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【フム】  作者: ガイア
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表情のないロボット

尽くしてくれる美少女アンドロイドの話が書きたくて書きました

「やっと.....できた」


陶器のように白い肌。

人間の少女に負けないくらい美しい顔立ち。

輝く流れる金色の髪には、黒いリボンが飾られている。

美しい裸の少女が、僕の目の前にはいた。


僕はアーサー。

16歳にしてロボット、機械を作ることに関しては右に出るものはいないと言われた天才発明家だ。

今度の僕の作品はこの少女型ロボット。

我ながら上出来だと思う。

名前は...まだ決めてないけどどうしようか。

僕は彼女の顔をまじまじと見る。

名前を呼ぶと目を覚まして起動するように作ったけど....。


「ふむ....名前どうするか...」


ウィーーーーーン。

突如目の前の少女から凄まじい機会音がした。


「な、なんだ!?まだ名前決めてないぞ!?呼んでないぞ!?」


叫んで凄まじい機会音にたじろぎながら一歩下がると

パチリと、少女型ロボットは、大きな緋色の瞳を開けた。


少女型ロボットは、僕より一歳か二歳くらい年下設定で作ったんだけど、年相応の[可愛い]という印象より、その少女はあまりに美しすぎた。

声が出ないくらいに、息をするのも忘れてしまうくらいに。

それに彼女は裸だ。

女の服なんて僕は持ってないし、製作に邪魔だったから。

書物で調べたり彼女を作っていて女の裸なんて見慣れたものだと思っていたけれどこうして動いているのを見ると...全然違う。


少女はとうとう、その小さな口を開いた。


「ますたぁ」


小鳥が生まれて初めて見た相手を親と呼ぶようなものなのだろうか。

僕を見据え、僕をマスターと呼んだ。

声も出来るだけ少女の声が出るように何度も調整したけど、こんなに綺麗な声で話せるとは思えなかった。

「あぁ、マスターだ。僕は君のマスターだ」

僕は自分を指差し、彼女に少しずつ歩み寄った。


「ますたぁ、あなたがますたぁ。わたしは『フム』です」


「え?」


「フムは、ますたぁをせいいっぱいおせわします」


僕は左端の口角をピクピクさせながら自分の口癖でもある「ふむ」が彼女の名前に登録されてしまったことを後悔した。


「もっと可愛い名前をつけてあげたかったよ。ストロベリーとか、チェリーとか」


フムは、ん?と小首を傾げた。

だが名前は一回決めるともう変えられない。

僕はフムに右手を差し出した。


「これからよろしくな。フム」


「はい、ますたぁ」


それから2年が経ち、僕は天才発明家として世界中から依頼がくるくらいに成長していた。

「天才発明家アーサー」

その名を知る者はいないくらい、若き天才ともてはやされた。

だがそれも僕を支えてくれたフムのお陰だ。


「ティーを淹れました。マスター」


言葉も目覚めた当初より格段に上手くなっているし、


「ふむ...相変わらずフムの紅茶は美味いな」


紅茶を淹れる技術も。

フムは、成長しないのでずっと少女のままだ。

彼女もよく取引先に連れて行くが、ロボットだとバレると色々厄介な事になりそうだし、このルックスだ。誘拐されたらかなわないので僕の妹と言うことにしている。


フムは、とても有能なロボットで僕を懸命に支えてくれる。

ただ、フムは感情機能が薄いようで全く笑ったり泣いたり怒ったりしない。

常に無表情だ。

フムの誕生日に、何をしている時が一番幸せか、と聞いたら

「マスターと過ごす毎日がとても幸せです」

と言ってくれたけど....。



「こんにちは.....」


僕の家に窓から幽霊みたいに入り込んできたのは発明家仲間のランコ。


「ぎゃあああ!!」


前髪で顔を隠し、メガネをかけ、白衣を着た僕と同い年の女の子。


「おい!ランコ!玄関から来いよ!」


「ふへへ...大きいうちで玄関がわかんなくて」


緑がかったくせ毛のうねうねワカメ髪のこの通り変わり者だけど、僕と同じくらい、いや僕よりはちょっと劣るけどなかなかの技術を持っている発明家だ。

前に発明家のパーティで出会って、今まで作ったロボットの話や発明の話をしているうちに仲良くなった。

今日初めてお客さんをうちに呼んだのだ。昨日の夜、フムには伝えておいた。


「アーサー、今日、発明室に連れて行ってくれる約束..だった、よね」


「おー!そうだったそうだった。僕はランコと発明室に行くからフムは部屋で休んでていーぞー!」


「アーサー...もらいますね、フヒ..」


いつもは同じ部屋で紅茶を淹れてくれ、黙って話を聞いているフムだが、地下の発明室にわざわざ紅茶を届けてもらう必要もないしな。

僕がふとフムを振り返ると、


「ヒッ!」


フムは恐ろしい顔をしていた。

目を見開き、怒りを露わにし歯をギリギリ食いしばりランコを見据えていた。


動物が相手を敵と判断するように。


フムはランコを見て明らかに敵意をむき出しにしているように見えた。

ありえない。

こんな顔、今まで一度もした事なかったのに。


「フムも行く」


フムはスッと無表情に戻るとたたたっと僕について来て僕の腕に抱きついた。

痛いくらいに抱きついた。


ランコは

「天才発明家のはつめーしつ!はつめーしつ!楽しみ楽しみ楽しみだー」


とくるくる回り、早く早くと僕の袖を急かすように引っ張った。


なんだったんだフムのあの顔は。

フムの初めて見せた表情が、笑顔ではなく憎悪にも似た表情だということに僕は思い出すだけで心臓がキリキリと痛んだ。

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