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 季節は冬。

この街にも寒い季節がやって来た。

この街に来てようやく1年になるのだなと感じる。

しかし、気温を感じないこの体。

夏の暑い時も分からなかったが最近冷えてきているこの空気を感じることが出来ない。

せいぜい分かるのは街を歩く人間たちの服装。

それでようやく季節感が分かる。


 しかし最近妙なことが起こっている。

精霊のナーギとピュアナだ。

ちなみにナーギが男の子でピュアナが女の子。

何が言いたいのかというと気温が下がってくるにつれこの2人どんどん厚着になっているのだ。

精霊は寒さを感じないはずなのに。

それにいつもいつも「寒い、寒い」を連呼している。

なぜか楽しそうに。

夏の時は僕は彼らがしゃべっていることを見かけたことがなかった。

それぐらい無口な人たちなのだろうと思っていた。

それが冬になると「寒い」という単語しか聞けていないがかなり雄弁になってきた。


 僕は思いきってナーギに話しかけてみた。

彼と僕とはここに来て1年になるのだが初めての会話だ。

彼は

「僕は他の精霊とは違い気温を肌で感じることが出来るんだ。

もちろん僕のパートナーであるピュアナもね。

それに僕らは良く「寒い」という言葉を使っているが別にたいした意味は無い。

挨拶みたいなものさ。

それに僕たちは夏の時にあまりしゃべらなかったのは単純に暑さに弱い精霊。

そして寒さに強い精霊でもある。

寒くなれば寒くなるほど僕らは元気になる。

何せ氷の精霊だから」

僕は

「じゃぁ、何で厚着をしているの?

寒くなるにつれてどんどん厚着をしているじゃないか」

と聞いてみた。

彼は

「あぁ、これは僕らの高まる冷気を外に出さないためさ。

でなければここは即冷凍庫になってしまう。

君たち精霊はそれでも生活に支障が出ないかも知れない。

でもご主人を含め人間は寒さに非常に弱い。

君も前世の記憶があるんだろ。

だから人間がどれだけ寒さに弱いか分かるはずさ」

と語ってくれた。


 僕らの居る街はとにかく寒暖の差が激しい。

夏は40℃を優に超えるが冬は逆に−20℃を下回る極端な気候だ。

良くここに人間が住めるものだと僕は感心してしまう。


 そして彼ら氷の精霊は気温が下がるほどテンションが上がるらしい。

夏には見せなかったハイテンションがいつも観られるようになってきた。


 ある日、僕とパートナーであるリャカヤは氷の精霊である2人にたたき起こされた。

ナーギは

「よう、新入り、風の精霊たちよ。

君たちは精霊の食事を見たことがないんだってな。

まぁ、正確に言うと炎の精霊、水の精霊、雷の精霊は見たことがあるらしいから今度は氷の精霊の食事を見せてやるよ」

えらくハイテンションだなと俺たちは思った。

恐らくかなり寒いのだろう。

酩酊状態のように見える。

ナーギのパートナーであるピュアナは

「ごめんなさいね。

この人言い出したら聞かないものだから」

と平謝りしていた。

しかしやはりピュアナの顔も何処か酔っ払っているように赤い。

僕たちは彼らに導かれるように外に出た。


 一応先に言っておくが僕ら精霊は物を通過する能力がある。

ドアを開けなくても建物を出入りすることは容易だ。


 外に出ると目の前に白い壁が有った。

かなり高い壁だ。

どうやら僕らの居た建物を雪が覆い被さっているように見える。


 ちなみに建物は頑丈な作りになっているので崩れることはない。

この街の建築様式は夏は涼しく冬は暖かく過ごせる様式になっているのだそう。

夏と冬にかなりの温度差があるが暖房や冷房も要らずに家の中は快適に暮らせるのだそうです。

原理は分かりませんが。


 話を戻すと僕らは白い壁に圧倒していた。

そしてしばらくするとナーギとピュアナは黙ってその白い壁を潜り始めた。

僕らは慌てて彼らにいて行った。

彼らの作業は何時間にも渡った。

彼らによると冬の時期何回かこの街は雪に覆われるのだそうだ。

その時が氷の精霊の食事時なのだそう。

2,3時間経つとナーギが

「今回はこのぐらいにしておこう。

まぁ、食事と言ってもこれから寝るだけだけどね。

君たちも自由に過ごしてくれ。

後、注意事項だけど今掘ったトンネルは30分もしないうちに崩れるから気をつけてね。

僕らは雪の中に埋もれる必要があるからわざと柔く作っているんだ。

だから君たちも雪の中に埋もれてね。

食事が終わったら君たちを助けるから」

そんな話は聞いていない。

僕たちが焦っていると彼らは平然と寝床を作り始めていた。

ナーギは

「僕たちに連いてきたのが運の尽きと思って諦めな。

案外雪の中も気持ちがいいよ。」

と慰めてきた。

僕たちはその一言に諦めが付いた。


 本当に案外雪の中は快適だった。

身動きが取れないことを除いて。

精霊は寒さを感じないから特に冷たさを感じない。

本来雪の中でも自由に動けるはずなのだが氷の精霊曰くここはエネルギーの塊らしい。

本当に身動きが取れない。

氷の中に閉じ込められているような気分だ。

あかりもないし、本当に暗い。

僕とリャカヤは2人で抱き合ってこの場をしのいだ。


 10時間ぐらい経っただろうか。

僕らは氷の精霊に助けられた。

ナーギは悪びれもなく

「どうだい、貴重な経験が出来ただろう」

と言ってきた。

僕はとりあえず頷いた。

そして家路に帰った。


 家に帰ってまずリャカヤと話したことがある。

それはもう絶対にこんな経験はしたくないと言うこと。

こんな経験はもうこりごりだ。



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