飛行訓練
僕が学校に入学して今日が初授業になる。
授業の時間になり、担任の先生が来て初授業が始まる。
担任が第一声に
「先日の話しましたけど、私はディクシアと言います。
教師自体が初めてで何を教えていいのか分からないけれど、よろしくお願いします。
まず、私はあなたたちの出自を知っています。
人間から転生してきたことを。
この世界で人間から転生してくることは非常に珍しいいことです。
あなたたちも含めて世界で10名ほどしかいませんし。
それにみんなうまれながらにして2つの属性を持っているハイレベルの精霊です。
そういう人たちに教えることが出来るなんて光栄です。
さて、私はみなさんとは違い風の精霊です。
残念ながら精霊の能力について教えることはありません。
親御さんに鍛えてもらってください。
だから、授業に積極的に親御さんにも参加してもらいたいと思います。
私が教えることが出来るのはこの世界の知識。
こう見えても精霊の世界では七大賢人の1人と言われているんですよ。
その中でも下っ端の方ですけど。」
と言い終わると一呼吸置いてまた語り始めた。
「そうそう、精霊の世界というものを出だしだけ少し話すね。
精霊というものは不老不死なんだけど、じゃあ、何でこの世界に溢れてないか分かるかな?
まぁ、正確には不老不死というのは誤りなんだけどね。
我々はまだ死んだ精霊を見たことがないだけで寿命がどれくらいなのか分からないんだよね。
精霊の誕生はおよそ一万年前と言われているんだけど、その頃の精霊が今もご健在だから精霊の寿命は少なくとも1万年以上というのが定説になっているんだよ。
じゃぁ、計画的とはいえ今も増え続ける精霊がこの世界で溢れないのかというと、精霊は自由に異世界にいける存在なんだ。
私も何10回何100回と異世界に行っている。
ちなみに精霊はこの世界でしか生まれないのでここが精霊の総本山ということになっている。
君たちが元いた世界にも精霊がいっぱいいたはずだよ。
目には見えないけどね。
でも物語や伝承などでなんとなく精霊という存在を知っていたと思う。
ちなみに異世界というのはパラレルワールド、平行世界といったもの。
それも無限にあるんだよね。
だから、精霊は溢れないというわけさ。
ここまでの話は分かった?」
僕たちはこくりと頷いた。
ここまでの所、どうやらざっくばらんな性格の先生のようだ。
ちなみに入学式の時必要以上にあたふたしていた。
どうやらドジっ娘の要素も持っているらしい。
先生はここまで話したところで
「さて、困った話すことがなくなった。今日は何をしようか。
そうだ、今日は野外学習をしよう。
君たちはあまり外に出ている経験がないようだから。
とりあえず、あの山まで飛んでいこうか。」
この先生どうやら行き当たりばったりのようである。
しかし、とんでもないことが発覚した。
僕は精霊って飛べるんだと言うことを今知ったのだ。
僕は思わず
「精霊って飛べるんですか?」
と聞いてしまった。
それを聞いた他の2人は唖然としていた。
クラスメイトのリャカヤは
「はぁ!?何を言っているの?飛べるに決まってんじゃない!!精霊のアイデンティティの1つ!!だいたい何のために羽が付いていると思っているの!!」
と強く返してきた。
先生も意外な答えだったようで苦笑いをしながら
「え〜、じゃぁ、今日は飛行訓練をしましょう。まず校庭に出て。
そう言うとみんなで校庭に出た。
校庭に出ると精霊特有の口寄せの術を使い(格好良く言っているけれど、実際は口笛を吹いただけです。)ある鳥をおびき寄せた。
先生はこの鳥はハチドリだと言った。
前世の世界では世界最小の鳥と言われたハチドリである。
この世界でも大して大きさは変わらないそうだ。
しかし、体が小さくなったせいかめっちゃ大きく見える。
小型犬ぐらいの大きさだろうか。
先生は
「これからハチドリの飛ぶ様子を観察してもらう。我々の飛び方はハチドリに似ている。つまりよく観察し真似をすれば飛べると言うことだ。」
僕はよく観察をした。
先生は次に
「羽の動かし方をレクチャーする。背中を意識するのではなく直接羽に意識を集中させるんだ。4枚の羽一つ一つに意識を集中させるように」
それから1時間ぐらいハチドリを観察し羽を動かす練習をした。
クラスメイトのリャカヤは悪態をつきながら馬鹿にしながらも丁寧に教えてくれた。
昼も過ぎようやく羽がスムーズに動くようになったところで先生は
「よし、これから屋上に行こう。そこで実際に飛ぶ練習だ。」
僕はぞっとした。
前世では高所恐怖症だったからである。
僕の怖がる様子を見て先生は
「大丈夫、精霊だから落ちたって死なない。安心して練習しなさい。」
もう無茶苦茶だ。
そして、屋上に行き、何度も飛行訓練をし、何度も落ちた。
2,3時間後ようやく形だけでも飛べるようになった。
死なないけど何度も死ぬかと思った。
本当に今日は大変な一日でした。