


マーチスは、悲しげな顔で両手を広げた。

よく見るとまめだらけで赤い手だった。


「それにしても......あぁ、そうか。お前達は、ルーカスの子供達は私にたてつくのかね。子供達は情がうつってお前を逃すし、マルカはお前達を逃してしまったし、なんだ....私は一人か」


マーチスは、そういってポケットから小さい機会のようなものを取り出した。


「あぁ......そうか。フィーネどっちみちこうしようと思っていたんだ。お前達を殺した後で私も彼女の後を追おうと...」


「何を言っている...どういう事だ?」


「マスター!!!伏せて!!!」


フムが叫んで俺に飛び交かる。


「すぐに行くよ。フィーネ」


マーチスが機械のスイッチを押すと、マーチスの体が閃光と爆発音と共に弾け飛んだ。


今回も読んでくださりありがとうございます。

フム最終回も見えて来ました。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

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