天才違い
だいぶ更新が遅れてしまって申し訳ありません。体調を崩していました...また明日から更新していきます
僕は、目の前の光景が理解できなかった。
「何で僕の家...僕とフムの家...燃えているんだ!?」
僕は思わず叫ぶ。
「何で....何で....?」
ランコは両手で口を押さえ、目を見開いた。
「まさか兄貴の奴、フムちゃんの体を燃やしたのか!?」
「なんだって!」
「ちょ、アーサー!!ダメ!!」
僕は、何も考えずに、火に突っ込んで言った。
熱い、暑い、あつい、扉に近づいただけで人間の本能がこの先に行くなと告げている。
だが僕は行かないといけない。
大切な家族の為に。
大切なフムの為に....。
「ゴホッ、ゲホッ」
ハンカチを持っていなかったので服の袖口で押さえて煙の中を進んで行く。
辺りを見回しても煙と炎でなかなか周囲が見えない。
こんなに、苦しいのか。火の中は。
この中にフムの体があるかもしれないんだ。
絶対に....助けださなきゃ。
「アーサー!アーサー!」
後ろでランコの声がしたような気がする。
そこで僕の意識は途絶えた。
目が覚めると、目の前には僕の頭の上で泣いているランコの顔が。
少しずつ状況を理解していく。
「僕....確か火に突っ込んでいって...」
「よかった...生きててよかった。アーサー」
僕は、ランコに膝枕をされているようだ。
頭の上からぽつぽつとランコの暖かい涙が降ってくる。
「ありがとう...ランコ」
手を伸ばしてランコの涙を拭う。
「本当によかったよ君が生きていて」
上から僕の顔を覗き込んだレイミーの声も降ってくる。
「でもこれからは何も考えずに火に突っ込んでいくなんて馬鹿な事はやめなよ。まあ、君が飛び出していった時すぐに追いかけて火に突っ込んでいったファゾラも大概だけどね」
レイミーは、膝をついて人差し指を立てながら僕に注意するが、途中でちらっとファゾラも見る。
「し、仕方ないじゃない。アーサーが火に突っ込んでいったんだから...何も考えられなくなっちゃったんだもの」
ファゾラは、涙を拭きながらムッとして反論する。
「楽しそうな所申し訳ないけどさ」
ファゾラの後ろから突然低い男の声がした。
「きゃっ!!」
ファゾラがびっくりして体を震わせる。
僕も驚いて飛び上がり反射的に起き上がる。
「兄貴....」
レイミーが呟いたのを僕は聞いていた。
兄貴...彼がランコとレイミーのお兄さん──。
この人が、ランコとレイミーお兄さんなのか?
黒いフードを被り、そこからチラリと見える髪は、ランコやレイミーの綺麗な青色の髪ではなく、灰色のような燻んだ白髪。
長い前髪からチラリと見える目は無気力で、正気を感じられない眼をしていた。
「君が、フムちゃんを作った人?」
彼は低い声で、感情のない瞳で僕を見下ろした。
「あぁ....そうだ、僕が作った」
「そっか。何だ、生きてたのか」
フムと手を繋いでいない方をポケットに突っ込んで、はあ、とため息をついた。
「それはどういう事だ。返答によっては許さないぞ兄貴」
レイミーが、お兄さんを睨みつけた。
彼は、おっさん達からフムの体を盗んで助け出してくれた人かもしれないんだ。
今のは何かの間違いで────。
「いやだから、火をつけて君があそこに突っ込んでいったから死んじゃったかなって思っただけ。いや誰だって火がついたところに人間が飛び込んでいったら死んだって思うじゃん。ロボットじゃないんだからさ」
「お兄様が、アーサーの家に火をつけたの?」
震えながらランコが聞いた。
それは僕も今聞こうと思っていた質問だった。
「そうだよ」
無表情に、彼はそういった。
「何でそんな事...僕は、あなたがおっさん達からフムの体を盗んで助け出してくれた人だと、思っていて」
