迷いの森
今日も穏やかな日が続く。
僕のご主人のイザルラも暇をもてあましていた。
イザルラはドールハウスの主人だ。
いろいろなドールハウスやそれに付属する人形や小物などを売っている。
そしてイザルラは勇者でもある。
イザルラが経営しているドールハウスの店は珍しく暇だ。
今日は昼すぐになってもお客さんが1人も来ていない。
こんな日は珍しい。
だから僕らは珍しく暇をもてあましていた。
そしてその時間をつぶすようにイザルラとその夫であるゴーディ、そして僕とリャカヤは雑談していた。
僕は
「こんなに暇だと遊園地に行きたい気分だ」
と言った。
イザルラは
「遊園地とは何だ?
それはどういった所なんだ?」
と聞いてきた。
どうやらこの世界には遊園地はないらしい。
僕は
「ジェットコースターやバイキングなどといった絶叫系の乗り物がおいてあるんだ。
ジェットコースターやバイキングといった乗り物とはどういうものかというととにかくひとを怖がらせる乗り物、口で説明するのは難しいけど」
イザルラは
「そういった乗り物に乗って怖い思いをして何が楽しいの?」
と聞いてきた。
僕は
「行ったことがないから噂で聞いた話だけど非日常の恐怖を味わうことがストレス解消になるのだとか」
と言うとイザルラは「ふ〜ん」といった感じで納得してくれた。
僕は前世では遊園地に行っていない。
勉強に明け暮れた日々だったからそういった娯楽に享受されてこなかった。
この世界にそういったものがあればよかったのだが。
そう思っているとリャカヤが
「遊園地はあるわよ。
人間の世界は知らないけれど精霊の世界には遊園地があるわ。
イザルラとゴーディさえ良ければその遊園地に連れて行っても良いのだけど」
僕は
「人間が精霊の世界にどうやって行くの?」
と聞くと
リャカヤは
「普通の人間はいけないわね。
でもイザルラとゴーディは精霊の人たちに認められた英雄。
そういった人たちを連れて行く方法が昔から有るの」
そう言うとリャカヤは説明を仕出した。
「私たち精霊は別の世界に行く時に必ず通る場所があるの。
通称「迷いの森」。
私たちにとっては試練の森だけれどそこを抜けることが出来ればその国の精霊たちに認められた精霊とされるわ。
そして人間専用の「迷いの森」も存在するの。
精霊の世界には通常人間は立ち入ることが出来ないわ。
神聖な場所だから。
でも人間が精霊サイズの大きさになれば世界に入ることが可能。
そのためには「迷いの森」に7日間滞在してもらう必要があるの。
あ、あのときみたいに精霊のエネルギーが消耗されことはないから安心して。
もちろん人間のエネルギーもね。
それと「迷いの森」も含めて人間も精霊化されるから食事の心配はしなくて良いからね」
リャカヤに聞くと人間は「迷いの森」で一週間かけてだんだんと小さくなるそうだ。
最終的に1/12の大きさに。
1日に換算すると約0.701182793倍、分数にするとおよそ3142/4481倍ずつになる計算だ。
そして帰る時は一週間かけて12倍になる
1日に換算すると約1.426161635倍、分数にするとおよそ9300/6521倍ずつになる計算だ。
このぐらいの計算は僕ぐらいになると一瞬で暗算で出来る。
まぁ、他の人たちは驚いていたけど。
僕の暗算能力は前世からの特技なんだけど。
ちょっと自慢が過ぎました。
僕たちは早速、精霊世界の遊園地に行くことにした。
「迷いの森」でのイザルラたちは面白かった。
何しろ1日が過ぎるごとに段々と姿はそのままに小さくなるのだ。
2日も過ぎれば背丈は元の姿の半分に。
一週間も経てば僕らと同じ背丈になった。
(彼女たちは大人なのでそれでも僕らより背は高いが)
そしてやっと僕らは遊園地に着いた。
遊園地には前世の世界と同じくいろいろな乗り物があった。
ジェットコースターやバイキング、フリーフォールや絶叫ブランコ、ムーンサルトといろいろとあった。
(ちなみに絶叫ブランコとはバイキングが横に振れる乗り物なら絶叫ブランコは縦に振れる乗り物です)
僕はその園内にある全ての乗り物を乗り尽くした。
僕ははしゃぎすぎてしまった。
気がつくと他の人たちはかなり疲れた表情をしている。
でも他の人たちも充分に楽しんだようだ。
他の人たちもなかなか出来ない経験だとかなり喜んでくれた。
ちなみに僕ら精霊は人間よりも怖いという感度が鈍っているのでこの遊園地は人間の遊園地(前世の頃の)よりも10倍Gがかかるようになっているようだ。
それでもイザルラとゴーディは楽しんでくれた。
(イザルラとゴーディはしばらくは来なくて良いといっていたが)
一通り楽しんだら再び「迷いの森」だ。
イザルラたちは元の大きさに戻らなければならない。
これも僕らにとっては面白い出来事だった。
だって、1日ごとにどんどんと大きくなるんだもの。
もちろん背丈が。
一週間もすればイザルラたちは元の大きさに戻った。
なかなかこんな経験は出来ない。
精霊としてもとても貴重な経験をしたひとときでした。




