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デート

 季節は過ぎ、また春が来た。

外にはさくらに似た花びらが舞い落ちピンクの絨毯が敷き詰められていた。


 前世でもよく見たことがある風景。

少し違うのが前世とは比べものにならない量。

いつもご主人様が掃除に苦労しているほどだ。


 この時期になると町中ピンクの雪に覆われている。

なぜこの街はこんなにも極端な気候なのだろうか。

自然エネルギーが満ちているというか。

その分、精霊が住みやすい環境とも言えるのだろうが。

(それとも強力な精霊がこの街に10人もいるせいなのだろうか)


 そういえばこの世界に来て僕たちが唯一していないことがあった。

デートだ。


 僕たちは前世の記憶によってなし崩し的に付き合うようになった。

そして、現在は夫婦という形となる。


 それは時の流れのままというかなんというか。


 精霊の修行もきつかった。

「風の国」というのにも行った。

風の女神にも会った。

なんというかこの世界に来て激動的な運命というか。


 妻であるリャカヤとはなんというか二人きりになる時間がなったというか。

とにかくリャカヤには申し訳なく思っている。


 と言うことで今日はやることもないのでデートをすることにした。

僕がそう決めた。

いつもはリャカヤの言いなりだが今日は僕がリャカヤに言うのだ。

リャカヤは必ず二つ返事でOKしてくれるだろう。

僕はそう思っていた。


 僕はリャカヤにその事を伝えた。

「え!?

嬉しい!!

この世界に来て初めて」

と妻は目を輝かせて行ってくれた。

しかし、すぐに素に戻り

「でも、条件があるの。

1ヶ月間、寝る時意外は飛んでて欲しいの。

あなたは風の精霊。

空を飛べなければ意味がないわ。

でも私はあなたが空を飛んでいるところを(旅から帰ってから)見たことがないの。

心を鬼にして言うけどそれでは風の精霊としては失格。

風の精霊としての初心に戻って」


 僕はしばらく空を飛ばないと決意していた。

まさかそれがデートの弊害となるとは。

僕は心を入れ替えた。

それから1ヶ月間は空を飛び続けた。

雨が降る日も雪が降る日も。

(まだ暖かいとはいえたまに雪が降る時もありました。

いわゆる春の雪です)

そして彼女と約束した1ヶ月が過ぎた。


 僕がワクワクしていると彼女がめちゃくちゃカワイイ姿で出迎えてくれた。

「あなたって本当にダサいわね。

これじゃぁ、あなたのためにおめかししてきたのが無駄になっちゃったじゃない」

と悪態をつきながらも彼女は彼女なりに楽しみにしてくれたようだ。


 それにしても夜明け前からデートって早すぎるんじゃないだろうか。

「私のおきにお入りの場所があるの。

そこは遠いからどんなに急いでも昼ぐらいになるだろうけど」

とリャカヤは言っていた。

軽く音速を超える僕ら。

一体どのくらい遠いのか。


 と言ってもリャカヤは僕に合わせてゆっくり飛んでくれた。

「そんなに遠くないからゆっくり行きましょう。

いろいろと話したいしね」

と言いながら僕の飛行速度に合わせてくれる。

スピードは自動車ぐらいだろうか。

楽しい話し合いが続いた。


 太陽が上がってきた。

(実際この世界ではなんというのか分からないが僕たちは前世の記憶を引き継いで太陽と呼んでいます)

朝焼けだ。

朝焼けがリャカヤを照らした

とても赤く神々しい姿だ。

まるでリャカヤが赤いドレスを羽織っているような。

僕はリャカヤに見とれていた。


 それにしてもリャカヤはよくしゃべる。

おしゃべり好きだとは聞いていたけど。

こんなにもかと

僕は聞き役に徹した。

話の内容は主に精霊仲間のことだ。

僕の知らないところで彼女はいろんな精霊仲間と会って情報交換をしているらしい。

その経験を話してくれる。


 彼女の話は実に面白い。

多少、話を盛っているかも知れないが楽しい話ばかりで飽きない。

気がつけば昼になっており目的地にも着いていた。


 「ここは風の精霊の聖地の1つなの。

見ての通り、ここは断崖絶壁。

人間はここに来ることが出来ない。

(人間は)登ることも不可能な山の頂だし。

ここの山頂は人間が2人立つのがやっとの狭い場所。

精霊だから広く感じるけど。

精霊でしかここは来れないと思うわ。

実はある精霊ひとから教わった場所なんだけど。

ここで私たちは風と一体となるの」


 僕は彼女の行っている意味が分からなかった。

でもその意味が少し経つと分かってきた。

強い風が吹いてきたのだ。

その風はなんとも不思議な風だった。

風というものは一方通行的に吹くものだがこの風は違った。

まるで僕らを避けているような吹き方だ。

いや、包まれているような。

そして風は僕らの下にまで行き僕らを持ち上げるような吹き方となった。

上昇気流なのだろうか。

いや、違う。僕らを包むような風だ。

僕らは風に歓迎されているようだった。


 そして、しばらくするとリャカヤは歌い始めた。

その歌は初めて聴く歌だったけどなぜか僕は知っていた。

そして一緒に歌った。


      旅をしている

      何処にでも行ける

      緑の世界や青の世界。

      動物や鳥、魚たちにも会える

      私たちは無限の可能性を持っている

      何処にでも行けるのだから

      自分の夢はなんだろう

      私たちは見守っている

      あなたを

      みんなが笑顔になれる世界になって欲しい

      みんなが幸せを

      私たちはそれを見守っている

      止まることなく

      それが私たちの役目なのだから



 歌い終わった後、風はなくなっていた。


 その後も心地よい風が何度も吹き僕たちを包んでいった。

なんか僕たちが風に溶けていくような感じだった。

風と一体になるような。

そしてここで一夜を過ごした。


 家に帰ると散々寝たはずなのに眠気が襲ってきた。

後で聞くと精霊の聖地はいるだけで精霊の体力を消耗する場所なのだそう。

精霊であることを再確認出来る場所として聖地があるのだとか。

ちなみに行くとしたら1年に1回(1日)が限度だそうだ。

それ以上いると死ぬことはないがかなりの期間寝込むのだそう。

リャカヤはそれを聞いて驚いて謝っていた。


 しかし、その場所は僕たち(強力な精霊)にとっては修行の場所。

1年に1回は行かなければならない場所。

デート気分とは言え課題をこなせたことはラッキーだったと思う。












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