転生後
僕は前世とは違う世界に生まれた。
どうやら転生に成功したようだった。
産まれるときの記憶はない。
というかいつの間にか産まれていたのだ。
眼はまだ見えないが、耳は聞こえるようだ。
両親らしき人物の声が聞こえてきた。
「どうやらこの子は人間から転生してきたようだ。」
「人間から転生なんて本当に珍しいわね。」
どうやらこの種族は人間からの転生が直感的にわかるようだ。
それと同時に僕が転生したこの種族は人間ではないのだと言うことがわかった。
続けて両親らしき人物が会話を続けていた。
「おそらくこの子は転生前の記憶を持っている子だ。しかし、その記憶が転生後に混乱をもたらさないか不安だ。」
「そうね、この子にはこの世界で立派な大人になってもらわないとね。」
どうやら、普通の種族ではないらしい。
いったい、どんな種族に産まれたのだろうか。
産まれてから3日ぐらいすると眼がよく見えるようになった。
やっぱりよく動くことができない。
赤ん坊というものはやっかいなものだなと思った。
しかし、眼が見えるようになって一番驚いたのは両親だ。
見た目は小学生ぐらいの男女にしか見えないのだ。
まるでおままごとをしているみたいに僕の面倒を見ている。
もちろん、兄弟姉妹という可能性も否定できないのだが、なぜか本能的にこの人たちが両親だということがわかってしまうのだ。
もしかすると成長しない種族なのだろうか?
産まれてから一週間すると僕は普通に会話ができるレベルになっていた。
この成長のスピードは人間に比べると明らかに早すぎる。
しかし、両親は驚くこともなくむしろ遅い方だと嘆いていた。
この種族だと産まれた直後に話せるのが普通だという。
この種族は人間に比べて遙かに知能が高いようだ。
そして、月日が経ち産まれてから一年が過ぎた。
僕が産まれたこの種族は人間とは遙かに違うことがわかってきた。
何よりも驚きの連続だった。
まずはおっぱいを飲まなくていいのだ。
この種族は人間を含む哺乳類とは明らかに違う。
まあ、気恥ずかしいところもありその点では安心なのだが。
その代わり、よくわからないものを食べさせられていた。
それは見たことのない食べ物。
何にもたとえようがない物体だった。
味は見た目に反して無味乾燥で何の味もしない。
まるで水みたいなものを食べているみたいだ。
そしてここからがさらなる驚きなのだが、1歳の誕生日を過ぎてからは食事を摂る必要がないのだそうだ。
元来、この種族は食べなくても生きて行けるそうで両親は長年の間食事を取っていないそうだ。
しかし、産まれてからの一年間は存在が不安定なのだそうで食事を摂る必要性があるのだそうです。
そういえば、汚い話になるがこの1年間排泄といった行為をしたことがなかった。
もう一つ気になるのが背中の羽だ。
背中に4枚の羽が付いているのだが、何のために付いているのかよくわからない。
とにかく邪魔なのだ。
もしかして空でも飛べるのかと思って羽を動かそうとするがびくともしない。
とにかくこの羽が意味不明で邪魔なのだ。
両親はこの羽は大事なものだからちゃんと綺麗にするようにと言っていた。
まあ、体の一部なのだから綺麗にするのは当たり前なのだが。
でも、このときの僕はまだこの種族の本当の真実を知らなかった。
真実を知ったときの僕は驚愕し愕然とするのみだった。
そして、僕の将来はどうなるのだろうかと不安が襲ってきた。
女神様にチート転生を依頼したはずなのに・・・。