「そうだなぁ。何だかなぁ」
彼は、ポケットから手を出して頭をくしゃりとかいた。
「いや、そうだな。そうだった、確かに俺はフムちゃんの体が利用されないようなところに逃げようと思った。でもその前に君に会いたいと思ってここに寄ったんだ」
彼は、僕の方に近づき僕の顔をまじまじと見つめた。
「な、なんだよ...」
思わず一歩下がる、が彼は容赦なく僕に近づいて来る。
「いや、もっとなんか変態のロリコンのおっさんかと思ってたけど、普通に俺より年下っぽい男の子でちょっと驚いているところでね。すごいね君はあんなロボットをこんなに若いのに作っちゃうなんて」
僕の両腕をがしっと掴んだ彼は、驚いた表情なんて一切見せていなかった。
「俺は、初めて嫉妬したんだ。嫉妬。嫉妬だよこの俺が、天才で神童のこの俺が、君の発明室にいってみたら俺の思いつかないような発明図が沢山あって、俺はさ、頼まれた仕事をこなしていただけだったからさ、あんな風に寂しい、家族が欲しい、だから作ろうなんて発想には至らなかったし、もし家事をしているロボットが料理中火で火傷したらどうしよう、じゃあ火の出ないでも熱が使えるキッチンを作ろう、とか、なんか、そういうあったかい発明をさ、した事も考えた事もなくてさ」
初めて彼の感情的な部分を見たというくらいぎゅうっと腕を掴まれた。
彼の顔は、寂しそうで、悲しそうで、辛そうだった。
そしたらふっと手の力が抜けた。
「だから燃やした。羨ましかった。なんで俺は一人だったのに、君はあんなロボットを作って幸せに暮らしてたの?何で俺はボロボロになるまで大人達に仕事をさせられていたのに二人で静かにあんなところで幸せに暮らしていたの。何で俺は大事な人を殺されたのに君は大事な人といられるの?君が幸せに生きてきたのが。そういう部分が見えちゃう家だったんだよあの家は」
「そんなの、逆恨みじゃない」
ランコが、呟いた。
「そんなのおかしいじゃない!アーサーは、アーサー!お兄様はお兄様でしょう?何で自分に重ねてしまうの!?何でアーサーとフムちゃんの大切な家を....燃やしたの。フムちゃんの帰る場所だったのに....」
ランコが泣きながら叫んだ。
「だって彼は天才だから」
また無表情に、悪びれる様子もなく彼は言った。
「天才じゃないか、天才なのに、天才のくせに、何幸せに暮らしてんだよ。何幸せになろうとしてるんだよ」
彼は、憎しみのこもった目で僕を見た。
彼は本当に怒っていた。
「つまり、兄貴は天才で昔自分が苦労したからアーサーが天才なのに幸せに暮らしているのが気に入らないんだろう?」
レイミーは、俺の腕を掴んでいた彼の腕を掴んだ。
「それは逆恨みって言うんだ。さっさとフムちゃんの体を返すんだ見当たらないようだが、どこにいるんだ?」
レイミーは、明らかな怒りを込め、彼を睨みつけた。
「最初は、返してあげようと思ったけどあんまりムカついたから隠しておいたんだ。燃やしてはいないよ」
「何だとふざけるな!!脳のデータが消えるまでに彼女の体が必要なんだよ!」
レイミーは叫んで僕から彼を引き剥がし、彼の胸ぐらを掴んだ。
だがその刹那、彼女は横から飛び出してきた何かに吹っ飛ばされた。
レイミーの体が地面に転がり、シュタっと現れたのは────フムだった。
「やめろ、ますたぁに手を出すな」
「レイミー!!」
「お姉様!!」
ランコがレイミーに駆け寄り、僕も行こうとしたが、衝撃の光景に体が動かなかった。
目の前にフムがいた。ずっと探していたフム。
「フム!!フムじゃないか!!フム!」
僕は、思わずフムの見た目の少女に抱きついた。
「フム!!よかった!!よかった....」
「やめて、触らないであんたもあいつのなかま?ますたぁを傷つける?」
