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氷          

 夏も真っ盛りの今日この頃、今日もうだるような暑さが続いた。

精霊というものは暑さ寒さを感じないものらしいが僕らは普通に熱さを感じていた。

確かにマグマの中に入った時はそんなに熱さを感じなかったが今はとにかく暑い。

ディクシア先生によると僕らが(前世)人間だった時の感覚がまだ残っているからなのだと言っていた。

そしてこの感覚はいずれ消えるものだとも。

だから感覚が残っている今を沢山楽しみなさいともっともらしいことを言っていた。

しかし、今はそれがどうでもいいほど暑いのだ。

もちろん精霊が暑さを感じない存在だから教室にクーラーなどと言うたいそうなものは置いていない。

僕らは暑さに疲れていた。


 そんなある日の朝、ディクシア先生は教室に入ってくるなり

「サマープレゼント!!」

と叫んだ。

僕らはディクシア先生のあまりのハイテンションに呆気にとられていた。

その様子をディクシア先生が見て

「どうしたの?

嬉しくないの?」

と聞いてきた。

僕は

「サマープレゼントと言っても中身が何かわからなければ喜びようがないじゃないか。」

と反論した。

するとディクシア先生は

「あれ、言ってなかったっけ。

今日は野外学習としてとっても涼しいところに行けるってことを」


 この先生はいつも大事なことを伝え忘れる。

そんな話し始めて聞いた。

僕はいつものことだからあきれていた。

それと同時に僕らに気を遣ってくれているのだなととても嬉しかった。

しかし、マグマの件もある。

普通の精霊は暑さ寒さを理解できない。

きっと極端なところへ連れて行かれるのだろうと不安にもなった。


 そしていつものように先生に連れられゲートをくぐり抜けた。

そこは氷の大地だった。

なんとなく南極大陸に似ている。(行ったことはないけど)

しばらく景色を眺めているとディクシア先生が説明をし出した。

「ここは私たちが住んでいる惑星ほしの北極に当たる場所。

恐らくこの惑星ほしで一番寒い場所。

残念なのはここが私たちがいる場所と同じ夏だと言うこと。

本当は南極が良かったんだと思うけど、ここには南極にはない秘境があるの」

そう言い、僕らを先導し始めた。


 歩いてから2,3時間経っただろうか。

いっこうに目的地着かないみたいだ。

ディクシア先生は

「あれ、ここにあったはずなんだけどね。

おかしいな」

とぶつくさ言っている。

どうやら道に迷っているみたいだ。

ディクシア先生は

「道に迷っているわけじゃないのよ。

私たちが行こうとしている場所は年によって出現する場所が違うの。

その証拠に去年出現した場所にはなかったから」

そう言うとまた必死にその場所を探し始めた。


 それから1時間、ようやくディクシア先生が嬉しそうな表情をした。

どうやら目的地を見つけたみたいだ。

すると、ディクシア先生がある方向に指を指した。

その方向を見ると小さな穴が見える。

我々精霊がやっと入れるような穴だ。

これからこの穴の中に入るらしい。


 僕らはその氷の穴に入った。

さながら氷の洞窟のようだ。

そして今まで以上に起伏が激しい。

ディクシア先生は

「この洞窟は夏にしか見られない場所なの。

夏になると氷が少し溶け穴がで出来る。

冬になるとこの洞窟は完全に凍り、入ることも出来ない。

夏だけの特別な場所なのさ。

私たちが行きたい場所はこの洞窟の奥、行き止まりになっている場所。

そこは広い空間になっていて......おっと、その先は内緒!!」

そう言うとまた黙って先導し始めた。


 僕らは一生懸命洞窟を探検した。

リャカヤがピンチな時は僕が助け、僕がピンチの時はリャカヤが助ける。

そうやって僕らは目的地に着いた。


 そこはすごい景色が広がっていた。

そこは真っ青な世界。

青の世界。

先生曰く氷のフィルターが光を透過し青い光だけが残りこの洞窟に降り注いでいると言うこと。

そして今は昼頃、一番光が降り注いでいる時間帯だと言うこと。

今感じている青は海の青とも空の青とも違う、全く違う青だ。

この先生はいつも絶景を見せてくれる。

その場所に行くまでが大変だけどとてもいい先生だ。


 今日も素晴らしい場所に行けたと僕は感慨に浸った。

しかし、やはりあの先生は極端すぎる。

今僕は絶景に震えているのか寒さに震えているのか分からない状況だ。

リャカヤを見てみると僕と一緒で震えていた。

先生だけが元気なのだ。

そしていつものことながら僕は帰りが大変なんだろうなとため息をついた。



 

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