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おねしょ

 おねしょが止まらない。

僕が4歳を過ぎた頃からおねしょが始まった。

その僕の様子を見て両親が不思議がっていた。

何しろ精霊は飲食もしなければ排泄もしないからだ。

寝るという行為ですら精霊としては珍しいと言っていた。

精霊は24時間ずっと起きていても体に何の支障もないそうだ。

僕は人間の頃の習慣が抜けない。

何しろ寝ないと体がすっきりしないという感覚に囚われていた。


 汚い話だが、排泄といった行為も起きている間にしたことがない。

なぜか寝ているときだけしてしまうらしい。

無意識の中で起きていることなので僕にはどうすることもできない。

僕が人間の頃はおねしょなんてしたことがなかったのに。

今は精霊として不思議な感覚と言うより恥ずかしいという気持ちでいっぱいだ。

さらに精霊としては非常に珍しいと言うことで両親は村長に相談しようと言い出してきた。

それだけは止めてほしい。

おねしょごときで大事おおごとにしすぎだ。

両親を必死に説得してそのことを止めさせた。


 精霊の世界でも物自体は人間の時のものと変わらない。

食事自体しないので料理家電は存在しないが、それ以外は意外と普通にある。

両親に最初にお願いしたのは布団がほしいと言うことだ。

両親は布団というものを知らなかったが、いろいろと調べ上げ僕のために買ってきてくれた。

その大事な布団を僕は毎晩のように汚してしまうのだ。

僕は恥ずかしいとともに両親に対して罪悪感を抱えていた。


 5歳になる直前のある日、とんでもないことが起きた。

その日も夜になり、いつものように自分の部屋に行き、いつものように布団を敷いて床に就いた。

その日はなかなか寝付けなかった。

なので布団の中で羊を数えたり、人間の頃の記憶を辿ったりしていた。

そんなことをしているといつの間にか寝てしまったようだった。


 その日、僕はこんな夢を見た。


 その夢の中では僕は人間だ。

恐らくこれは前世の記憶と願望が入り交じっているのだろう。

夢の舞台は海だ。

どうやら僕は両親に連れられて海に遊びに来たらしい。

前世では両親に海に連れて行ってもらった記憶がない。

だから、夢の中で僕は一生懸命はしゃいだ。

海に入って、しばらくすると僕の足に何かが触れたようにに感じた。

次第にその感触ははっきりとしてきた。

僕が不審に思い、海の中を覗くととんでもない光景が広がっていた。

それは僕の足下に無数の手が広がっていたのだ。

僕は慌てて逃げた。

しかしその無数の手がさらに増え、僕を追っていく。

そして、僕はその無数の手に足を掴まれ海の底へと引きずり込まれた。

息ができない、とても息苦しいと僕は思った。

それにしても妙にリアルだ。

本当に海の中に引きずり込まれているような気がする。

しかもとても息苦しい。

僕は思わず目が覚めてしまった。


 目が覚めると夢の中よりあり得ない光景が広がっていた。

最初はよく分からなかった。

次第に状況が飲み込めてきた。

僕の部屋が水で満たされているのだ。

そのときに僕はまずいと思った。

息ができないのだ。

次第に息苦しくなりもがき始めた。

とにかく苦しい、誰か助けを呼ばなければと思った。

それからしばらくして両親が僕の部屋の異変に気づき僕は救出された。


 救出されてからしばらく経ち、僕が正気を取り戻した頃父親が僕に語り始めた。

「すまなかった。まさかこんなことになるとは思わなかった。そもそも精霊がおねしょをすること自体あり得ない出来事だ。こんな自体になる前に早く気づくべきだった。」

どうやら父親は心当たりがあるようだ。

父親は続けて

「どうやらお前は母さんの能力も受け継いだようだ。母さんの水の能力をな。その水の能力が暴発してしまったらしい。もっと早く対処できていれば良かった。しかし2つの能力を授かると言うことは精霊としては非常に珍しいことだ。全世界にはお前も含めて10人しかいない。しかも、この村で2人目だ。もう1人はお前と同時期に生まれた女の子だ。まさか我が家に神童が生まれるとは驚きだ。後言い忘れていたけど、人間と違って精霊は呼吸していないという事実に早く慣れなさい。」


 僕は確かに女神様にチートな人生を依頼したけどチートな能力を依頼したつもりはない。

これからの僕の(精霊としての)人生が波瀾万丈な気がしてならない。


 


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