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マグマだまり

 あれから1ヶ月。

僕はまだ溶岩の中に入れないでいる。

と言っても片足だけなら1時間ぐらいはいれるようになったのだが。


 ロバムは

「おかしいな。

ほんまに炎の精霊か。

と言っても炎の属性がなければここには入れないか。

ほんまは方までどっぷし浸かって1時間は余裕のはずなんだが」


 冗談じゃない。

僕の体は溶岩の中に入る度に真っ赤っかになる。

毎日全身火傷状態だ。

正直めちゃくちゃ痛いし。


 でも精霊になったおかげで翌日には嘘みたいに痛みはひいている。

まるで何事もなかったかのように。

そしていつもの拷問に入る。


 言い訳をしとくと僕は炎の精霊なんて言ったことは1回もない。

一応、風の精霊なのだ。

ただ、炎の属性が見つかっただけなのだ。

それなのにロバムは毎日「炎の精霊」とは何なのか精神論を説いてくる。


 「いいか、「炎の精霊」とはまず心を熱くしなければならない。

そう、心を燃えたぎらすんだ。

あえて、灰になってもいい。

それすらも燃料に燃やすんや。

常に着火剤を心に入れ続けるんや」


 正直、意味は分かっていない。

でもそれについて反論すると

「理屈で理解するな!!

本能で理解しろ!!」

とめちゃくちゃ怒鳴られる。

今や反論する気も失せた。


 ある日、ロバムは

「なぜ熱さを感じるか分かるか?」

と僕に聞いてきた。

ちょうど僕が両足を溶岩の中に入れられるようになってきた時だった。

僕は正直質問に答える余裕などない。

じっと拷問に耐えていると

「なんや、シカトか。

しゃあないから答えるけど。

昔、お前さんがマグマの中に入ったことあるって自慢したことがあったやろ」

その話をしたことがあるけど別に自慢でもない。

ただの世間話だ。

と僕が心の中で答えていると

「俺ッちは何を言っているのやろうと思った。

炎の精霊なら当たり前のことやんて」

だから僕は「風の精霊」だってと心の中でツッコむと。

「その時は熱さなんか感じなかったやろ。

当たり前のことやん。

精霊は本来、暑さ寒さを感じへん。

では何で今、暑さを感じているのか。

ここら辺は炎の霊気が充満しているんや。

だから精霊のお前さんでも熱さを感じる。

わかりやすく言うとお前さんが風の精霊でも「風の国」に行ったら風を感じるのと同じ理屈や」


 なんとなく分かる気もする。

特に「風の卵」ないでの風圧に耐えるのには苦労した。

今はそういう段階なのかと僕は思った。


 「納得しているとこ悪いけど、ここはお前さんが思っている「炎の卵」ではない。

ていうかまだ「炎の国」にすら入っていない。

この試練に打ち勝たない限り「炎の国」には入れんのや。

そやなぁ、取りあえず頑張るしかない」

そう言って溶岩の中に飛び込んだ。


 ロバムはやはり炎の精霊。

溶岩の中を泳いだりして遊んでいる。

正直、近くで泳がれると世眼の中で流れが出来て余計に熱く感じるのだが。

その事を言うと

「しょうがないやん。

お前さんが暑さに耐えている時間、俺ッちは暇で仕方ない。

暇に耐えるしかないんや。

最初は我慢してたよ。

昼寝もしたし、1人で考えたゲームを1人で楽しんでいたし。

とにかく修行中、お前さんは一言もしゃべらないじゃん。

こっちは暇で死にそうなんや。

退屈しのぎで泳いだって罰が当たらないじゃん」


 こっちは大いに迷惑なんだけど。


 修行が終わった後、いつもロバムは「デレ」に入る。

と言ってもお互いに恋愛感情はない。

僕には一応妻がいるのだから。

と男相手に何を思っているのだろうと僕は思った。


 ロバムは

「ご苦労さん。

今日も疲れたやろ」

とタオル(らしきもの)を渡してくる。

僕はそれで体を拭いていると

「今日も頑張ったやん。

凄い凄い。

なかなか出来ることや無いで」

と修行中と真逆のことを言ってくる。

しかもまるで子供をあやすかのように僕に接してくる。

「よう出来た、よう出来た。

明日も頑張ろうな。

それにしても凄いな。

俺ッちだったら1日で逃げてるのに」

そう言うんだったらもう少し修行を緩くして欲しい。


 この後、いつものマッサージに入る。

「今日もえらい火傷やな。

炎の霊気で出来た火傷は炎で治すのが一番や」

そう言うと僕を炎でマッサージしてくれる。

それが凄く気持ちがいい。

めちゃくちゃリラックスできる。

癒やされるのだ。

凄い矛盾しているのだが彼の出す炎はさっきの溶岩と違って凄く冷たい。

同じ炎だから熱いに決まっているのだが温度差なのかものすごく冷たく感じる。

ひんやりするのだ。

溶岩から上がったばかりの火照った体にひんやりする炎、この温度差がものすごく気持ちいい。

これがあるから修行が辞められない、続けられるのだ。


 そして、夜になると彼の武勇伝もとい昔話を聞かされる。

聞かされると行っても別に悪い意味ではない。

その話1つ1つがとても面白い。

前世のこと、精霊になってからのこと、人間の世界で暮らすようになってからのこと。

どれをとっても面白い。

僕自身、彼らからしてみれば経験の浅い精霊。

どれもためになると思っている。


 それからだいぶ経ったが溶岩に肩まで浸かることが出来るようになった。

まだ、一分と持たないが。


 「ようやく入り口に立てたな。

だが、まだ安心するな。

この修行の完成は頭まで浸かって24時間過ごすことが出来るようになるまでや。

何せ「炎の国」はこの溶岩の底、マグマだまりにあるのだから」


 「はぁ!?」

と僕は聞き返した。

まだ「炎の国」すら入っていないのかと改めて思った。

彼はあきれ果て

「何驚いてんだよ。

だからここに入る練習をしてたに決まってんだろ。

俺ッちは意味の無い修行なんてさせないんだから」


 だったら最初からそれを言って欲しい。

いつもこの人は言葉足らずだ。

そう思いながらそして今日は怒りながら修行をした。

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