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 旅に出て数日経っただろうか。

今は山の中にいます。

ちょっと遭難しかけているようなそんな感じ。

でも「迷いの森」の時みたいな迷走感みたいなのはありません。

ちゃんと勇者のイザルラが地図を持って地図に従って歩いているからです。

僕らは地図を読むことが出来ません。

ていうかデカすぎるので人間用の地図は上手いこと見ることが出来ないのです。

イザルラはとにかく思い切ったら決断が早いのです。

そして必ず

「あれ、こんな道あったっけ?

こんな所には行かないはずなのに」

と道に迷うのです。


 実は数日経っているというのは嘘です。

目的地には1週間で着くとのことだったのですがその一週間は数週間前に過ぎました。

つまり絶賛迷子です。

正直泣きそうなのです。


 イザルラはと言えば意外と楽観的。

以前にも国の危機と言える竜討伐の1大プロジェクトに1ヶ月ぐらい遅れてきたことがあるそうです。

本人曰く生まれ持った性分だから治しようがないとのこと。

昔は小学校に行くのに1ヶ月遭難もしたそう。

どうしようもないのだ。


 イザルラはよく遭難をしている。

だから旦那さんはできるだけ外に出さないようにしている。

ドールハウスの店長をやっているのもそのためだそうだ。

店から一歩も出さないように。

ただ今回の旅は重要なことらしい。

店を留守にする訳にもいかず旦那さんが泣く泣く残ったという訳だそうだ。

勇者のイザルラはそのくらい方向音痴なんだそう。


 ちなみにイザルラは遭難中自らに修行を課していた。

助けが来るまで動かないでじっとしているのが一番良いのだがその間は暇だ。

遭難中修行をしてきたことでこの世界で伝説級の勇者になれたのだそう。


 僕たちはその話を半分にして聞いていた。

まさかガチだとも知らずに。


 そんな方向音痴の彼女がまともに地図を読める訳がない。

そして僕らも人間の地図を読むことが出来ない。

ましてや目的地が分からないからなおさらだ。


 また、彼女はいろんな人に道を聞いている。

ところが目的地が特殊なため誰もその道を示すことが出来なかった。


 勇者の彼女は

「この地図は勇者にしか読めない地図なんだ。

一般の能力のないものがこの地図を見たって白紙にしか見えない。

ましてや見えたとしてもその地図には暗号が付されていてその暗号を解読出来なければ意味がない。

私はこの地図はちゃんと読めるし暗号自体も全然解けている。

私は普通の地図でも迷うのだ。

今、私たちが迷っているのは他でもない。

私の責任だ」

僕たちが家を出てから1ヶ月後にそう謝罪された。

いや、遅すぎるって。


 ある日、僕たちは山の頂上にいた。

そこで彼女はこう切り出した。

「やっと、行程の半分が過ぎたわ。

そこでなんだけどあなたたちの能力を見てみたいの。

風の精霊の能力を。

私たちは精霊の力が無ければ闘うことが出来ないわ。

あなたたちの能力がどのくらいなのか見極めておかないと戦いの時不利になるの。

本当はもっと早く見たかったのだけど私のせいでそれが出来なかった。

だから、今私に見せて!!」

彼女は食事をしながら僕たちに言ってきた。

僕は

「え、今!?

食事が終わってからでも良いのでは」

と聞いてみた。

彼女は

「別に良いじゃない。

自分の食べ物や持ち物ぐらい自分で守れるから。

あなたたちの思い切りを見たいの。

私のことは気にせず思いっきりやってね。

何なら私自身を攻撃しても良いからね」


 僕たちは困惑した。

でも彼女の申し出を断る訳には行かない。

僕らは全力で彼女の申し出を受け入れた。


 まずは僕だ。

僕は体全体を使って思いっきり竜巻を起こした。

周りの木々をなぎ倒すようなかなり強い風を。

そして次はリャカヤのかまいたち

周りの木々を何千本も切り倒すような。

リャカヤがそれを思いっきりやってくれた。

そして合体技、つまり竜巻とかまいたちの合成技。

この3つで周りの山を次々と禿げ山にしていった。


 イザルラは

「凄い!?

精霊の力は凄いとは聞いていたけれどこれほどまでとは思わなかったわ。

これは良い戦力になりそうね」

と言っていた。

僕らが驚いたのはイザルラの格好だ。

僕らはイザルラの言ったように四方八方に攻撃をした。

イザルラのいた所もかなりの被害が出たはずだ。

それなのに彼女は無傷。

それどころか彼女の持ち物もお弁当もそのまま。

彼女は僕らが攻撃を見せる前と同じように食事をしているのだ。

しかも結界を張っている様子もない。

それどころか彼女は結界の張り方も知らないようだ。

以前、結界の張り方について聞いてみたところ。

「結界って何?

よく分からないけれど自分の身を守れれば良いんでしょう」

と言っていた。


 彼女がどうやって僕らの攻撃を防いでいたのか分からない。

彼女に聞いてみると

「よく分からないんだけどどうやら私は対妖精属性らしいの。

私には妖精のあらゆる攻撃が効かない」

と冗談ぽく言っていた。

対妖精属性なんて僕らは聞いたことがない。

その話が冗談なのか本当なのかは分からない。


 そういえば妖精仲間たちがイザルラはあらゆる攻撃、つまり物理的、魔法的攻撃が効かないのだとか言っていたっけ。

誰が言っていたかは思い出せないけど。

とにかく勇者イザルラは僕らの知らない秘密が沢山ありそうです。


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