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帰郷

 やっと修行が終わった。

家を出てから約7ヶ月。

やっと家に帰れる。


 そう思ったのも束の間、イザルラが妙なことを言い出した。

「修行も終わったんだし今日中に家に帰りましょう」


 僕はビックリした。

なぜなら半年もかけてきた道を1日で帰ろうとイザルラが提案したからだ。

イザルラは続けて

「疲れているんだかパパッと帰りましょう」

僕は

「どうやって帰るの?

あ、そうか。

ゲートを使って帰るのか」

と僕は聞いた。

イザルラは

「ゲート?

それって何?」

と聞いてきた。

僕のパートナーのリャカヤは

「あなた、忘れたの?

ゲートというものは精霊だけが通れるもの。

人間が使えるものでは無いわ」

と僕に忠告してきた。

忘れたも何も僕にとっては初耳なんだけど。

ではどうやって帰るのか。

イザルラは

「空を飛んで帰るに決まっているじゃない」

と平然と答えた。

僕は

「え!?

空を飛べるの?

人間が?」

と聞いた。


 風の精霊のウィーゼがその事について説明してくれた。

「彼女は特別な女性です。

大体、精霊の王で有る私と対等に話せること自体大変なことなのです。

それも私も含めて5つの属性の精霊王と対等に話せるなんて。

精霊と話せること自体凄いことなのに。

彼女は攻撃力と防御力が恐らく人間としては地上最強。

そして人間離れした体力。

空だって飛べるし海の上だって歩けます。

しかも凄いスピードで。

走るのだって本気を出せば早いんですよ。

行きはあなたたちに合わせてものすごくゆっくりに歩いてきたみたいですけど。

本来だったら1日で来れるはず。

彼女はそれぐらいのスペックを持っているのです」

なぜか人のことなのに自分のことを自慢するかのようにしゃべっている女神。

まぁ、イザルラが凄いことだけは分かった。


 イザルラは

「ここから家までなら飛んで大体1時間ぐらいで着くかな」

僕は

「それは無理でしょう。

行きに半年もかかった道、どうやったって無理でしょう」

と言った。

イザルラは

「あなたたち精霊でしょう。

本来なら空を飛ぶのがあなたたちの仕事。

特にユワン君(僕)。

あなたは空を飛んでいるところを見たことがない。

いつも歩いているか私の肩に座ってばかり。

たまには飛びなさい。

飛ぶのが苦手なら練習しなさい。

私たちの歩きがあなたたちの飛行なんだから」

変に説教をされてしまった。

イザルラは

「リャカヤは良いの。

基本が出来ているから。

大体、最低でも時速800キロは出しなさい。

あなたたちの前世の世界を少しは知っているわ。

あなたたちは前世でそのぐらいのスピードで空を飛んでいたことを。

だからそれぐらいは簡単にできてもらわないと困るの」


 何か情報が錯綜しているみたい。

恐らくイザルラが言っているのは恐らく飛行機のことだ。

僕たちはそういった乗り物に乗っていた。

決して自力で飛んでいた訳ではない。


 イザルラは

「そうね。

あなたたちは風の精霊なのだからさっき言った10倍の速さは出してもらわないとね。

風の精霊は俊足の精霊とも言われているの。

私はあなたたちと暮らしてビックリしたわ。

こんなに遅い風の精霊がいるなんて。

とにかくそのぐらいのスピードが出せるまで修行ね」

とにっこり笑って言っていた。

僕らはその時イザルラの笑顔が今までで1番怖いと思った。


 修行は意外と簡素な部屋で行われた。

修行中は僕たちは一定のエリアを出ることが出来ない。

よって外で空を飛ぶことが出来ない。

だから室内で修行を行う。


 修行時は特定の機会に僕たちが乗って練習する。

よくスポーツジムにあるルームランナーというものがある。

それの空飛ぶバージョンと考えてくれた方が良い。

そこでならいくらでも飛ぶことが出来る。

飛んでも飛んでもそこに居続けることが出来るから。

でも気を抜くと逆にすぐに飛ばされてしまう。

僕たちはそこで音速の10倍、マッハ10までの速度を出さなければならない。

それも結果を出すまで眠ることも禁止。

まるで拷問だ。


 リャカヤは基本が出来ているので1ヶ月でマスターすることが出来た。

僕はマスターするのにさらに4ヶ月かかったが。

結局全ての修行が終わるのに1年かかった。


 修行が終わった次の日は1日中寝た。

そして帰る日は修行場所から本当に1時間で家に帰れた。

本当に帰れるんだと僕は感慨にふけったりしていた。

それにしてもイザルラが余裕で僕らに付いてきたのが本当にビックリだ。

どんだけチートなのか。

本来なら僕がイザルラの立場になっていたはずがあの女神のせいでなぜか精霊に。

そう思うとあの女神に少しムカついてきた。


 家に帰るとそこで待っていた精霊たちに思いきし祝福された。

まるで友達に誕生会を祝福されたような。

ていうかそんな表現では表しきれないほど。

前世での人生経験が乏しいことが悔やまれる。

大体精霊は年を気にしないからこの世界に転生してから誕生会をやってくれた経験もないし。


 今は本当に疲れた。

とても厳しい修行だったから。

本末転倒だがもう2度と空を飛びたくない。

修行から帰って1ヶ月、今のところ空を飛ばずに生活している。

そんな様子の僕を見て何を言うでもなくイザルラは見つめている。

恐らく僕のその態度に呆れているのだろう。

その代わりリャカヤにいつも説教をされている。

精霊の自覚が無いとかかんとか。

そんなリャカヤの小言に耳にたこができながら意地でも飛んでやるものかと頑固を貫いている毎日です。

(いずれ飛ぶと思いますが)



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