僕を見た目に反しすごい力で引き剥がし睨みつけた彼女は、見た目はフムそのままだったが、雰囲気は少しピリピリしていた。
「ますたぁって、なんだよ。僕がマスターだろう?」
「ちがう、あーちゃんのますたぁは」
フムにそっくりな少女はとてて、と走り彼のパーカーにしがみついた。
「ますたぁ」
少女が、フムが彼女が、僕以外をマスターと呼んでいる光景は、僕には絶望的で目の前が真っ暗になりそうだった。
「何で....兄貴にフムちゃんはマスターと言っているんだ...」
レイミーがランコに肩を支えられながらお腹を抑えてこちらに歩いてきた。
どうやら一瞬でわからなかったがお腹をフムそっくりな少女に蹴られたか殴られたかしたようで、苦しそうに片目を閉じていた。
「何よそれ...何でフムちゃんのマスターは、アーサーのはずじゃない。フムちゃん、どうしたの」
ランコは、フムにそっくりな少女を見つめ、眼を見開いた。
「説明してくれ....分からない。何でフムがあなたのことをマスターと呼んでいるんだ?」
僕は、彼でなくフムにそっくりな少女を見た。
「えっと、まあ説明すると長くなるけど、君達時間がないんでしょ?」
彼は、ぽりぽりと頰をかいた。
「そうか、分かったぞ!!」
レイミーが後ろで叫んだ。
「フムちゃんの脳と体に分けたら体だけ独立してしまったんだ。だからフムちゃんの体は、何故か兄貴をマスターだと考えてしまっている。脳と体を合わせればちゃんとフムちゃんに戻るはずだ」
レイミーは、僕の方に駆け寄った。
「この状況、そうとしか考えられない」
「まあ、そうだよ。その通りだけど。俺が彼女を返すとはいってないよね」
彼が、無表情にいった。
「ふざけるな。多少手荒な事をしてでも連れて行くぞ。じゃないと彼女は助からない」
「私も、貴方を絶対に許さない」
お腹を抑えてフラフラなレイミーと、震えながら彼を指差すランコ。
僕は、深呼吸をし、二人の前にでて、彼の目の前まで歩いていった。
「フムをおっさん達から助けて連れ出してくれて、ありがとう。本当に感謝しています。もしフムの体を返してくれたら僕を殺しても何してもいい。だからフムの体を返して下さい。お願いします」
頭を下げた。
そして土下座し、彼に頼んだ。
僕はどうなってもいい。僕を命がけで助けてくれたフムを僕は助けたかった。
「たかが、ロボットにお前は何でそんなになれるんだ?」
彼が、頭の上か彼の声が降ってきた。
「フムは、ロボットじゃない、僕の大切な家族だ」
「............お前は俺に怒ってないのか」
「怒ってない」
「何で怒ってないんだ発明品の設計図や、家まで燃やされたんだぞ」
「フム一人帰ってこれば、僕はそれでいい」
僕は、強い意思を込めて言った。
「お前は、天才じゃないか、他のロボットを新しく作ればいいじゃないか」
「嫌だ。フムじゃなきゃ、嫌だ。僕は、あなたと一緒でひとりぼっちだったよ。でもそれが嫌で、彼女を作った。彼女を作って彼女の役に立つような、彼女が喜びそうな発明品を作っていたらいつのまにか天才って呼ばれるようになってただけのただの僕だ。嫉妬なんてするような人じゃないよ」
僕は顔を上げて彼を見た。
彼は泣いていた。
「........何でこんなに違うんだよ.....」
彼は、がくりと膝をつき僕の顔を真剣に見つめた。
「......返すよ」
「ありがとう。お兄さん」
「シトでいい」
彼は、僕の顔を見ずに言った。
「僕の名前はアーサーだ。シトお兄さんも一緒に皆でフムの所に戻ろう」
本日も読んでくださりありがとうございました。
今日は薬で眠くなってしまい、遅くなってしまいましたが、明日からまた更新して行こうと思いますので、よろしくお願いします




