外
僕は2歳の誕生日を迎えた。
両親は2歳の誕生日を機に外の世界を知るべきだと考え僕を外に連れ出した。
まず、僕が驚いたのは家を出るときだ。
実は僕の家には窓もドアもないのだ。
家を出ようにもどうやって出れば良いの分からない。
両親は僕の手を引き壁際に行きそっと手を伸ばした。
次の瞬間、僕たちは外に出ていた。
原理はよく分からない。
初めて見る外の世界はとても美しかった。
そこは自然に満ちあふれていた。
どうやらこの世界は自然があふれているらしい。
両親に連れられてしばらく行くと、コミュニティらしき場所に着いた。
そこは人間の時とは変わらないコミュニティだった。
人々が商売をし、娯楽を楽しむ場所だ。
人間の時と違うのはみんな子供の姿をしているということだ。
それでいて、本能的に子供か大人か判別できるのが不思議なのだ。
まあ、この場所にいるのは全て大人で子供なのは僕1人なのだが。
あと、僕にとって奇妙に感じたのは食べ物に関する店がないことだ。
まあ、僕が属するこの種族は飲食を必要としない種族だから当たり前なのだが。
事実、僕もこの1年間何も口に入れてない。
実際は1回だけ、食べ物を食べようとした。
そのときにある果物を口に含んだのだが、何も味がしないのだ。
そのことを両親に告げたら、両親はキョトンとしていた。
どうやら僕が生まれた種族には味覚という概念がないようだ。
そして、それ以来僕に食欲というものが無くなった。
人間にとって食べるということは楽しみの一つだったのにそれをもがれてしまったのだ。
そのときの落胆のほどは表現のしようもないほどだった。
しばらくすると両親は僕をうっそうと茂る森の中へ連れて行った。
森といっても高い樹木ではなく草のお化けみたいなものがうっそうと茂っている場所だ。
僕は心の中で「さすが異世界だな」と叫んでいた。
しばらく進んで行くと突然バッタのお化けのような生き物に出会った。
そのバッタのお化けは優に僕の背丈を超える大きなものだ。
僕がたじろいでいると両親が慣れた様子で近づいていった。
父は
「我々は絶対に捕食をされないから安心しろ。そして、動物と仲良くすることも我々の使命だということを分かってほしい。」
と言い、そのバッタのお化けを手で撫でて見せた。
僕はその様子を見ておそるおそるバッタのお化けに近づいた。
そのバッタのお化けはおとなしいもので僕が撫でても微動だにしなかった。
その後、ネズミのお化けや雀のお化けやらいろんな動物に出会った。
出会った動物全てが僕の背丈よりもかなり大きく驚いた。
どうやらこの世界では僕のいた世界よりも動物がかなり巨大なようだ。
しかし、その動物全てが僕らに従順なのがかなりの驚きだった。
しかし、驚いたのはその動物に一通りであった後の父親の言葉だった。
「いいか、我々精霊は自然とともに歩まなければならない。」
僕は
「え、精霊って!?」
と思わず聞き返した。
父は
「そうか、今まで知らなかったのか。ちゃんと説明をしてこなかったからな。我々は精霊という種族だ。自然のエネルギーを元に生きている種族だ。故に自然とともに歩まなければならない。そう言えば、お前は前世の記憶があるのだろ?前世は確か、人間だったはず。人間に比べれば我々は小さい存在だ。簡単に言うと、我々の12倍のサイズが人間というものになるはず。人間に比べれば我々ははるかに小さい存在なのだよ。」
僕は思わず、
「ということは今日出会った巨大生物たちは実は普通のサイズで僕が人間の時より小さくなっただけということなの。」
と聞き返した。
父は静かに頷いた。
家に帰ると思ってよりも僕はどっと疲れていた。
気がつくと僕はなぜ精霊というものに生まれ変わったのだろうかと考え込んでいた。
そして、この後の人生と言うものに不安を抱かざるを得なかった。
そして、気がつくと眠りについているのであった。