炎の国
「ここが俺ッちの故郷だ!!」
ロバムはそう言った。
赤い世界をようやく抜けた僕はカラフルな世界に圧倒されていた。
これがマグマの中の世界なのかと言うぐらい普通の世界が広がっている。
大人たちは仕事に勤しみ,子供たちは自由に遊んでいる。
本当に良い意味で何もない世界。
平和な世界が広がっていた。
「俺ッちの第2の故郷もいいもんだろ。
あ、言っておくけど俺ッちも元々はここで育ったわけじゃない
お前と同じで別のところで育ってここで修行したんだ。
あ、そうそう、結構疲れたろう。
俺ッちの家で休もうぜ」
彼がそう言うと1つのぼろっちい家に案内された。
「だいぶ家を空けていたからな。
それに戻ってくる機もなかったからかなり家が傷んでら。
まずは家の修理と掃除だな」
そういうと僕はそれに手伝わされた。
彼は休むという概念がないのか
僕はそう不満に思っていた。
家の修理はと言うと独特で僕が初めて見たやり方だった。
家の傷んだ箇所に手で霊気を当てる。
そうすると傷んだ箇所が新品のように元に戻る。
それを何十回、何百回も繰り返すのだ。
普通に修行だよと僕は思った。
修行と違うのはロバムも一緒に取り組んでいることぐらい。
僕はかなりの疲労感を覚えた。
家が新築みたいに戻った頃、ロバムは
「近所に挨拶してくるからその間に全部屋掃除しておけ」
そう言ってロバムは言ってしまった。
僕はもう疲労困憊で掃除を始めた。
家の修理は精霊そのものの修理の仕方だったけど掃除は人間のそれと変わらない。
見た目は新築でもやはり中は埃だらけ。
僕は箒を持って全部屋を掃除した。
家が新築みたいになったのだから僕だって意地だ。
中も新築みたいにしてやろうと必死に頑張った。
そして全ての掃除が終わった頃に彼は帰ってきた。
「ビックリやな。
ここまで要求してなかったけど。
まぁ、正確よう出てるというか、几帳面なんやな。
ほな寝よか。
言っとくけど別々の部屋やからな。
男同士だからって変な気は起こさんように」
彼は時々変な冗談を言う。
僕は意味が分からないのでただヘラヘラ笑っているだけだ。
「あ、言い忘れてたけどここに来てからもう一週間経つからな。
つまり俺ッちは一週間家を空けていたわけだけどその間、一心不乱にずっと掃除していたわけだ。
俺ッちはそれを遠くから眺めていたけど。
あ、遊んでいたわけじゃないよ。
この村の人全員に挨拶するのにそれだけ時間がかかっただけのこと。
まぁ、お互いよう頑張ったと言うことやな」
精霊というものは時間感覚が無いという。
しかし、1日しか経っていないと思っていた時間が実は一週間経っていたことに僕も驚いていた。
そして僕は自分の寝室に案内された。
だいぶ久しぶりの布団だ。
とてもふかふかだ。
僕はすぐに眠りに就いた。
次に目覚めたのは1ヶ月後のことだった。
僕はロバムに起こされてその事を知った。
ロバムは
「悪い、悪い。
本当はもっと早く起こすつもりだったけど俺ッちもだいぶ疲れていたみたいや」
彼は眠い目を擦りながら僕を起こしてくれた。
僕は無理矢理起こされたような感じでまだ眠い、寝足りないと思っていた。
無理矢理、僕を引きずり起こしたロバムはまずは村内一周な。
それから基本的なトレーニングに入る。
そう言うとゆっくり走り始めた。
最初は普通のランニングだった。
スピードも普通だし、何なら遅いぐらいだ。
それでも10分ぐらい経つと汗がだらだら出てきた。
それも異様なぐらいに。
ロバムはそれを見て
「ハハハ、大変やな。
そんなに汗出て。
まぁ、気温は1000度超えてるから当たり前なんやけど。
基本トレーニング汗出んで涼しい顔でやれるようになったら次のトレーニングや。
あれ、俺ッちも汗が出てきてもうた。
俺ッちも修行がたらんと言うことやな。
お互い頑張りや」
村内と言ってもそんなに長い距離ではない。
1時間ぐらいで1周できるぐらいだ。
精霊の普通のスピードが分からないので正確な距離は分からないけど。
とにかくランニングが終わった頃にはお互いに汗だくだくだった。
ロバムは
「今日は風呂入ってさっぱりしてはよ寝よう。
もう俺ッちもクタクタや」
そして、順番に風呂に入ってその後、ベッドに倒れ込んだ。
めちゃくちゃ疲れていたみたいだった。
なぜなら、次に目覚めたのは1週間後だったから。
もちろんロバムに引きずり起こされて。
基本トレーニングはランニングから始まり腕立て、腹筋、スクワットと言った基礎的なものから手で火炎放射を出す訓練までがそうだった。
特に火炎放射は手がとても熱い。
初めは1分も持たなかったが時が経つにつれ1時間ぐらいは出せるようになった。
この村に来てから半年が過ぎた。
この村の人たちは良くしてくれる。
とても良い人たちばかりだ。
ロバムは
「そろそろいい時期やな。
「炎の卵」って分かるか。
お前が言うところの「風の卵」みたいなものや。
この村の中心となるもの。
決して壊してはいけないところや。
と言っても壊せるような精霊はいないけどな。
何が言いたいかというとこれからお前にそこに入ってもらう。
1年間や。
1年間その中で過ごせたら修行はお終いや。
家に帰れるんや。
あと少しの辛抱や。
頑張りや」
精霊にとって時間の感覚はないけれど1年間は決して短い時間ではない。
僕はそう思った。
ただ、1つ言いたいのはトレーニングの最中ではなくもっと落ち着いたときにその話をして欲しかったと思う。
大事な話なんだから。




